航空宇宙軍史の機動爆雷を考えるとき、そのプラットホームたる宇宙船の能力や構造は無視出来ない要素である。航空宇宙軍史の宇宙船は、核融合推進を採用している。しかし、核融合反応と一口に言っても幾つもの種類がある。従って、核融合反応について考察し無い限り、宇宙船の性能や構造は理解出来ない。なぜなら宇宙船の能力はプラズマの噴射速度に、構造は核融合反応で生じる中性子に影響されるからである。
宇宙船の推進機関に使用されると考えられる燃料は、重水素(以下Dと表記)、三重水素(以下Tと表記)、ヘリウム3(以下He3と表記)、起こり得る反応はD−T、D−D、D−He3の三つである。
ここで話が分かりやすいように、次ぎのようなキャスティングをする。
D : 本編の主人公、悩める美少年 T : 本編のヒロイン、薄幸の美少女 He3 : 本編の悪役、Dを我が物にしようとする性悪女 N : 愛の結晶中性子、だがその出生ゆえに誰も彼を止められない
人の世の習いとして、美少年と美少女は互いに引かれ合い、結ばれようとする物である。むろんシャイな二人のこと、そのままでは結ばれることは無い。燃えるような愛の高温と、互いを意識する強い圧力の下で結ばれ、核融合の華と散るのである(科学的にはこれをローソン条件という。ただし高島弟とも中山美穂とも関係無い)。もともと美少女と美少年のカップルであるから、D−T反応は核融合の中でももっともローソン条件が低い。
そしてこの過程で二人の核融合エネルギーを受け取った愛の結晶、中性子(N)が産まれる。だが、こうして二人の愛を受け継いだ中性子は、自分の親の顔を知らない。自分が産まれたばかりに、両親は死んでしまったのではないか?
深い自責の念に狩られた中性子、電荷を持たない孤独な彼を引き留める事が出来るのはこの宇宙には重力しかない。だが、重力は電磁気力に比べ余りにも非力であった。孤独な中性子が良き理解者に恵まれ、同位体として更正する話は\(^_\) (/_^)/
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さて、かのごとくD−T反応は美しい愛を燃焼させるのだが、世間一般の経験則からも明らかなように美少女と言うのは希な存在である。この地球でもDはそこそこあるものの、Tになると途端に少なくなるのが実情である。ここに重水素達が禁断の愛に芽生える下地がある。
たまの休日、Dが町に出てみれば、周囲に居るのはDばかり。Tなんか滅多にいるもんじゃない。そんなDの心の隙間に悪魔の囁き。“美しければ性別なんか意味は無いわ”こうして禁断の領域に足を踏み入れたのがD−D反応である。どちらが攻めでどちらが受けなのかは、箱を開けなければわからない不確定な世界だが、ともかく若者達は危険な世界に陶酔してしまう。
D−D同士、最初は抵抗があるものの、退廃の香は心地よく(D−T反応ほどではないものの)D−D反応のローソン条件も十分に低かったのであった。愛は時に不可能を可能にする。この禁断の愛からも、愛の結晶たる中性子が産まれるのであ
った。自分の出生の秘密を知った中性子は、深く傷つき彼を引き留める物は・・・(以下略)。
他人の不幸は蜜の味。D−TやD−Dの幸せな関係を快く思わないのが性悪女のHe3。言葉巧みにDを自分の元へ連れ込んだのは、もちろん自らの僕とするためである。が、むろんTを愛するDが、
He3などになびく筈もない。これが証拠に、D−He3反応とはローソン条件が滅茶苦茶高い。そりゃあ誰だって性悪女と一緒になりたいとは思わない(と、私は実体験からも強く主張してしまうが)。
こういうHe3みたい奴は、時に何を考えるかわからない。私も沢山友人(全部He3だ)を呼ぶからお前も友人を沢山(むろん全員Dだ)呼べと言う。こうしておいてローソン条件さえ高めれば、Dだって陥落出来る筈・・・。だが
He3の思惑は外れた。Dの友人達それはDの恋人達であった。He3と結ばれるくらいなら・・・D達は高いローソン条件の下、救いの無い愛に燃え上がる。
この事でいたくプライドを傷つけられたHe3は次の計略を巡らせる。Dを1に対してHe3を9という比率でローソン条件を高めたのである。Dの周囲を見渡せば、いるのは
He3ばかり。運良くD−Dとなれるものもいるが、それは1%にも満たず、多くはD−He3反応で身を滅ぼすのであった。ここで中性子が産まれなかったのは、Dの精一杯の抗議の印とTへの愛の証でもあった。
てな訳で、D−He3反応も反応燃料の比率を変えることで、中性子の発生を大幅に抑えることができる。これは宇宙船の構造に随分と影響を与えますが、それは次回にでも。