第八十三話

竹林孝浩

 あれは高校の修学旅行の時の話です。
 修学旅行の一泊目は某スキー場のホテルでした。冬場はスキー客向けのホテルとしてシーズンオフは修学旅行で稼ぐという、どっかのSF大会の会場みたいなホテルだったのです。
 まぁそれはどうでもいいことなのですが、その日は、私と友人Mと二人であるいたずらを計画していたのでした。
 まず、昼間に寄った神社で御札をこっそり仕入れました。ホテルの部屋に入るとちょうどいいことに壁に絵が飾ってありました。私は適当な口実で同部屋のメンバーを全員部屋の外に連れ出しました。このすきにMが絵の裏側に御札を貼り付ける手はずになっていたのでした。
 夜もふけてきた頃、話題を怪談の方に誘導しながら(っていうか勝手に皆が怪談をはじめたのだが)場が盛り上がってきたところで、、
 「よくホテルなんかで『出る』部屋ってあるじゃない。そういう部屋って目につかない所に御札とか貼ってあるんだよね。たとえばこういう絵の裏側とかにさ、、」などといいながら、絵をおもむろにめくります。
 当然そこにはMが貼り付けた御札がしっかり貼ってあるわけで、同室の奴等のパニックはそれはもう凄いものでした。
 しかも、朝になると皆が口をそろえて、金縛りになったとか白い人影を見ただのと夜の霊体験を言い出します。なんとなく、世の中の心霊現象がどういうものかよくわかった体験でした。
 ちなみに、このとき同室だった連中にはこのネタばらしはしていません。皆の感動的な「超常現象体験」をつまらないものにしたくないというのが理由の一つですが、もう一つの理由としては、翌朝落し物を拾う際に気づいた机の裏のもう一枚の御札が気になっているからです。



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