-2001 青年人外協力隊
はい、おまたせしました。今回は『釣り』の話しです。ええ、ええ、もちろん魚釣りの話しですよ、それ以外の物ではありません。
さて、誰だって小さな頃に一度や二度ぐらいは釣りに行った事があると思います。
ぼくの場合は、小学校の三年生の時、親戚の叔父さんに、家のちかくにあった釣り掘りへと鮒釣りに連れて行ってもらったのが最初でした。
この時はろくすっぽ釣れなかったのですが、逆にそれがバネになり、釣り掘りに通うようになったのですから、世の中ってわからんもんです(って、そんな大げさなもんじゃないか・・・)。
幸いと言うか、なんと言うか、以前はぼくの家の近くにも沢山の釣り掘りがあったのです。今ではなにやら開発がすすんで、釣り掘りは無くなり、家の近くの田や畑もめっきり少なくなり、そのぶん住宅や工場なんかがふえてきて、ちょっぴり悲しい思いをしています。もちろん今でも、家から自転車で五分も走れば大和川(ちょっと前までは汚い川として有名でしたが、最近はずいぶんましになったんだよ。それに、ぼくが子供の頃は、泳げる程度にはきれいだったんです)もあるし、同じくらいの距離の所に信貴生駒連山があり、そこにはまだいくつかの野池が残っていたりするんだけどね・・・。
うーん、こうしてあらためて書いてみると、ぼくの住んでいる所って、けっこう田舎だったのね・・・。(そうそう、その通り。・麻衣子談)
釣り掘りに通い始めてわかった事なんですが、ここって、あまりおもしろくないんですよ。贅沢なようですが、やたらと釣れすぎるんですよね。初めての時にほとんど釣れなかったのが不思議なくらいです・・・。で、いきおいぼくの釣りは、釣り掘りから野池へ、そして、川釣りへと移行していったのです。
中学の2年頃からは、海釣りにもよく行くようになりました。地磯釣りから船釣り、堤防釣りやら浜の投げ釣り。もちろん、渡し船にのっての沖釣りなんてのもしました。でも、やっぱりぼくは川釣り、とりわけ渓流釣りと呼ばれているやつの方がおもしろくって、だんだん海へは行かなくなり、山へ山へと行くようになりました。
釣りを知らない人のために書いておくと、渓流釣りってのは、文字通り山奥に流れている川で、「岩魚」や「山女魚」なんて言う魚を釣る、釣りです。
高校の頃からだったかな、ぼくがこの渓流釣りにこりだしたのは・・・。
シーズンともなると、毎月二・三冊発行される釣り雑誌をみんな買い込んで、絶好のポイントや、釣りの仕掛けなどを一生懸命勉強したものです。両親は、「それぐらい学校の勉強もしたらいいのに・・・」なんて言ってましたが、本音は、あきらめていたと思います。
渓流の魚って、基本的には活餌で釣るものなんですが、毛針りをつかってもけっこう釣れるんですよね。そこで、始めは市販の毛針りを使って楽しんでいたのですが、だんだんなれてくると、自分で毛針りを作りたくなってくるんです。
最初に作った毛針りは、苦労したわりには見た目も悪く、一匹の魚もつれなくって、大変悲しい思いをしました。でも、何度か試行錯誤を繰返しながらも、ついに自分で作った毛針りで魚が釣れた時は、なかなか感動もんでしたよ。
あと、そうそう、渓流釣りをするようになって、登山の楽しみも憶えて行きました。
シュラフをかついで沢の源流に向って釣り歩き、お腹がすいたら釣ったばかりの魚を焼いて食べ、夜になったら適当にそこらで寝たりしてね。
二日ぐらい学校を休んで、ひとり用のテントを持って沢歩きをした事も何度かあります。こんな時は、夜中にそのテントの中で、ランプの灯りだけをたよりに、ちょいと“おどろ”の古典を読むのが大好きでした。「雨月物語」や「今昔物語」、それに「聊斎志異」や「江戸怪談集」なんかを、かならず二・三冊はザックの中にいれてましたっけ・・・。最近になって知ったんですが、SF作家の夢枕獏さんも、山の中で「今昔物語」みたいな本を読むのが好きなんだそうです。こんな事をしているのは、自分だけではなかったんですね・・・。
山の中でね、風の音や、葉ずれの音、沢を流れる水の音、それに、なんだかわからないような虫の鳴き声、どこからか、遠く近くに聞えてくる鳥や獣の声なんかをBGMにしながらテントの中に一人でいると、この世の中で生きている人間は、自分一人だけ、みたいな気分になれるんですよ。
もうずいぶん長いこと、本格的な釣りにも、山歩きにも行っていません。もちろん、どちらも嫌いになったわけでもなく、むしろ、機会があるならすぐにでも出かけたい所なんですが、現実にはまだ無理なようです。でも、今でも時々は、山の上の方にある神社仏閣を見にいくために、ほんのすこし山歩きの気分を味わったりしてるんですよ。
まぁ、もうすこしうちのガジラが大きくなったら、二人で渓流釣りにいくのを楽しみにしている今日このごろです・・・。(私はどうするの?!・麻衣子談)
というわけで、今回はここまで。次回のテーマは、『音楽』です。ではまた・・・。
CD版、「エノケンの大全集」を聞きながら・・・。
1993.07.08, AM,03:52,