甲゛州便り

川崎[漁師]博之

16,May,1994

 日本は米不足だそうで(画報七十号訓辞、七十一号こうしゅうでんわ)。昨年不作だったんですか、それとも米不足は毎年のことなんでしょうか。いくらなんでも米の備蓄がなくなるようなヘマは食糧庁の役人さんでもせんような気がしますが……。*1
 
米の自給率がどんなもんだか知りませんが、まあ米が足らんとなったらどっかから買い入れるしかないんでしょうけど 外米の輸入に関する世論操作とちゃいまっか。政府の陰謀が着々と……(ちゅう程のもんでもないなぁ)。外米はまずいし安全性に問題あるから自由化させるなと対外的(対内的?)に強気な態度をこれまで以上に示そうというのか。お百姓さんに「ねっ、これだけ米不足やと騒いでいるのに外米の消費伸びないでしょ。だから大丈夫ですって、自由化しても。日本米は売れますって」と納得させようというのか。米国に「いゃーもう大変ですわ。米不足やっちゅうのに。やっぱり日本人は日本米しかあかんようですわ。せやから米の話しはおいといて、他の話進めましょうや」と言い訳にしようというのか。
 まあ政治屋さんも御多忙のようで。こんどの首相は長野の上田(?)が地元だそうで。こっちの新聞には上田は真田幸村氏が徳川家康氏と合戦した所であると紹介されておりました。まあ ほとんど こっちの人には わからんでしょうなぁ。しかし真田氏や徳川氏が引用されるとは これも前任の人が大名家の末裔と紹介された影響でしょうかねぇ。
 ところで、そちらはそろそろ梅雨入りしようかという頃にえらい時期はずれの話題ですが、一月頃甲州親方が大雪で大変やといわれてた頃、こちらはえらい酷暑でした。なんでも ここ何十年かの最高気温を記録したそうで、気象台の発表によりますと43.6℃に達したということです。ちゅうことは、コンクリートやアスファルトかこまれた場所や路面は五十℃は越えていたんじゃないでしょうか。知人のエジプト人の奥さんは、自転車に乗っている最中、熱射病だと思いますが 気を失って倒れ病院にかつぎ込まれました。不謹慎な言い方ですが“エジプト人も倒れる”酷暑というのに妙に感心してしまったのでした。
 話しを最近(?)の話題に戻しますが ジェームズ・クック大学の図書館には残念ながら甲州親方の作品は入ってないのでした。例の検索プログラムで捜したんですが、だめでした。適当に、小松筒井星半村光瀬平井眉村山田梶尾新井大原神林石飛大場草上夢枕等々の著者名を打ち込んでみましたが、いわゆるSF作家の人達の名前は見当たりませんでした。万葉集、源氏物語などの古典、江戸期の作品を別にすると、近代作家では夏目谷崎川端三島大江安部遠藤新田等の作家の名称がありました。作品数では三島由紀夫氏が十六点と最も多いようです。英訳された作品数に比例しているんでしょうか。
 で、念のため日本文学が集められた書架をのぞいてみたところ、誰が入れたものやら、赤川次郎「泥棒物語」つかこうへい「蒲田行進曲」などの角川文庫があるのでした。それから堺屋太一「峠の群像」とか司馬遼太郎「最後の将軍」庄司薫「さらば怪傑黒頭巾」などの文春文庫もあるのでした。貸し出し係りの人に、どうしてこんな本があるのか聞いてみましたが「へぇー こんなちいさな本があるなんてね。日本の本ってみんなこんなのなの」と驚いておりました。でも入手した理由は結局不明。日本のSF小説に関しては、英文の評論(コピー同封)があるだけのようです。この評論の中には新井素子・夢枕莫両氏の名が取り上げられていましたが、これまた残念ながら甲州親方の名はありませんでした。次回は必ず甲州親方の名も載り世界に知られることになるでしょう(……って続編が書かれるとは思えないけど)
 それから ハスミ大佐に依頼したい仕事ちゅうことでしたが、これは「仕事」ちゅうもんでもないんですが、ハスミ大佐が軌道上で奇抜な死体を発見するちゅうのはいかがなもんで。軌道上で例えば静止衛星にひっかかった背広着てネクタイしめて革靴はいてる死体ちゅうのはえらい奇抜なもんやと思うんですが。それが宇宙飛行士でも宇宙産業関係者でもない人だとしたら。どうやって大気圏外に死体遺棄出来たのか。そこは単純にどっかの民間シャトルから捨てられたみたいな話しにはならず、ナゾがナゾを呼び、行掛り上あるいは業務上事件に巻き込まれることになったハスミ大佐が、ボヤキにボヤキまくりながらこの謎解きにいどむちゅうのはどないですか。これ、前々回(?)のあとがきに、最小の密室ということで宇宙服の電子レンジ殺人(ちゅうと語弊がありますが)が取り扱われ、最大の密室ということで地球を密室と考えた生態系殺人等の話しがありましたが、密室の外は密室とゆうことで、ハスミ大佐にはSFにはならない最大の密室殺人(というのもちょっと語弊がありますが)にいどんでもらいたいものであります。
 ついでに、終りなき索敵のパロディちゅうよりも、どっちかと言えば 牛どん仮面隊員の世界(?)に近い話しですが−。

