油地獄・第49回

第三勢力:天羽[司法行政卿]孔明

 さてみなさん、あけましておめでとうございます。そりゃあもちろん、みなさんがこの文章を読むのは1月の半ば過ぎですからね。はっぴーにゅーいやーってな気分はとっくに抜けてしまって、むしろ寒中見舞いのお葉書でも出そうかって勢いかもしれません。でも、でもですね、ぼくがこの文章を書いているのは、1月1日の午前2時過ぎなんですよ。本来なら、草木も眠る丑三つ時なんですよ。そんな時間に起きてこんな文章をつらつらと思いつくままに、改行さへも入れずに書いているわけです。どうです、読みにくい文章でしよ? えぇえぇ、読みにくかったら、読み飛ばしちゃったっていいんです。でもね、いや、だからこそ、ここはひとつ派手に陽気に「はっぴーにゅーいやー」と書いたって、誰に迷惑をかけたりしないわけなんです。だからともかく、きんがしんねんでございますよ。いやいやいやいや、なんかしらんけど、12月31日から1月1日ってのは、昨日と同じ次の日の繰り返しでしかないと思うのに、年越しそばを食べて、除夜の鐘を聞いたり行く年来る年なんていう番組を観終わったら、とにかくめでたくなるのです。家族でもいきなりあらたまった顔をして、「あけましておめでとう」なんて言い合ったりするわけですからね。1月の半ばを過ぎてから読むからどうだって言うのよ。ほんとよ。なんです、「めでたいめでたい」と言うのはけっして悪くはないですよね。実際んとこ、暗ぁ〜い顔で「はぁ〜〜〜っ」なんてため息つくぐらいなら、とにかくなんだか「めでたいめでたい」を連発するってのはいいもんかもしれません。いやほんとそうですよ。いやじつはですね、我が家はここ数年、年末から年始にかけて家族3人で大阪は天満の天神さんに初詣に行って、そこでカウントダウン年越しをしているんですが、今年はそれを断念しました。初詣は、この文章をかきおわってから、そう、1月1日の昼前ぐらいに行こうかなって思ってます。と言うのもですね、昨年はまたなんというか、関西でも12月31日になったとたんに、これでもかっていうぐらいに寒くなり、雪は降るやら高速道路は通行止めになるやら、「いきなり冬ですか!」ってな感じになっちゃってさ、もう大変でさ、深夜に初詣に行って、風邪をひいちゃったらなにしてるこっちゃわかんいじゃないですか、それでね、深夜に行くのは中止して、昼前に行くことにしたんです。いやぁ〜、でもね、ほんの数日前までは、妙なぐらいあたたかかったのにね、ほんとほんと・・・。そういや東京の方はあれでしょ、12月30日ぐらいからえらい雪やったんでしょ。大変やったですよね。で、まぁなんですわ。我が家では、その、寒くなるのとほぼ時を同じくして、それまで使ってた石油ストーブがいきなりの故障ですわ。寿命だったんですかねぇ・・・、いきなりさ、ファンの所から臭くて黒い煙がモクモクですわ。あわてましたよ、そりゃぁ。だって、年の瀬も押し詰まってから、火事で焼け出されるなんて嫌ですもんね。でね、壊れた石油ストーブはベランダに出して、もうね、代わりのストーブをあわてて買いにいきましたです。そうそう、そういやさ、ここ十数年ほど前からかな、年末は31日まで休み無しですってな店が増えてきたのわ。それまでの年なら、年末にモノが壊れたって、年あけて、最低でも三が日は過ぎやんとどこのお店も休みでさ、今回の我が家みたいに年末に暖房機器が壊れたりしたら、寒くて暗ぁ〜いお正月を過ごすことになってたと思うのよ。いや、それこそ「はぁ〜〜〜っ」ってため息つきながらさ。でもでも今年は大丈夫。ちゃんとお店はやってました。でね、今回買ってきたのは電気ストーブです。ハロゲンなんだってさ。スリムタイプってんですか、まっすぐなヤツでね、首振りですわ。マイナスイオンが出るんだとさ。えぇんかい、そんな、なんでもかんでもマイナスイオンなんてうたっても、って思ったんですけどね、まぁ、値段も手頃だしね、これを買ったんです。