天ちゃんの・徒然草子
地震・3

天羽[司法行政卿]孔明

 『地震』をテーマにして3回目になりますので、今回は、現実にあった地震の話ではなく、架空の地震の話をしようと思っています。

 架空の地震でもっとも印象に残っているのは、やはり小松左京・作「日本沈没」になるのでしょうか。ぼくは、小説よりも映画の方が最初でして、あれは何年生の頃だったかなぁ、上演されるやすぐに観に行ったのは憶えているんですが・・・。
 この映画は凄かったですよね、特に中盤から後半にかけての盛り上がりには、は
っきりいって圧倒されてしまいました。なかでも、地震の中を逃げ回る人々の描写が特に凄かったんじゃないでしょうか・・・。
 巨大な津波が町を覆い、高速道路が蛇のようにのたうつ。高層ビル街では、空からガラスが降ってくるんです。大阪城だったか皇居だったかは忘れてしまったんですが、その大きな木の扉に群がる人、人、人。はっきりいってぼくは、映画館のシ
ートで、ドキドキしながら食い入るように画面を見つめていました。
 たしかこの映画のキャッチコピーは「のたうつ日本列島」だったと思うのですが、これはもう、言い得て妙というよりも、まさにそのままっという感じでしたですよね。
 ぼくがこの「日本沈没」の小説版を読んだのは、この映画を観てから数年がたっていました。その時思ったんですが、これは映画も良かったけど、小説の方はもっと良かったって事です。まぁ、原作付きの映画で、小説よりも面白いってのは、まず無いといってもいいもんね。だから、その点はしかたがないかなって思います。「さようならジュピター」「復活の日」「戦国自衛隊」などなどなど・・・。そうそう、「日本沈没」は、この4月に光文社文庫から再び「上・下」刊にて出版されるらしいので、興味はあるけどまだ読んだ事がないって人は、ぜひ読んでみて下さい。後悔はさせませんよ。
 ところで、この「日本沈没」を見た(読んだ)地震評論家達は、「たしかにもの凄い描写力だけど、日本の高速道路は、あの程度の地震では壊れないように設計されているんです」って言ってたんですよ。ところが阪神大震災では、それが見事に壊れてしまったんですよね。まさに、事実は小説より奇なりってところでしょうか。

 もうひとつ印象に残っている架空の地震は、永井豪・作「バイオレンス・ジャック」の第一部。「関東地獄地震編」かな。これもやっぱり凄かった・・・。
 ストーリーは、まったくの平和な日常から始ります。
 主人公のいる小学校では、来るべき大地震の噂に話の花が咲いていますが、誰一人として本当にそんな物があるとは信じておらず、ただただ興味半分だけなんですね。
 そんなある日、まったくの突然にその地震はおこり、そして、阿鼻叫喚の地獄絵巻が巻き起こるんです。
 校舎の横に取り付けられた鉄製の非常階段を、地震に逃げ惑う多くの小学生が駆降りるシーンがあるのですが、その最中に、巨大な余震が襲うのです。するとその非常階段は、校舎から離れ、一匹の龍のようにのたうちます。当然、その非常階段に居る小学生達は、そこから振り落されてしまいます。で、見開きいっぱいのこのシーンに、「この時“非常階段”は、“非情階段”となった!」と大きく書かれているんです。
 このシーン、なんだかものすごくリアリティが感じられて、怖かったですよ。

 もうひとつだけ架空の地震の話をしましょう。
 いまから約16年程前の事です。この文章を読んでいる人は、たぶん誰も知らないと思うのですが、防災記念日のその日に、「もしも大阪で巨大地震が起ったら」という架空シュミレーション番組が、大阪・毎日放送のラジオ製作であったんです。
 これも迫力がありましたですよ・・・。
 朝一番の番組から「今日は昼の2時過ぎから、地震速報のニュースを流しますが、あくまでも架空の実況ドラマですので、信じないで下さい」という告知が何度も何度もあるんです。その当時毎日放送では、昼の2時になると、人気ラジオ番組「ガ
ァム・ガァム・リクエスト」が放送されていました。そして2時10分。番組の中でリクエスト曲がかかっている最中に、突然ニュース速報が入るんです。
「ただいま大阪では大きな地震がおこりました。震度や震源地、その他についてはただいま調べている所ですので、ラジオはこのままにしておいて下さい。また、ガスの元栓などはすみやかに切って下さい」と、そんな台詞だったと思います。
 この後、順次地震の被害情報が流されて、10分おきぐらいに「これは架空実況です」というのが流れるんです。それがなんだかとても新鮮でした。
 被害情報を流している所あたりから、こんどはシュミレーションドラマが始るのです。 梅田地下街の中では火災が発生し、煙は出口をもとめて迷路の様な地下街に蔓延し、そこは巨大な煙突のようになるシーンがありました。
 また別のドラマでは、東大阪にある中小企業の社長(笑福亭仁鶴)は、経営不信で不渡手形を発行してしまい、自殺する為に箕面の山に来ているのですが、そこで崩壊していく大阪の街を見るんです。
「死ぬためにこの箕面の山にきて、結果的に地震から逃れて生き延びてしまったんやなぁ、これは、神さんがわしにもうちょっと生きろっちゅうこっちゃねんやろなぁ、もう一回人生やり直すか・・・」っていう台詞がとても印象的でした。

 さて、まだまだ地震の恐怖は去っていませんが、これ以上『地震』の事ばかり書いているのもなんなので、次回は先送りになっていた『教師』をテーマに書いてみます。
 では、今回はここまで。またね・・・。

 映画「メトロポリス」のサントラ版LPを聞きながら・・・。

1995.04.09, AM,01:02,



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