ジャカルタからの手紙
★「こうしゅうえいせい煮」拾い読み★

川崎[漁師]博之

 何やら時期はずれの話題を持ち出してしまうようで申し訳ありませんが、 先日[隊長]さんより「こうしゅうえいせい煮」を届けていただいたもので・・・。それに同封されていた隊長直筆の手紙に、インドネシア・リポートは楽しみにしておりますのでという1文があったものですから、また調子に乗って書かせてもらいます。
 題して「こうしゅうえいせい煮」拾い読み。

その1.究極兵器カタログ
 みなさんそれぞれの究極兵器を持ちつ持たれつ(って、こういう言い方しましたっけ)されているようで、中でもつい「うん、うん」とうなづいてしまったのは中村[不明]孝隊員の母上愚痴こぼし兵器?「あんた、はよ結婚しいや」攻撃。
 ほんまようわかります。日本に帰国する度に、実家に電話すればこの科白の絨毯爆撃を喰らい続け、「ええかげんに日本に落ち着きいや」焼夷弾に身を焼かれる日々を過してましたから。まあ「あんた、はよ結婚しいや」攻撃に対しては、「へえ、へえ、しまんがな、そのうち」防空壕にとりあえず避難出来ましたが、敵もさるもの?泣き落とし化学兵器を持出しまして、「あーあ、孫の顔も見れんと死ぬんやなあ」溜め息ガスで窒息状態に陥れようとします。中村[不明]孝隊員もお気を付け下さい!?
 ところで、一般的な究極兵器というわけでもないのですが、”弱点”を武器にした究極の戦法というのをひとつ。
 小笠原諸島父島にいた時に聞いた話ですが、小笠原近海では時折台湾漁船が領海侵犯して密漁しにやってくるんだそうで、それを取り締るために海上保安庁の巡視艇が出動するのですが、当然台湾漁船は巡視艇に見つかれば逃げ出します。どころが台湾漁船はずんぐりむっくりの木造船で、よくこんなところまでと感心するくらい小さな20〜30トン程度のもので、針路を出鱈目にとって巡視艇を振り切ろうとしますが、速力が違い過ぎますから振り切って逃げることなど無理な話。そこで巡視艇が並行して走りながら停戦を命じて接舷しようとすると、漁船の方は自ら巡視艇に向けて舵をきり体当りをしようとします。木造漁船が鋼船の巡視艇と衝突すれば、これはもう木造船が大破、沈没という運命にあります。巡視艇側は、そんなことされるとかなわんということで距離をとります。海上保安庁としては、向こうからぶつかってきたとしてもその際人が死ぬかもしれないし、ひいては外交問題になるかもしれない、つまり「あとで何言われるやわからん」ことは避けたいと。
 で、巡視艇は放水攻撃に切換え、漁船に水をぶっかけます。機銃も装備されているんだそうですが、通常は威嚇射撃もしないそうです。台湾漁船の方はそうした日本漁船のやり方を熟知していて、強制手段をとらないと安心しており、「おら、おら、船ぶつけるど。沈んでもええんかい」と開き直りながら領海外へ逃げるんだそうです。
 まあ、以上のような状況は日本だけで通用するのかもしれません。戦時でもないですし。例えば、航空宇宙軍の巡洋艦に外惑星連合の木造仮装巡洋艦が(そう言えば、木造の掃海艇の話がどこかでありましたが)、「こら、ぶつけるど。こっちはぼろぼろなんやで。そこどかんかい」と喚きながら木星域へ逃げ帰・・・れるわけないもんね。

その2.地球外環境の日常生活
 岩瀬[従軍魔法使い]史明隊員が書かれた『農林28号、宇宙へ』を読んでまして、「そうか、宇宙でも炊きたての御飯が食べられるんか」と自分がこれから宇宙へ赴任するわけでもないのに何やらほっとしました。「おかずは・・・、そやな、漬け物ぐらい作れるやろし、納豆、生卵、海苔。まあ卵は生鮮食料品で貴重品やろから・・・」と考えていたら、御飯に生卵をかきまぜ納豆をぶっかけ漬け物をつまみながら飯をかきこむという私の食べ方を、外国の同僚達が実に気味悪そうな目で見ていたのを思い出しまして(単に食いかたが下品だったからかも)、「そやなあ、いろんな人がおるからなあ。ましてや《くさやの干物》なんか焼いてたら、それこそ空気再処理システムの負担になるいうてひんしゅくものやろしなあ。困った。困った」。何を独りで困ってんねんな。
 ところで、『地球外環境の日常生活』で思い出したTIMEの記事があるのですが、「ノアの箱船−続編」ということで、 アリゾナ砂漠に1・3ヘクタールもの広さのいわば温室を作って外の環境と全く切り離し(電力の供給は外部から)地球環境のレプリカを作り、その閉鎖された循環系の中で8人の科学者が2年間自給自足の生活をしながら、地球外でのスペースコロニーとしてのモデル実験、調査及び地球の生態系や循環システムの研究を行なうというものなんです。彼等の日常は、1日のうち4時間科学的な実験や研究を行ない、4時間は畑を耕したり魚を捕ったり乳しぼりをしたりして過すとのこと。
 熱帯雨林からサバンナ、湿地帯、砂漠と海洋ととりあえずいくつかの環境を寄せ集めただけですから、地球の環境の複製とは言い難く、大気や海洋の循環系を再現させることは無理な話でしょう。しかし、何にせよこのスペースコロニーのプロトタイプを作ってしまおう、ほんでもって2年間取りあえず生活してもらおう、そして、参加者達にスペオペ映画に出てくるようなユニホームを着せてしまう(記事のコピーだとわかりにくいかも)「のり」の良さに、あるいは「ひょっとしたら、映画のセットにするんじゃないか」と思わせるような(そう思ってしまうのは私だけでしょうか)「茶目っ気」に、アメリカちゅうのはおもしろいなあと感心?させられます。
 日本の大手ゼネコンなんかでもすでに未来都市やスペースコロニーなどの設計や模型を作ったりして、技術的にはそういった実物モデルを作れるんでしょうから、どこかにそれをぶったてて「あなたも2年間の自給自足生活をやってみないか!隊員募集中!!」って広告出してくれないでしょうかねー。 そしたら応募しようかな・・・。
 でも、地球の環境をスペースコロニーで再現しようとするとえらい金がかかるでしょうなあ。「やっぱり本物じゃなきゃ」と土やら海水やら何から何まで地球から持ち出せば、坪あたりの値段なんて東京よりも何倍もしたりして。そのうちスペースコロニーの分譲?の際には、「なんせうちは本物をつこうてまっさかい、ほらもう環境抜群でっせ。それにでんな、こんな海は他ではあらしまへん。なんせうちはコモロ沖のシーラカンスの泳いどった海の水つこうとるんですわ。どないでっか?」と売り込まれたり・・・しないか。

敬具

 

新聞の切り抜き



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