敗北親父は黄昏に・・・・第20回

第三勢力:阪本[初代]雅哉

 甲州画報や人外協ML、さらには「こうしゅうえいせい3V」にまで、最近何かとダイビング関連の話題が目につくことが多い。甲州画報の表紙も今年に入ってからも2回に1回度の割りあいでダイビング中に撮影した(たいして珍しくはない、いやある意味珍しいか)海中生物の写真が使用されている始末。
 はっきり言ってダイビングに興味のない人には鬱陶しい限りの状況が続いてますね。
 もっとも、これは原稿執筆者の分布の偏りの問題で編集者に責任があるわけではない。他の人が自分の興味の有る分野について(もはやテーマがSFや谷甲州との関係が稀薄になってから長い)原稿を書くことで容易に解決できる問題なんだけど。
 というわけで、関係者の奮起をはかるために、、、
 スクーバ・ダイビング(Scuba Diving、以下単にダイビングと記す)は、圧縮空気のタンクとその他必要な(一部必須でもないけど)器材を持って海中に潜るだけの簡単な行為です。
 詳細は人に聞くなり Internet などで検索してもらうとして、レジャーとしてダイビングをする場合、資格(免許)は必要はない。
 だから適当に必要な器材を買うなり借りるなりして、好きな海に突入したところで誰にも止められません。たぶん、咎めだてするのは地元の漁業関係者とかだけだろうし、漁業権を侵さない限り非は咎める方にある場合が多いはず。
 とはいえ、人は大人になるまでに健全な社会生活を営むために世間一般のルールにある程度従うことを学ぶし、無事大人になれるだけの知能が有るならまったくの初心者がなんのサポートもなく海へ潜るようなリスクは嫌うのが普通でしょう。
 だからリゾート地なんかで体験ダイビングでもするか、適切なダイビングショップへ行きそれなりの講習を受けてCカードを取得することになるのが一般的かな。
 ところで渋谷や心斎橋あたりではキャッチセールスやホストクラブの勧誘のように路上で「ダイビング始めませんか」なんて声をかけている店もあるらしいけど、普通に営業しているとそんなに儲からないからそれだけ人件費をかけられる裏にはなにかあるかもしれないし注意した方がいいでしょうか。でも、お金に余裕があるならお金で快適さを買うのも大人の態度かもしれません。
 とにかく、ひととおりの経験さえ積めば(Cカード取得後に適当な環境で潜ることを繰り返せば大丈夫)ほとんどの場合、年寄りから子供までたいして体力を使うわけでもなく、楽しめるレジャーになるだろう、いやなります。ときにダイビングは危険なスポーツと言われて、たしかに競技人口にしめる年間の死亡事故数は結構多いけど、安全への配慮さえ忘れずきちんと守っていれば危険を感じる場面もそんなにはないと思う。
 ダイビングは一般にスポーツに分類されているのに、なぜか他人と優劣を競う競技がない。私は別に他人と競いたいとは思わないけど、あのどんなつまらない競技にでも、危険があっても平気で大会を開くアメリカでも聞いたことがないつうのはどうしたわけでしょう。競技がないからと言って技能の優劣は歴然として有るし、初心者の間は技能の上達ってスムーズなダイビングのために重要な要素なんだけど、プロをめざすわけじゃなければほどほどで十分かな。
 ところで、ダイビングって何が楽しくで続けているのか。昔は「ダイビング=魚を突く」って時代もあったらしいけど、日本ではこれは実は違法。海外では違法ではないかもしれないけどもはや流行りません。で、最近では「魚(海洋生物)を見る」、「写真を撮る」あたりが主流らしい。
 主流らしいというのは、実は私は魚を見ることに別興味があるわけではないから。
 たしかに、最初にイソギンチャクに共生するクマノミ(いまから思えばどこにでも居るたいしたことないクマノミだったが)を見たときは感動した。でも、これは子供のころにハレー彗星の話を本で読んで次回の接近が遥か未来だとがっかりした過去と、それを実際に目で見た(実際には肉眼では見るのは難しい、期待はずれだったが)記憶のある人なら分かってもらえると思う。
 別に魚を見るのが嫌いってわけでもないし、海の中でガイドに「これは珍しい」とか言われると、わざわざ見には行く。だけど、ダイビング終了後に見た海洋生物を同定する作業、つまり名前を確認して名前を覚えるなんて面倒くさくてどうでもいい。
 ダイビングをやってるとログブックを付けることになる。(もっとも途中で付けなくなる人も多い)ログブックの例
 各ダイビングのデータを記録しておく、それだけのものだけど、ただデータを記録するだけならたいした手間もかからない。だが、実は右の写真のように同定した海洋生物のリストや潜ったときの感想、そして恐ろしいことに同じグループで潜ったチームで記録や感想を共有したりする場合もある。(このあたりの事情はどういったグループで潜りに行くかにかかっている。ダイビング・ショップのツアーで行けばたいがいログ付けの時間がある)
 小学校へ行ってたころから「感想を作文にする」といったような作業は大嫌いだったりするのに、ましてやよく知らない他人の記録にいったいなにを書けば良いというのだ。
 だからといって「断固拒否して知らん顔をする」そんなことが出来なくなってしまった。日本の平均値で考えて半分を過ぎる期間の人生を過ごした結果として無難な結果を求めるようになってしまったんだからしかたがない。
 しかたないので、文章を書くよりは無難と下のように下手くそな絵をログブックに描きちらすことになる。当然、他人のログブックに同様に下手な絵を描く。と、なぜか「『こうしゅうえいせい3V』の原稿にイラストを描いてくれ」なんてとんでもない依頼がきたりするわけです。
 っうわけで、「お気楽ダイバーズ」のイラストを見て「なんじゃこれ」と思われたみなさん、
 ごめんなさい。悪いのは無難な人生です。

ログブックの例



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