天ちゃんの・徒然草子
ショート・ショート・1

天羽[司法行政卿]孔明

 先日、第32回日本SF大会・DAICON6に参加してきました。
 本大会の参加は、第27回・MIG−CON以来なので、じつに5年ぶりの参加になるわけです。しかも今回は、初めての子連参加だったので、あまりたくさんの企画は見れなかったけど、とても楽しい二日間でした。(人外協の合宿にも参加できたしね)
 それに今回は、長い間逢えなかった友人にも、実に十年ぶりぐらいで逢う事ができたんです。しかもその友人は、なななんと、『SFマガジン』から作家デビューしていたんですよ。いやはやどうも、うらやましいこってす。と言うわけで森岡くん。今回は一緒に酒が呑めなかったけど、君も『人外協』に入隊したんだから、いずれまた近い内に一緒に酒でも呑みましょう!
 実はぼくだって、近頃ではこんなエッセイもどきみたいな文章ばっかり書いていますが、本当言うと、SF作家志望だったんですよ。うんうん。
 で、まぁ、彼に触発されたというわけではないのですが、今回の大会企画のひとつ、『久美沙織の作文術』の部屋をのぞいてきました。(そういえば、まともに最初から最後まで参加した企画はこれだけだったような気がするなぁ……)
 この企画部屋では、あらかじめ原稿用紙一枚分の小説(長編小説の冒頭の一枚だけでもよい)を提出しておけば、久美沙織さんみずからが添削してくれるという、ありがたくもおいしい企画だったのです。で、この機を逃すまいと思ったぼくも、原稿を一枚提出しておいたのでした。
 小説の冒頭だけでもいいという事だったのですが、ぼくは、原稿用紙一枚ちょうどのショート・ショートを書いたのです。
 さて以下は、その、ぼくが書いたショート・ショートであります−。


『ヒツジのおんがえし』

 先日、大阪ミナミの心斎橋という繁華街を歩いていたら、一匹のヒツジが猟師の仕掛けたわなに足を挟まれて泣いていたのです。
 何人もの人がそのヒツジのそばを通って行くのですが、誰一人として、助けてやろうとする者はいませんでした。
 都会の人が冷たくなったというのは、本当の事だったようです。
 思わずぼくは駆寄って、そのわなをはずしてやりました。
「この御恩は必ず」そう言いながら
ヒツジは何度も頭を下げつつ去って行ったのです。
 それから三日後の朝。会社に行こうと玄関を出たぼくは、なんとそこで、猟師の仕掛けたわなに足を挟まれてしまったのです。
 −なぜこんな所にこんな物が……。
 と、その時、筋向いの家の角にある電信柱の陰から一匹のヒツジが飛び出してきて、ぼくの足を挟んでいるわなをはずしてくれたのです。よく見れば、あの時のヒツジでした。


 で、これを久美沙織さんが、次のように添削して下さったのです。


『ヒツジのおんがえし』

 先日、大阪ミナミの心斎橋という繁華街で、一匹のヒツジが猟師の仕掛けたわなに足を挟まれて泣いているのをみつけました。
 何人もの人がそばを通って行くのですが、誰一人として、助けてやろうとしません。都会の人が冷たくなったというのは、本当の事なんだなと感じました。
 ぼくは駆け寄って、わなをはずしてやりました。
「この御恩は必ず」ヒツジは何度も頭を下げながら去って行ったのです。
 三日後の朝。会社に行こうと玄関を出たとたんに、ふくらはぎのあたりにとてつもない痛みをおぼえました。うめきながらなんとか目をこじあけると、でっかいトラバサミが足をはさんでいるのです。
 −な、なぜ……。
 その時、筋向いの家の角の電信柱の陰からなにものかが飛び出してきて、わなをはずしてくれました。それは、よく見れば、まごうことなくあの時のヒツジだったのです。


 いかがでしたか? やっぱり、あきらかによくなってますよね。とくにラストのあたりが……。
 もともとこの話しは、原稿用紙三枚ぐらいの話しだったんだけど、なんとか一枚に縮めて、これ以上は縮めようがないと思っていたんですよ。ところが、この添削版の方はけっこう縮まってしまったんですよね、これが……。もっとも、追加している所もけっこうたくさんあるみたいなので、最終的には一行多くなっているみたいです。うん。
 ともかく、これを機会に、またぼくも小説の方も書いて行こうと決心したわけです。そこでさっそく、次回のテーマは異例の『ショート・ショート−2』ということにします。ではまた・・・。

 遊星ミンツ・「地転の休日」を聞きながら・・・。

1993.09.08, AM,00:30,



back index next