人外協のみなさんにはペでお馴染みのローダンと航宙軍史のロックウッドに何の関連性があるのか。“外道と一緒にするんじゃない〜!”というお叱りの声が聞こえてきそうですな。でも、やっちゃう。
どんなこじつけなのかというと、SGと遭遇したロックウッド大佐は地球の荒廃しきった姿をムルキラによって未来視し、結局SGの提案を拒否しようとしたわけですが、これを積極的に受け入れたちしたらどうなったでしょう。
敗北する地球人の未来を憂い「技術革新せにゃならん」と過去の地球に戻ってきたのがSGですよね。そのSGの話とムルキラの未来視から、ロックウッド大佐が「いや技術うんぬんちゅうよりも社会改革せなあかんやろ」と考えたとします。で、SGをうまいことおだてといて、未来の超技術をユリシーズに移転します。この時にユリシーズの乗員を説得し服従させ、超技術を秘匿したまま太陽系に帰還します。航宙軍には超技術のことは黙ったまま軍内部に同調者を増やし、クーデターを起こすんですな。(タイタン−維新軍蜂起−≠ニいうタイトルになるかもしれない・)
もちろんロックウッド大佐は私利私欲のために軍事力を把握しようとしたのではない、はずです。超技術を着々と実現化させそれらの軍事力を背景に地球側、航宙軍本部に対して統一太陽系政府の設立を呼び掛けるのでありました。汎銀河世界との接触に備えて、より成熟した人類の社会体制を築き上げようするんです。で、まあ、ロックウッド大佐はサイボーグ化により人工的な不死性を得て終身執政官として人類社会を指導し、汎銀河人世界と丁々発止とわたりあうのであった。山あり谷あり涙あり笑いあり、なんでもありが延々と……、とこうなるとペみたいでしょ。
ロックウッドとローダンとの共通項というのが、
ロックウッド | ローダン | |
---|---|---|
地球外文明との接触及び 超技術の移転 |
SG | 月に不時着したアルコン宇宙船 |
不老不死化による歴史の目撃者 あるいは創造者 |
サイボーグ化手術と外部記憶装置 | ワンダーランドの住人の超技術 |
所属 | 軍 | 軍 |
まあ、たったこれだけとも言えますが……。
もちろんSGの超技術にしたところで、ユリシーズ一艦で航宙軍に対抗しうる戦力とはいえないでしょうから、ペと同様な独善的な行動はとれないですし、それにそんなことしたら因果律の関係も崩れてSGとの遭遇もなくなってしまうでしょうけど。そうした技術面、因果律の関係上ロックウッド大佐はペになり得ないでしょうが(「当たり前にこと言うんじゃねぇー、いまさら」と文句を言われてしまいそうですが)、それに加えてロックウッド大佐は軍という組織を体現化した人物であ
ったということも重要なのでは、と思うわけです。
ペは地球外文明と接触した後正義の人≠ノなってしまったわけですが、ロックウッド大佐は個人の良心なり価値観を持ちながらも軍人という規範を終生保っていたように思われます。彼自身の判断基準によってSGの提案を拒否しようとしたわけで、軍の出先機関であるユリシーズ艦長としての職種をはみだしたものだったのかもしれません。しかしながら軍という組織の価値観としては、上官の判断が誤ったものとして叛乱した江崎中佐ら乗員の行動こそ糾弾されるべきものだったのではないでしょうか。上官がアホやからやってられへんと反乱を起こされては、軍という組織が成り立っていかないと思うのです。まあユリシーズでの出来事に関しては軍令部はらしくない反応をしているように見えますけど。軍というのはすごく現実的な組織だと思うわけです。入手出来得る情報を分析し、数量的な生産力攻撃力等を見積もり、社会政治的な状況を見極め、対立する可能性とその潜在的危険性に基づく戦略戦術の計画立案、訓練といったように、あまりIFの入り込まない世界だと思うわけです。それこそ因果律を踏まえた数量的に計算される仮定に基づきますが、明確な現存する事件に対し活動をするのが軍だと思うわけです。
軍令部は反乱後のユリシーズからのみの情報によってSGを受け入れ、その技術の応用をまだ帰還途上のユリシーズに許可しています。反乱した乗員の立場をすんなりと認め、まだ何の検討も加えないうちに作戦行動下の艦に未試験の技術を移転させるなど冒険主義もいいところです。こんな展開になっていったのは、因果律の必然性というやつだったんでしょうか。
ロックウッド大佐は、まぁなんというか正直な人ちゅうか嫌なめに合うてもやになって除隊したりしないし、左遷されても黙々と勤務し続けてます。実直などちらかといえば不器用な人とも言えますが、ひとつの軍人の典型として表現されているのでしょう。軍人といっても艦政本部にいる行政官とは対局にある駒≠ニしての人的資源である兵士達の立場であるようです。
ただロックウッド大佐はその経験、経緯かから重宝な駒になっていますからサイボーグ化が行われ、指し手(航宙軍)によって何度でも棋盤上にのせられたんでし
ょうな。この経験をつんだ士官は重要な人的資源であるする航宙軍の立場なんでありますが、人工的な不老不死(というより再生化)でもって現場に配置し続けるというのも軍という保守的な体制内だからこそ出来るのかもしれません。
個人の人権を無視して一つの戦略資源として扱う軍という組織のあまりに現実的な性格のあらわれかもしれませんが、この点は軍に限らずどんな組織にしても大なり小なり持っている一面でしょう。まぁ航宙軍の外宇宙艦長クラスの人となれば一人前の艦長に養成するための経費というのは莫大なものとなってくるでしょうから、新規の人材を登用し教育することを考えればサイボーグ化に要する費用の方が安上がりになっているのでしょう。
それにしても数百年の時間にわたり再生・延命処置をほどこし現場での指揮権を与え続けるというのは、軍という保守的な固定化された階級社会でなければ出来ないのでしょうか。外部記憶装置により随時新たな技術・社会情勢・一般常識等の情報は蓄積され更新されていくとはいえ、その度ごとの違和感に耐えて適応していくのはかなりの心理的な負担がかかるように思われます。そんなカルチャーショックの大きさという点では、技術的にも考慮されているとはいえ、変化率の少ない階級社会である軍というのは最小限のショックで済むんじゃないですかね。
なんやぺの話からえらくズレてきてしまいましたが、まぁ元から縁のない話を火のないところに煙をたてようとしたわけで、この項終り。