終りなき点滴−  人工的に延命され何度となく“生”を繰り返したロックウッド大佐の回顧録。「私の記憶は 何時も無機質で殺風景な病院のベットで目覚めた時から始まっていた。覚醒時の記憶は、私本来の生体部分がほとんどなくなってしまった今でも点滴針の鈍い痛みと重くしびれた右腕の感覚を思い出させる……。」
終りなき耽溺−  情報流の傍流の一つにまぎれ込んでしまったシマザキ少佐が辿り着いたのは、もうひとつのありえたかもしれない世界だった。そこはパスされた、あるいはボツにされた世界だった。人外魔教教祖さんのパスされた原稿世界みたいなのばっかり。それはもう××で×××な××でした。
終りなきビフテキ−  SGと遭遇した作業体K。何の因果かブラックホールの集合体を飲み込み、底なしの胃を持ってしまった。どういう成り行きだか航空宇宙軍主催の“ビフテキ大食い大会”に参加することになった。ひたすらビフテキを食い続ける作業体K。意地になりビフテキを供し続ける航空宇宙軍。意固地になった航空宇宙軍は地球牧場化計画を押し進めた。地球上の耕作地は全て牧場となった。森林は焼かれ街は壊され牧草地に換えられた。大規模な生態系の破壊は地表の生産力を急激に減少させ砂漠化が進行した。人類は他星系へ強制移住させられた。ビフテキを食い続ける作業体Kはふと地球の未来の姿を垣間見てしまった。草木一本はえぬ荒廃しきった地球の姿を……。

 もうひとつついでに、早川書房に甲州作品を再版させる方法として、「ちょっと陰険ささやき戦術」ちゅうのはいかがなもんで。まず 早川書房社員名簿を入手。特に企画部、営業部社員の住所と 彼らの通勤路、手段を確認。彼らの通勤電車なりバスに一人の社員につき数人の人外協隊員が同時に乗り込み、さり気なく社員を取り囲む。で、通勤の行き帰り車中にて「たにこうしゅう」とささやき続ける。あるいは甲州作品も話、評判を話し続ける。早川書房社員に対し直接的な接触をしてはならない。まあ いわゆる“刷り込み”ちゅうやつですか……。

 話しがあっちこっちにとびますが、こうしゅうでんわ(七十一号)に蝿の話しがありましたが、オーストラリアは蝿が多い。内陸部はもっと多いようで、このへんは椎名誠「熱大陸 ダーウィンの海をめざして」に書かれてます。甲州親方の蝿のたかった食い物の話しと似たような話しも載ってます。
 脈絡のない思い付きを書きますが、「終わりなき索敵」のシマザキ少尉達が再任した世界には「おもいでエマノン」(梶尾)が居そうな気がしませんか。彼女が全ての過去の記憶を抱えているのは監視機能が活性化しているってことで……。それともシマザキ少尉の意識の一つってことになるのかな……。彼女がマヤに会ったらどうなるんでしょうか……?

 追伸:「三月までに仕上がるんだろうか……」といっていた論文は案の定四月下旬までかかってしまったのでした。甲州親方がしめきりにおわれるのは収入のためなんでしょうが、こちらも“しめきり”(?)を大幅に過ぎると金を払わにゃならんので困ったもんです。

*1 去年の冷夏で東日本中心に大凶作だったのが直接の原因ですが、古米備蓄も邪魔者扱いされて年々減らしていたことが背景にあります。



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