前回の最後に、「次回は海にすむ妖怪あれこれを書くよー」なんて書いたもんだから、ここ一ケ月ほど、さて、海にはどんな妖怪がいたっけか? って、考えとったんです。と、なんですね、海には、楽しい妖怪や、すてきな妖怪ってあまりいないんですよ。うん。どちらかと言うと、おどろおどろしくって、ぶきみで、陰惨な妖怪が多いんです。なぜなんでしょうかね? 反対に、山に住む妖怪は、けっこうおもしろ味のある妖怪が沢山いるというのに……。
まっ、なんです。生活環境において、山より海の方が死亡事故が多かったせいかもしれませんね……。
それはさておき今回は、約束どうり海の妖怪のお話しです。
まず最初に登場するのは、『舟幽霊』。
この妖怪は、あまりにも有名なので、ほとんどの人が知っているのではないでしょうか?(知らない人には、ごめんなさい)。ちょいと簡単に説明しておきましょう。
舟にのって海の上で漁かなんかしていると、それまでの晴空が一転にわかにかき曇ったかと思うと、風もないのにざわざわと海面がさわぎだす。と、その時。何十本もの腕が海面にあらわれて、どこからともなくぶきみな声が聞えてくるのです。
「ひしゃくをくれぇーーーーーっ」、「ひしゃくをくれぇーーーーーーーっ」ってね。
この時、ちゃんとしたひしゃくを手渡すと、それでもって海水を舟の中に汲み入れられ、そのまま舟を沈ませてしまうんだそうです。こわいですねぇー。
そこで漁師たちは、舟に乗るときに、かならず底の抜けたひしゃくを一本のせるようにしているのだそうです。で、不幸にもこの『舟幽霊』に出会ってしまったら、この、底の抜けたひしゃくを手渡すといいます。こうすることによって、舟の中に海水を汲み入れられることなく、無事に解放されるんだって。いやほんと、こわいこわい……。
実はこの妖怪、日本中の海に出没しているらしく、この妖怪を知らない漁師はもぐりだっていう、もっぱらの評判なんだそうです(って、これはちょっとおおげさかな?)。
もともとこの妖怪は、中国の鬼哭灘という所で悪さをしとったのが、いつの頃からか日本でも現れるようになったらしいのです。ちなみに中国時代の事は、『奇異雑譚集』という本に詳しくでていて、「その姿、禿頭で首がなく、片手片足にして背の低い化け物なり。およそ百体余りにて群がり現れて、通りかかりし舟を転覆させるといふ」なんて書いてあります。ぼくとしては、「禿頭で首が無い」というのがいまいちよくわからないのですが、いずれにしても、こんな物が百体も群がってきたら、舟が沈められるとか言う以前の問題だという気がします。逢いたくない妖怪のひとつですな。
ところで余談になるのですが(まぁ、ここのコーナーはすべて余談だらけという説もあるけど……)、我が家のガジラ君の最近お気に入りの遊びは、風呂場に砂遊び用の小さなひしゃくを持ち込んで、湯舟に浮かべた洗面器の中にお湯を汲み入れ、洗面器が沈むのを見てよろこぶというものです。別に教えたわけではないのに、いったいなんなんですか続きねぇ、やれやれ……。
今回は、もう一匹紹介しましょう。その名も『海坊主』です。
この妖怪も、その名前だけは有名なんですが、そのくせその正体っていうか、その姿形を知っている人は少ないんではないでしょうか。
一般に(どのへんまでが一般なのかはこのさいおいておくとして)『海坊主』といえば、黒くてでっかい妖怪という事になっています。どのぐらい大きいかと言うと、小さな小山ほどもあると言われています。しかも全身が毛むくじゃらでヌルヌルなんだそうです。ただし地方によっては、体長十センチたらずの小人だったという所もあります。
名前も地方によってまちまちで、いわく『海小僧』『海法師』『海入道』などなど、ほかにもたくさんの呼び名があります。又、この『海坊主』の仲間もたくさんいて、『海難法師』や『海座頭』、『磯入道』などがそれです。
どんなことをするのかというと、近くを通りかかった船を襲い、沈めてしまうんだって。悪い奴らです。
なんでもこれらの妖怪は、海で亡くなった人々の、苦しく、悔しかった気持がこりかたまって出現したといいます。げに恐ろしきは、恨みなりけりってとこでしょうか。
というところで今回はここまで。次回は、もう一度海に住む妖怪の中から、『人魚』について書いてみます。では、また……。
今回は滋賀県より、ケーキの美味しい店を紹介しましょう。
場所は、JR膳所駅の、駅前竹下通りを入ってすぐ。店の名前は「ヤマダヤ」です。
一階がケーキ屋さんで、二階はそこのケーキが食べれる喫茶店になっています。
膳所高校の生徒もお気に入りのこの店に、ぜひ一度足を運んで下さい。