最近はさ、電気ストーブも、色々あるのよね。我が家で買ったハロゲンタイプってのや、遠赤外線ですか、そんなヤツ。手と足を赤外線写真で撮ったような写真っぽいやつがついていてね、身体が芯からポッカポカになるそうです。そりゃあ芯からポッカポカにはちょっと憧れたんだけとさ、でも、手頃価格&大きさのそれはなかったんですよ。だからね、ハロゲンですわ。安かったんですよ。7980円。ナナキュッパってんですか、せこい価格の付け方だなって思ったんですがね、もぁこんなもんでしょう。もともとは、今回壊れたのと同じ石油ストーブを買いに行ったんですよ。でもね、お店で石油ストーブと電気ストーブとガスストーブを見比べながら思ったんですよ。まず、ガスストーブはダメだなって、一番最初に除外です。なぜなら、ストーブを設置したい場所から、ガスのソケットまでが遠すぎて、まんがいちにもガスホースをひっかけたりしたら、危ないやないですか。だからね、これは除外。で、石油ストーブです。石油だって、まだ10リットルほど残っているしね、それを無駄にするのはもったいないやないですか。でもね、ここで考えたわけです。今買ってある10リットルの石油で、この冬を乗り切れるかどうか。いやもちろん、そんなのは考えるまでもなく無理ですよね。ってことは、この冬の間には、最低でも都合10回以上は買い足さねばならんわけですよ。これで我が家が一戸建てで、家のすぐ前がガソリンスタンドだってのなら、まぁいいかもしんない。たかだか10回程度ならね・・・。でも、我が家はマンションの9階なんです。これはえらいですよ。いや、もちろんエレベーターはありますよ。でもね、うちの部屋ってば、エレベーターホールから一番遠いトコにあるんですよ。いや、買うのに苦痛は無いとしましょう。でも、今度は置き場所です。これまでもそうやったんですけどね、石油は、ベランダに置いているんです。部屋に置いとくとさ、なんか、臭いが嫌じゃない。で、ベランダですよ。しゃあないよね、それはさ。でもでもでも、冬は寒風吹きすさぶマンション9階のベランダですよ。しかも、ストーブの中の灯油が切れるのって、決まって寒い日の夜。昼間ならね、冬とはいへすこしは暖かい日差しがあるかもしんないんだけどね、昼間には切れないのね。たいてい夜。で、暗くて寒いベランダへと赴き、ポリ容器から石油ストーブのタンクに灯油を入れるわけです。今も書いたように、暗い夜です。これまでにも何度か石油ストーブのタンクから溢れさせたコトがあるんですよ。だって、見えないんだもん。石油ストーブのタンクについている小さな小さな点検窓程度ではさ。だからね、ついつい、「あぁ寒ぶ」なんて言って、手をこすり合わせているうちに、あらあらあらって感じで溢れるんです。臭っさいんですよ、石油。手についたら、石鹸で洗ったぐらいでは、簡単には洗い流せないんです。臭いも、そして、その、独特のヌメリも・・・。おまけにその石油がこぼれたベランダも、いつまでもくさい上に、なんせ油系ですからね、その上をうっかり踏んでしまうとヌルリと滑っちゃうわけです。そりゃあさ、タンクから完全に石油が無くなる前に、昼間にちょっとづつ継ぎ足し継ぎ足しすればいいことかもしんないけど、それだと、ほぼ2日に1回はタンクに石油を入れることになるやないですか。でも、土日ならともかく、平日の昼間は仕事ですからね。石油を入れる為に家には帰れませんよ、いやほんと。あぁいやいや。そんなこんなで、毎年冬になると、この、石油地獄に悩まされていたわけなんですわ。なので今回は電気ストーブ。これはいいですよ。なんと言っても臭いはしないし、季節が過ぎた時に片づけるのも簡単そうだしね。これで我が家も暖ったか家族でございます。で、おそまつ。

女殺油地獄


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