ジャカルタからの手紙5
Selamat Hari Natal dan Tahun Baru 1991!!
Merry Christmas & A Happy New Year!
Wishing your health, Happiness, and prosperity
in the new year!!
1991年が平穏で良い年でありますように。

川崎[漁師]博之

 みなさん、いかがお過ごしですか。こちらは相変わらず南国でして、今は雨期にはいってまして天候も崩れがちで雨の降る日が多いです。日本はどうですか?
 さて、甲州画報31号も無事受取ました。ありがとうございます。その中の記事で中野[お肉屋さん]隊員の「検証!陸戦隊 第2部 第3章」興味深く読ませていただきました。それにしても、銃器等にお詳しいですね。イラストに描かれていたように、オープンサイトの銃では銃床に頬を付けると自然に照準が付けられるようになっていることを初めて知りました。
 M−16とか射ったことがあるのですが(もちろん陸戦隊に入っていたわけでも反政府ゲリラやってたわけでもなく・・・)、銃床は銃を安定させ反動を受けるために肩でささえるために付いているもんだとばかり思ってました。私は右利きですから右肩に銃床を肩付けし右頬を付けるわけですが、そこは素人恐々やっているものですから、右頬を押し付けると反射的に目を瞑ってしまい照準もくそもなく射ってたようですね。それでもさほど的外れでもなく弾はとんでいっているようで、銃の手入れの簡単さともあわせて、「ふーん、やっぱり軍用銃は誰でも、ワイみたいなもんでも扱えるようになっとんやな〜」と感心したことがあります。
 お遊びで射ってただけですから、そこがやはり銃を武器として捉えていないために照準などのシステムを深く考えなかったんでしょうか。「射つ」のは弾がそこそこに飛んで行けばそれなりにおもしろいわけでして、「撃つ」ことになりますと対象への思いこみ、憎悪、恐怖、歓喜、冷酷さ、無関心、そして撃つことの必然性(大義とか正義とかいうやつも)など、「射つ」こととは心理的にも大きく異なるような気がします。
 また、銃を向けられても、撃たれれば死ぬんだということを『自分の現実』として実感していなかったのではと、今当時のことを振返ってそう思います。撃たれた死体や血痕がぶちまけられた光景を目にしながらも、銃を突き付けられて車から下ろされても、家の壁に弾が撃ち込まれても、市街戦に出くわしても、飲み屋の喧嘩で発砲騒ぎに巻き込まれても、ほんまにパニックになっててえらいびびってはいるんですが、「あかん」と思いながらも自分が弾に当たって死ぬ姿を想像していない部分があったようです。当事者じゃないという思いがあるからでしょうか。考えてみれば、騒ぎに巻き込まれてしまったり、相手方に理由?があれば、自分がどう思っていようが撃たれてしまうんですよね。でもどこかに《ここで死ぬはずのない主人公》のつもりがあるんです。
 『遥かなり神々の座』の中で、滝沢がクマールを撃ち殺した後でニマに「・・・必要な場合にためらわず人を殺せる能力が重要だ。お前にはそれがある」、「・・・お前は天性の兵士だ。殺すことをためらわない男だ」と言われていますが、やはりそうでないとそう簡単に人は撃てるもんじゃないんでしょうね。滝沢さんは状況によっては殺すことをためらわない男であると同時に、どんな形の死でも覚悟してるというかありえることを実感しているんでしょうね。

 なんや新年早々するような話でもないんでこのへんにしときます。すみません。
 中野[お肉屋さん]隊員の原稿に話を戻しますが、陸戦隊に装備された銃の照準システムの検証をされています。銃自体のシステムに関しては、前記したように自分で射ったことがありながら大ボケの私ですから話にならんのですが、陸戦隊の戦う『状況』について思ったことを書いてみます。

 1)陸戦隊が投入される目的、場所は?
 手元に航宙軍史シリーズがないので戦闘シーンはうろ覚えなんですが、海兵隊・陸戦隊が投入される場所というのは、惑星上の都市・軌道上の基地・だ捕あるいは漂流している航宙艦へ、奇襲・強襲をかけ突入し橋頭堡を築く・拠点を占領し相手側を制圧するのを目的としているんですよね。特に宇宙空間や惑星上の外気圏での長時間の戦闘・遭遇戦・白兵戦を前提にしてないように思います。

