甲゛州便り

川崎[漁師]博之

航空宇宙軍史の社会生態学

クローンとサイボーグの間には暗くて深い河がある〜?

 サイボーグ化された士官が受け入れられているのは、受け入れる側にしても航宙軍内でも異色な?配属先“外宇宙艦隊”だからかもしれません。人事面においても外宇宙艦隊は別格扱いなんでしょうけど。普通の人でも在外勤務(っていわんか、外宇宙勤務ですな)につけば、地球時間では帰還した時はうらしま太郎さん化しているわけで、サイボーグ化されて長生きしてようが普通の身体してようが、地球時間か艦内時間かの違いはありますが、世間の人から見れば両者は同じことやないかと思うわけです。
 そうなれば普通の身体を持った外宇宙艦隊勤務者は、世間の普通の人よりサイボ
ーグ化されたとしても同じ環境(うらしま太郎さん化)にある“普通じゃない人”の方に親近感を覚えるのではないでしょうか。ただ、全ての人にすんなりと受け入れられたとは限らないでしょうけど。サイボーグ化士官の人は何や外宇宙艦隊だけのような気がしますな。内宇宙艦隊への転属とか艦政本部への栄典ちゅうのはなかったんでしょうな。同じ軍という組織であっても普通の肉体で地球の生物学的時間の中だけで生きている人の中に入っては、サイボーグ化された人物は“化け物”扱いされてしまうんじゃないでしょうか。
 航宙軍の行った人的戦略資源の確保という点で、作業体Kとクローン人間とサイボーグ化人間は同じ意味合いを持っていると思うのです。また同じように化物的見方をされているとも思えます。その中で何故クローン人間は差別されなければならないのか。サイボーグ化された人間はそれなりに昇進しているし幹部クラスには義務づけられているようです。外部記憶装置は個人の記憶も記録しておけると思うのですが、仕様に応じて適応力を高めたクローン人間にオリジナルの外部記憶装置を付ければオリジナルをサイボーグ化するというのと変わらないような気がしますが。またサイボーグ化してまで再生しようとする人物ならばおそらくオリジナルの肉体からクローンすら製造し保管し肉体器官の交換用とかに使用されていたかもしれません。
 最も強い反発はサイボーグ化された人間からのものだったような感じですが、このへんのこだわり方は何なんですかね。もちろんクローンの能力がオリジナルに等しいとは限らないですから、配属とか昇給の問題はオリジナルの前歴をそのまま適用することはできないでしょうけど。肉体的にコピーされたとしても心理面、実務能力など後天的な影響によって左右されるでしょう。
 サイボーグ化された人間にクローンの持つオリジナルな肉体に対し妬みに似た感情はあったかも知れません。何度かの再生を繰り返したロックウッド大佐にどれだけ生来の肉体が残されていたんでしょうか。外部記憶装置は生来の肉体のほくろの位置とか、笑うと右ほほにだけ出るえくぼとか、イライラすると右手の親指の爪をかむクセとかなんとか、そんなこと全部記憶してたんでしょうか。再生的にはそんな全ての肉体的特徴を再現していたんでしょうか。個性に関しては大した配慮はされていなかったような気がしますから、再生的にはオリジナルの肉体なんてものには注意は払われていないでしょうな。要は外部記憶装置がきちんと保護され機能すればいいんでしょう。
 個性とか人格とかいった点でロックウッド大佐は自己の喪失感に襲われていたようですが、サイボーグ化された人間の自己存在証明の不安定さ、あやふやさは意外と大きな心理的障害となってあらわれていたかもしれません。“自分”というものが数枚のCDに収められている“もの”だと考えたら、何ややりきれないような気になると思うんですが。そこには蓄積された過去はあっても、“明日の可能性”ち
ゅうやつが、夢を見ることが出来ないようになってしまっているんじゃないでしょうか。
 クローン人間においても人格という問題は微妙なものなのかもしれません。生体器官用の実験動物的な扱いを開発された当初されていたかもしれませんが、それがいつの頃からか一個の成体をそのまま教育し登用するようになったのでしょう。その時、クローン人間はオリジナルの個性、人格をそのまま再現出来るとは限りませんが、彼ら自身の個性を身につけることは出来るわけです。この時クローン人間は人格的には新たなオリジナルになり得るのではないでしょうか。
 人並みの能力と個性を有したクローンと普通人をどこで区別するんですかね。
 法的にはおそらく生物遺伝子の所有権等の問題があって、独立した存在、一家を構えるような立場にはなれないのかもしれませんが。
 しかし航宙軍がそれなりの能力のあるクローン人間を登用しても軍人にはさせない、階級社会の枠内には入れさせないというのは、宗教上倫理上の問題がいまだ解決されていないからなんですかね?個人的には宗教上倫理観からのタブーも存在するでしょうが、組織にそんなナイーブさを期待しない方がいいんじゃないかなぁ。
 どうもクローンに対する差別化の理由が曖昧です。何かいいこじつけ、ありませんかねぇ?だいたいサイボーグがクローンを蔑視するなど“他人のこと言えた義理か”ちゅう気がするんですけど。それとも何かな、サイボーグ自身も自分達に向けられた冷たい視線を感じ取っていて、そのはけ口を“同類”でしかも“前線に出れない腰抜け”と思っているクローンに求めているんでしょうかね。

