つね日頃から完全に私物化しているこのコーナーだけど、人外協のメンバーも二百人ぐらいにふえてきて、ぼくのまったく知らない人も何人か読んでいる事になるんですよね。凄いことです。言ってみれば、公共の場と言える所で書いているわけです。もちろん、だからと言ってぼくの文章が突然公的な文章になるわけではありません。むしろこれからは、より私物化していこうと考えています。で、超私物化第一段として、今回は、自分の子供の事を書いてみる事にしました。
ぼくが自分の子供の事を書くのは、前々回の『名前』の所ですこし書いたのが最初です。でも、まともに書くのは、今回が初めてなんです。緊張しています。
うちの相棒の麻衣子さんは、それこそ生れる前の事から、リアルタイムでかなりな量を書いています。それで、つねづねぼくにもぜひ書いてほしいと言われていたのですが、なかなか書く勇気が湧かなかったんです。それというのも、親が自分の子供の事を書いたり、また、話しをしたりする事って、どんなに客観的さを装っても、結局はただの『親バカ』になっているみたいで嫌だったんです。いや、現実に『親バカ』になってしまうと思います。たぶんそれって、しかたがない事なんでし
ょう……。うん。で、そんな『親バカ』になっている自分を見るのが嫌だったので、これまで自分の子供の事に関しては、文章でふれなかったわけです。
さてそんなぼくが、なにゆえこうして自分の子供の事を書く気になったかと言うと、ひとつには、子供の『今』を書くのは、『今』しかないと気がついた事と、この文章を読んでいる人の中に、結婚をして子供のいる人や、これから子供が出来るという人がふえてきたので、そろそろ書いてもいい時期かと思ったわけです。
まぁなんです。だらだらと言いわけめいた事を書いてみましたが、ようはぼくも『親バカ』がしたくなったと言うわけです。はい。
この間も書きましたが、ぼくの子供の名前は『中川尊雄』通称『たかちゃん』です。平成二年の二月十九日(月曜日)生れで、今年四才。実は、今年の四月十一日より、毎日元気に幼稚園へと通っています。
『尊雄』が生れる前日。予定日から一週間を過ぎてもなかなか産れる気配がなく、すこし落込んでいた相棒をつれて、ちょっとでも元気が出ればと『落語会』へ行ったのは、一部では有名な話しだったりします。
行ったのは、いわゆる地域寄席というやつでして、会場も狭く、二十人も入れば大入りと言う感じの所でした。その日のトリが、桂雀三郎。ネタは、中島らも作、『明るい悩み相談室』という、知っている人は知っているという、とんでもない落語でした。
まぁ、その日たっぷりと笑ったのがよかったのかどうか、翌日に息子が産れたというわけです。
はじめて自分の子供を見た時、「この子、絶対に変な子だ!」って確信してしまったんです。なんていうか、普通生れたばかりの赤ちゃんて、もっとこう、「猿みたいな顔」だって思っていたんですよ。ところがうちの子は、おっちゃん顔で、おまけに頭が大きく、態度もでかそうだったんですよね。
『尊雄』という名前は、ぼくが考えました。一応、何冊かの『幸せになる名前の付け方』みたいな本を読み、幾つかピックアップして、相棒と、両方の親に見せて決めました。ぼくとしては、かなり気に入っている名前です。
ひょっとしたら名前負けになっているかもしれませんが、そこはまぁ、愛敬という事にしておいてください。
さて、初めて見た時の直感どうり、やはり『尊雄』は変な子に育ってしまいました。まぁ両親がぼくと相棒ですから、変な子に育つのも無理はないのかもしれません。
『尊雄』を見ていて一番変だと感じるのは、んんーっと、そうですね、やっぱり喋っている時でしょうか。同じ年頃の子供が家の近所に何人かいるのですが、そのメンバーで喋っているのを見ると、よりよくわかります。でも、尊雄の変さって、ぼくの文章力では的確に表現出来ないんです。困ったなぁ……。
最初にちゃんと喋ったのは、一才になったばかりの頃でした。
じっと蟻を見つめながら「あーりさん」と言ったのが最初だったと記憶しています。
ぼくも小さい時はそうだったらしいのですが、やたらと「なんでやの?」という言葉を使います。すっごく好奇心があるくせにやたらと臆病で、子供の見る番組より『タモリ倶楽部』や、『欽ちゃんの仮装大賞』とかが大好きで、『たかちゃんも仮装大賞に出たい』と言ったりします。
唯一子供番組で好きなのは『ひらけポンキッキ』 特に、車などがでてくるのが大好きみたいです。そうそう、スーファミで、ラリーをするのも好きみたいです。
えっと、えっと、あぁ、散文的になって来てしまった……。
『親バカ』するのは引き際が大切だと思うので、まだまだ書き足りない事はいっぱいありますが、『尊雄』の事を書くのは、ひとまずはここまでという事にしておきましょう。せっかく『親バカ』なる決心がついたので、続きはいずれまた書く事にします。
……っと、いつもならここで、来月のテーマは『***』と書いて終るところなんですが、今回は、もう少し話しが続きます。
じつは、来月から三ケ月間、このコーナーをお休みにしようと思うのです。ちょっと、真剣に小説なんぞを書いて見たくなったもんですから……。とりあえずこの『徒然草子』の次回掲載は、九月分という事になります。テーマはまだ決めていません。その間、夏の特別編は書きます。又、九月までに、ひょっとしたらなにか別の物を書いて、この『甲州画報』で発表するかもしれませんので、そちらの方も、楽しみにしていて下さい。
では、九月には、必ず帰ってくるので、忘れちゃやですよ。
それまで、さようなら……。
一噌幸弘・『東京ダルマガエル』を聞きながら・・・。
1994.04.17, PM,23:55,