 2)陸戦隊の戦術は?
 宇宙空間にある基地や艦、惑星上の都市に上陸強襲艇でチームごとに乗り着けるんでしょうが、玄関を開けて招き入れてくれるはずもなく、中野[お肉屋さん]隊員も言われているように、宇宙服を着込み生命維持装置や戦闘用の各種装備を背負って行動しなければならないことでしょう。兵士達が活動するのは無重力・低重力とはいえ、空気供給(純酸素を吸わすのかな?)システムに過大な容量と重量をとられるわけにはいかないでしょうから、長時間外気圏でとどまっているわけにもいかず、いかに迅速に気付かれずに都市なり基地に入り込むかが重要な点だと思います。外気圏での戦闘は最も回避したいことなんじゃないでしょうか。同じ大地・空間にありながら、環境の、生存条件の正反対の場が接するわけですから、外から攻める側は限られた生存条件・時間とも戦わなければならないのでしょう。
 ですから、陸戦隊の戦術は、地球上の例えばハイジャックされた飛行機などの人質奪回作戦に投入される特殊部隊、空軍の降下部隊、海兵隊の水中工作隊などの戦術と同じようなものではないかと思います。目標にいかにたどり着くか、いかに内部に入り込むかが最大のポイントで、ハイジャッカーに見つけられれば人質が殺され、パラシュートで降下中に狙い撃ちされればどうしようもない、タンクのエアーがあるうちに浮上しないと生き残れないそれらの部隊の人達は、《異なる環境(状況)》からの攻撃・時間との戦いという面で、大気のない場所での陸戦隊と共通するものがあると思います。
 具体的な戦術となるとちょっと思い付かないのですが、まず侵入経路の確認と確保、目標物・対象エリアの内部状況の情報入手・分析、目標物内での行動手順の確認・シミュレーション訓練、そして作戦開始ちゅうことになるのでしょう。その侵入行動の途中での戦闘は考慮してはいるものの、侵入経路上での待伏せなどの反撃を受けることは作戦の失敗であると言えるのではないでしょうか。
 また、狙撃兵など配置については中野[お肉屋さん]隊員が問題にされているように、照準システムなり銃そのものの技術的にクリアしなければならない問題があることでしょうが、狙撃するというどちらかといえばじっと目標を待ち受ける戦法というのは、限定された滞在時間や相手方が基地外に出ざるをえない状況(攻撃がわかってしまえば待機するのは基地内の方が絶対有利でしょうから)を考えると、さほど効果的な戦法ではないんじゃないでしょうか。外気圏での戦闘を考えると、銃などの技術改良もさることながら、宇宙服、酸素供給システムの改良あるいは酸素予備タンクのデポなどいかに滞在時間を延すかということも問題になるように思います。

 3)陸戦隊の装備は?
 戦闘集団なのですから、戦力の充実が第一ですから生命維持システムを犠牲にしても重軽火器の装備、通信機器などの関連機材を優先して装備させると思うのです。2)で言ったように都市なり基地の<空気>の吸える場所に入り込むのが先決だろうと考えていることもありますし、戦争においてはいかに効率よく相手を倒すかが命題でしょうから。話が横道に逸れるかもしれませんが、戦艦の居住スペースなんてのも一番しわ寄せがくる部分じゃないでしょうか。『こうしゅうえいせい煮』で磯崎[閣下]隊員が描かれていた『寝棚』(鰯の缶詰)を見まして、「ほー、これ乗船しとったことのあるマグロはえ縄漁船の寝床とおんなしやな。かわいそうに寝返りもうてんで。膝がまげれるだけでもましか・・・。まあ客船でもないしなあ、漁船は魚捕るため、戦艦は戦争するためにあるんやもんなあ、似たようなもんや」と、あんたも大変やなーと同情せずにはいられませんでした。

 で、結局なんなのかと言いますと、『効率』のために我慢を強いられるのは人間の『生活環境』で、だから陸戦隊の装備もそうであろうと・・・(こじつけですかネ)。何キロぐらいの重量の装備になるんでしょうかね。何時間ぐらい空気を自給出来るんでしょうか。戦闘用の宇宙服と通常のものとどう違っているんでしょうか。機械化部隊じゃないんでしょうから、必要最低限のものしかくれないんでしょうね。
 装備のあれこれは中野[お肉屋さん]隊員が検証されているわけで、技術的な面ではこれからもいろいろと改良され新たな装備もつけられることでしょう。
 しかし、なんですね、戦争をやりたがっている人というか「行ってこい!」と号令かける人達というのは、いつの時代になっても兵士を消耗品というか「なんとかしてこい!」という考え方を変えないんでしょうなあ。

敬具



back index next