超光速航行の色物的素人解釈

 はじめにお断りしておきます。(わざわざいわなくてもわかることですが)「いろもの物理学者」博士や「まちゅあ」博士のような物理学的考察は全く含まれておりませんので悪しからず。ちゃんとしたのは「こうしゅうえいせい正誤」をお読みになって下さい。“色物”ד素人”ですから、以下の文の内容については何の責任もありません。(なんて勝手な言い訳でありませうか)

 では、超光速航行を色物的素人解釈すると「ダレにも文句は言わせないけんネ。オレはあそこに行くっつったら行くんだかんナ。物理法則さんには悪いけど。まっ、この場はひとまずひっこんでおいてもらおうじゃないの。ナメンナヨ。」と三角目をして椎名○風?に開き直ってみせるのが情報先送り超光速航行の原理なのではないか、と思うわけです。
 これを門脇のおっさん風に言うと「何ぬかす。ワシのアリバイやと。記録みてみいや。シリウスから10光年あたりのとこにあるやろが。なんぞ文句あるんかい。覚悟してもの言えよ、ワレ!!」と宇宙の物理法則を脅しつけて沈黙させているとも解釈できます。(ホンマか?)
 でもこういう風に自分の都合でもってあまり好き勝手なことやってると、いつかしっぺ返しを喰らうことになります。
 北○の拳風に言いますと、
「ふっ……お前はすでに機動爆雷に射抜かれている」
「何をほざくか、この……?!。ぐきゃごげぱぺぽ!!」
と一方的に認識情報が入ったのに、
「がっはははは。貴様の手の内などすでに見切っておるわ。くらえ、秘拳“超光速艦載機編隊返し!!」
「むうっ……。因の先手をとられたかっ……」
と、情報の発信と受信の間に因果の連鎖がねじくれて伝わり、しまいには誰が言いだしっぺなのかわからんようになってしまいます。で宇宙の物理法則の神さんは「あんまし勝手なことばかししとったら、しまいにゃ怒るよ、ワシ。ホンマに」と腹を立て「ごちゃごちゃしとるから、まあいっぺんちゃらにしよ。ちゅうに」と超光速流の情報を受信出来ない状況が出現したんです。これが超光速航行の事故が多発した原因であるというわけです。(ホンマか、ホンマにええんか。こんなことして……)
−あかん!世間が許してもこの色物ハンターが許さへん!!(「いろもの物理学者」談)



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