天ちゃんの・徒然草子
本・1

天羽[司法行政卿]孔明

 しかしなんですなぁ、今年はまだ年が明けて一ケ月しかたっていないと言うのに、世間ではなにやら物騒な事件が多いみたいですね。
 北海道や東北地方で大きな地震があったり、京都では十数年ぶりの大雪が降ったり、つい先日は、奈良の橿原神宮で重要文化財が火事で焼け落ちてしまったりしました。また、ぼくの大好きな著名人も今年に入って多数お亡くなりになったりして、ぼくとしてもたいへん悲しい思いをしております。とりわけ落語家の桂春蝶や、ジャズトランペッターのディジー・ガレスピー。それに、大女優のオードリー・ヘップバーン。さらには、名作曲家・服部良一。などなど……。
 ともかく、お亡くなりになられた方々には慎んでご冥福をお祈りしたいと思います。

 で、さて、ここからが本題なんですが、実はぼく、今回この徒然草子のテーマに『本』を選んでしまった事を、大変後悔しているのです。と言うのも、このぼくが『本』の事なんぞを書こうと思ったら、12回バッチリつかっても、絶対に書ききれない事に気がついたためです(気がつくのが遅いかもわかんないけどさ……[そうだそうだ! 麻衣子])。が、まぁ、始めてしまったものはしかたがないので、ともかく書き始める事にしましょう。

 履歴書や、自己紹介の文章の趣味の欄に『読書』と書かなくなってもう随分になります。これはもちろんけっして本を読まなくなったためではなく、むしろ本を読む……、いや、活字を目で追いかける事が生活の一部になってしまったためです。
 ほら、『活字中毒者』なんて言葉があるでしょう、ぼくの場合もまさにそれで、(いや、ひょとしたらそれ以上かもしんないけど……)常に何冊かの本を持っていないとすごく不安になるのです。たとえそれが、絶対に本なんかが読めない様な状況のなかであっても、ポケットの中か、手元の鞄の中に必ずといっていいほど2〜3冊の本がはいっているのです。
 この文章を読んでおられる方の中には、ぼくと同じ様な『活字中毒』の方がたくさんおられると思うので、そんなあなたになら、きっとこの気持がわかってもらえると思うのですがねぇ……。
 で、この『活字中毒』。なにより困るのが、手持ちの本を早く読みすぎたりして予想以上に時間があまってしまった時なんです。たとえばそれが電車の中だったりしたら、吊り広告をひっしになって読んだりします。(ぼくは、目的の駅に着くまで電車の中を吊り広告を見ながら3両ほど移動した事があります……)
 また、自動車の運転中なんかには、無意識の内に広告看板や道路標識なんかを読んでいたりします。(これまた以前仕事中に、目の前を走っているトラックの後ろに書いてある文章を読みたさに、高速道路の出口をふたつほど行過ぎてしまった事がありました……)ちなみにぼくの今の仕事は、通称《流しの漫談家》なので、得意先から得意先へとほぼ一日中車に乗ってあちこち走りまわっているので、この様な事は日常茶飯事なのです。(ぼくの仕事の内容については、おもしろいので、そのうちこの徒然草子で書いてみようかと考えています。)さらに、最近は郊外型の、立派な駐車場を供えた大型書店が随分と増えたため、そういった本屋を見つけるたびに仕事をさぼってでもその本屋に入りたいと言う衝動にかられているのです。
 そうそう、一昨年は、思う所があって、いったい何冊ぐらいの本を一年間に読み切るのかと、数を数えてみたのです。そしたら、小説だけで百五十冊ほど読んだ事がわかりました。もちろんここには、月刊雑誌やコミックスなんかは加えていないので、それらを加えたら、もっと数が増えてしまうわけです。参考までに書いておきますと、うちの相方の麻衣子さんは、なんと去年一年間で二百三十冊の本を読んでいたようです。しかも悲しい事にうちの夫婦は、若干読書傾向が違うため、ダブリになっている本があまり無いのです……。こうなると、夫婦そろっての一年間に本屋に支払う金額もばかにはなりません。なにせ二人が読んだ本以外にも、“つん読”になっている本や、月刊雑誌やコミックス、それに、学術書や写真集、さらには美術書なんかも多数買っているからです。
 最近では知恵を働かせ、小説のハードカバーなんかは出来るだけ図書館で借りてきて読むようにし、なんとか本代を節約するように努力しています。
 ちなみにぼくが最近買った本の中で印象に残った本は、昨年の連載の最後にも書いた『鳥山石燕・画図百鬼夜行』(この本が高かったんだ、また……)と、伊沢元彦著『銀魔伝・本能寺の巻』の二冊です。もし機会がありましたなら、『画図百鬼夜行』は別としても、『銀魔伝』の方はおすすめです。また、昨年読んだ本の中では、黒崎緑著『しゃべくり探偵』がとてもよかったですよ。(この連載では、あえてSF小説の名前を上げるのを控えてみました。でも、深い理由はありません。実際には、読んでいる本の七十パーセントはSFなので、いずれ“SF”をテーマにして書く時にまとめて書いて見ようかと思っています。)

 ぐだぐだと書いていたら、もうこんな量になってしまいました。本当は、本を読むようになったきっかけとか、古本屋の事なんかも書きたかったのですが、それはまた次の機会に回すとしましょう。
 で、次回なんですが、『旅』をテーマにひとつ書いてみようと思っています。おたのしみに……。
 さて、明日からは東郷隆の『打てや叩けや・源平物怪合戦』を読むとしよう……。

 《ブギの女王・笠置シズ子》のCDを聞きながら……。

1993.02.08 AM 02:12



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