音楽と生命・第７回
第三勢力：溝口［日本沈没］幸生
そうですねぇ．初めてのライブは８４年でしたか．．．確か神戸は王子動物園の裏手に有る公会堂でのステージでした．この時はビリー・ジョエルなんかをやりましたねぇ．かなり緊張するんじゃないかと思っていたんですが，不思議と落ち着いて演奏出来たんで意外でした．もっとも，タイコもバンドも始めてすぐの演奏でしたから，音の方はかなり酷かったと思います．もし，この時の録音が残っていたら，あまりの酷い出来なんで全てを放り出して出家したくなるんじゃないでしょうか．．．ここではストーンズとかビートルズなんかもレパートリーに加えてやっていました．メンバーはギターとヴォーカル，ギター，ベース，んでワタシがドラムでした．ライブの方は結婚前の天羽夫妻に一度見てもらった事も有りましたね．この時はワタシ思いっきりタイコ間違えてたのをしっかり見られまして，とても恥ずかしかったです．
ここのバンドの雰囲気はまぁ悪くは無かったですけど，ベースの奴がドラッグ関係をやってまして，ホンマ往生しまっせぇって奴でした．そいつとこに遊びに行くと，気付けに使用されるシンナーみたいな匂いのするボルトってのが有るんですが，そいつ「俺はこれが好きなんや」なんて言いながら，このボルトを鼻に突っ込んで，トリップしたりしてましたね．いやホンマあれを鼻に突っ込むと，ばったりと倒れて暫く動かないんですわ．関電いや勘弁してくれよなんて思いましたです．
そんなんでこいつ普段は接骨医やってたんだから，奴に当たった患者さんは大丈夫なんかなぁって思っていました．時々大麻なんかも吸っていましたし，ょっとヤバイ奴でしたが真面目に更正したんかなぁ．．．麻薬所持とかで逮捕されてなけりゃいいんですが．
え？お前はどうだったんだって？いえいえ．ワタシは自称真面目で上品な育ちなもんで，絶対やりませんでしたよ．そもそもそういうのは嫌いですしね．
その後，会社を辞めるのと同時に，ここのバンドを目出度くクビになって，九州に帰っていました．こちらでは女性ヴォーカルをフューチャーした，ポップスからフュージョン系のバンドをやっていました．これはまぁ，ライブもせずに自然消滅みたいな形になりましたです．ちょっと勿体無かったですねぇ．
それから色々と紆余曲折がありまして，親父のコネで関西に舞い戻って来たんですが，最初はバンドはやらなかったですね．丁度人外協に入りたてでしたし，そっちの方が面白くって，しょっちゅう遊んで貰っていましたから．当時は色々と楽しかったですよ．
この遊びもボチボチ落ち着いて来た頃，尼崎に有るヤマハのドラムスクールに通い始めたんです．中高生に混じってレッスンを受けていました．グループレッスンでワタシ以外は中高生ってのは，ちょっと恥ずかしかったです（笑）．この辺は以前にもお話したかも知れませんが，ほら，ワタシらの世代とかだと，ロック系って不良のイメージって有るじゃないですか．ガキの頃からバンドなんてとんでもないと言われてたのを見聞きしていたから，スクールで中学生の男子の新入生に母親が付いて来て，「先生，よろしくお願いいたします．〇〇ちゃん，ちゃんと先生の言う事聞いて練習するのよ」なんて言っているのを目撃すると，う〜〜〜んなんて思いましたけど，暫く通っていると結構見かけた光景だったんで，随分と時代も変わったんだなぁなんて思いました．このスクールには２年ほど通いましたね．年齢層が若いせいか，レッスン曲は当時流行っていたプリプリ（プリンセスプリンセス）やブルーハーツなんかの若者向きの曲が多くて，ちょっと閉口しましたけど．
などと言っている間にバンド練習に行かなければならなくなったんで，ちょっと中座して行ってきますね．．．．
ふぅ．やっと帰ってきました．練習の割にはいやに遅かったじゃないかって？いやぁ調子に乗り過ぎて朝までコースで，そのまま仕事してたんで．．．あ，やっぱりってな顔していますね．最後まで居た飲み屋さんで，明け方にゲイの方々と遭遇してお話させてもらったりと（ゲイの方から伺ったんですが，その手の趣味じゃない人の事はノンケって言うんですってね．初めて知りました）興味深かったですが，流石に疲れましたです．
