岩瀬[従軍魔法使い]史明
本特集の最後は、おなじみのメカ論考である。
とはいえ今回は「異常兵器」もないし「アクエリアス計画」もない。ここでも重点はあくまで次回のための基礎資料である。
甲州世界のハードウェアは、頑固な科学法則の延長上に構築された、確固とした手触りをもつ《モノ》である。安易に超科学に逃げず不器用なほどかっちりと構築してしまうその姿勢故に、我等いびつなファンもとンでもない……あるいはまっとうだが執念のこもったハードウェアの構築に血道を上げてしまうのである。 来年以降は「異常兵器」や作中兵器だけでなく「異常土木機械」も募集したいものだ。
なお、「アクエリアス計画」というのは、去年刊行した年会誌「こうしゅうえいせい煮」に掲載された、航空宇宙軍史「エリヌス−戒厳令−」に登場するフリゲート戦闘艦「アクエリアス」を、基本的には谷甲州の設定に準拠しつつも、おおいなる読者の思い込みと執念によって、細部まで肉付けし、構築しようという企画である。そしてここで確認しておきたいのは、あれはあくまで一つの試案であって、人外協としての決定版というわけでもない、ということである。
今後の構築作業のために、去年の作業のうち編集処理の性質上表面化させることができなかった部分、すなわち「いかにしてアクエリアスは構築されたか」という部分、甲州作品のどんな記述が見逃されてはならないか。物理法則にのっとればどのような範囲のものでなければならないか。どこから先が書かれてないから仕方なく(いいことに?)独創をねじこんでつくった部分であるか、ということを整理し、公開する必要があるだろう、というところからこの論考を阪本[隊長]雅哉氏に作成していただいたわけである。
従ってこれは今後のための資料であって、「アクエリアス計画」自体での設定には必ずしも触れていない。
なお本論考に登場するデータは、基本的には先の「アクエリアス計画」につかわれたものと同じだが、記録の散免もあるため、今回新たに試算しなおした部分も多い、とのことである。また、各分野別の考察においては、先の「アクエリアス計画」に携わった皆さんの論考を参考にしていることはいうまでもない。