谷甲州は無謬である
−外惑星の《食》−

岩瀬[従軍魔法使い]史明

 外惑星の食生活。これはいったいどンなものか??
 航空宇宙軍史というとちみつな設定、にじみでる一般兵士の生活感……といったイメージがあり、それは全くその通りですが、よくよく読み込んでみると、生活の具体的な描写というのはほとんどない。食事についても例外ではありません。(それで前述のイメージを醸し出せるのはこれはもうプロ作家のわざとしか言いようが無いですね)
 ただ、「カリスト」の記述からすると、食糧は概ね自給しており(あるいは自給能力があり)、地球圏から輸入される食材は庶民には縁の遠い高級食材であることは判っています。それでは戦時下でどうして庶民が飢えたのかというと、外惑星における食料生産は当然人口環境に依存していますから、重金属や機械類の禁輸、消耗していく軍需産業へ生産力やエネルギーを注ぎ込まなければならないことによって食料生産能力がダメージを受けるからですが……まぁそんなことは今回のテーマではありません。(航空宇宙軍史の設定への突っ込みは今回はナシなんです)
 よーするにですね。外惑星で食べているものはいったいどんなものだろうか?ということを想像してみよう、ということなンです。
 外惑星圏では(というか地球の外では)、食糧を自然環境から調達することはできません。しかし有機物質と光があれば緑色植物を育てることができ、それを基盤にして生態系ピラミッドを上に組上げていくことは理論上は可能です。つまり牛でもぶたでも魚でも精算することは技術的に可能です。
 外惑星圏に有機物質が存在することは以前の無謬でも 述べました。木星や土星やタイタンの大気上層部に有機物質が存在することはスペクトル分析で既に確認されており、その観測結果はガリレオ衛星の地殻氷にも多少の有機物質が含有されていることを示唆します。地球の1/25しかない乏しい光も、植物の品種改良・集光システムの工夫・核融合などによる人工光お補助いずれかないし複合によって比較的簡単に解決できるでしょう。
 とすると、あと残るのは<効率>の問題です。
 植物連鎖の階梯を一つ昇るごとに、エネルギー生産効率は少なくとも一桁は減ります。
 また、健康な動物を飼育するにはしばしま広い空間が必要で、その点からいっても四足動物は効率が悪いでしょう。外惑星の国産牛肉は地球さんの輸入牛肉より高価だったりすることもありえます。(地球さんの牛肉は宇宙空間を延々と冷凍状態で旅するわけですから、飼育状態が多少悪くても新鮮な国産牛肉の方が美味しい……かもしれません)
 ということは、庶民の口に入るのは、単細胞培養食品(クロレラやその親戚、酵母菌やその親戚)が主流……かもsひれません。あと、穀物や野菜も、工夫しだいで効率的に栽培可能かも(外惑星で始めてコメがとれた、とか小麦の商業栽培に成功した、とかいうのは記念碑的にいだいな事件に違い有りません)。また、魚というのは空間を効率的に使えて、種類によっては比較的手間もかからずにでいるかもしれません。ブロイラーや鶏卵というのも、地球での現状を考えると結構可能かも。(トリさんにはとっても気の毒ですが)。また、クローニングのような組織培養で、肉類や野菜類・穀物を生産できるかもしれません(きっと味は落ちるでしょうけど。
 結局、それらがどこまで実現しているかは実際のコスト次第。第一次外惑星動乱(21世紀末〜22世紀始め)のころは、どんな状況でしょうか。
 とにかく、庶民の食材の主流派、顆粒状とか粉末状で売られているんではないでしょうか。だとすると食料品売場はいささか殺風景ですね。気分としては野菜くらいは付加えてあげたいところですが。金持用の地球さん輸入食材は、売場の彩りとしては欠かせないかも。
 調理の方法はどうでしょう。日本の懐石はしんせいな食材の力に頼りすぎていてきっと難しい。だけど、豆腐系や海草系の食品加工技術は広範囲に応用がきくかも。乳製品を踏んだんにつかうフランス料理も苦戦しそうですね。牛乳もどきならなんとか作れてもりょうしつの牛乳は安価な生産は難しいかも。
 粉食調理のヴァリエーションの豊富さから、中華料理が外惑星調理の主流になると思うのはわたしだけでしょうか。タナトスとインスタントラーメンはけっこう似合いそうな気がするンですけど……



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