えっと，どこまでお話しましたっけ？そうそうスクール時代のお話でしたね．スクール通いと並行して，待望のバンド活動も始まりまして，今度はブルース系のバンドでした．ギター×２，ベース，鍵盤，そしてタイコと５人編成で，その後は鍵盤が抜けてヴォーカルを入れてやってましたが，メンバーは大幅に変わっていましたです．ここでは色々な経験をさせて貰いましたね．定期的にライブハウスでライブやり始めたのもこの頃からですし．インディーズのオムニバスＣＤに２曲参加してレコーディングしたりもしました．ここは割に長くやらせてもらったんですが，こちらが仕事が忙しくなってバンド優先で動けなくなったもんで円満脱退して，現在はあちこちと顔を突っ込んではセッションだバンドだと，ロック系からジャズ系まで，まぁ色々と手広くやらせてもらっています．
え？そんなのはどうでもええから，今までのバンド経験での困った話や面白い話を話してくれってですか．．．う〜ん．実はワタシはここの第三勢力の皆様方と違って，全然面白くない奴でして．．．
そうですねぇ困った話ではですね，以前バンドのメンバー募集をした所，バイオリンを弾く方が応募されて来て，まぁ普通はオーディションを兼ねて一緒にスタジオ入ってセッションするんですが，まず驚いたのがオーデションに彼女を連れて来て，スタジオに入る前からラブラブ状態で乳繰り合ってるんですよ．え，もしかして困ったチャンかって？いやそうでしょうそうでしょう？普通まず考えられない事ですね．今なら馬鹿カップルって言ってやる所ですが．
まぁその辺は見なかった事にして，スタジオに入って，最初は様子見でブルースを適当にやろうと言う事で，ソロを３回ずつ回して終わろうと打ち合わせしてやり始めたんですが，このバイオリンの方，演奏中周りを全然見ないんですわ．ほいでソロ６回過ぎても７回過ぎても全然終わってくれなかったんですよね．ラブラブ状態の彼女にカッコええ所を見せたかったんでしょうかねぇ．．．スタジオに登場の時もスーツに下駄履きだったので，もしかしたらちょっと危ない人かもしれないと思ってたし，どうしようと思いましたね．そんなこんなでいい加減疲れて来たけど，面白いからとことん付き合ってやろうと続けていたら，このバイオリニスト，どんどんと周りが引いてしまうパフォーマンスの挙げ句に，エキサイトして弦を切ってしまいよったんですわ．呆れて見ていたメンバー全員，「だめだこりゃ」といかりや長助状態で，早々にお引き取り願いました．
この人，触れ込みだけは凄かったんですよ．曰く，あのキングクリムゾンのオーデションを受けたとか話してたり（ホンマかどうかは判りませんが）．クリムゾンのオーデションでも弦を切ったんでしょうかね ．．．．まぁ，一生弦切っとけって思いますな．
ん〜っと．そう言えばライブの時に配ったりする，バンド紹介のパンフなんかでも困った事有りましたねぇ．ある日の事，ライブ前の練習が終わった後のミーティングで，今度のライブのバンド紹介文原案が出来たから見てくれって言われて，どれどれどんなん書いたんかなぁって見てみたんです．そこに書いて有った文章が，でかでかと太いマジックで，「俺達の熱いサウンドを聴いてくれ！」．．．頭がクラクラしましたね．この時のメンツは３０過ぎたおっさんのバンドで，しかもちょっとオシャレなフュージョン系のコピーやってるのに，俺達の熱いサウンドもないでしょうにねぇ．今時こんなん書いてたら笑われるだけですから．ワタシはこんな頭悪そうな紹介文は嫌だなぁと言って，速攻でボツにしました．
他の困った話では，一度参加したバンドのギター奏者の方も面白い方でしたね．ライブの出番が来て，よっしゃあと思ってステージに上がったら，ギターさんだけ出て来ない．慌てて楽屋に見に行くと，まだ時間が有るやんか（って，めちゃくちゃ押してたんでそんな余裕はなかった）と言いながら，楽屋の鏡に映る自分の姿にうっとりしてたんで，思わず目が点になりました．この人かなりナルシスト入っているなぁと思ったんですが，何とかなだめすかしてやっと出て来たと思ったら，本番ではどうしようもないギターを弾いてくれまして，ライブ終わった後も全く反省の言葉も無かったんで，この時は怒りのあまりにワタシは生命いや猪木になって，こいつホンマにコブラツイストでも掛けたろうかと思ったものです．
それはさておき，今まで色々な演奏者の方と一緒にやらせて頂きましたが，殆どが楽しい人達でしたけども，そうじゃない困った人も幾人かいらっしゃいましたね．傾向としてはやたらとプライドが高い人が困った人になる確率が多い様です．自我が肥大しているから，あまり人の言う事を聞かないし，客観的に自分を見れないから，演奏は上手いけれども何だかなぁって感じたりとか．んで，最後にはメタメタになって一人ぼっちになってたり．
あ，気が付けば俺の周りにも誰もいないぞ．．．（自爆）
