第七十七話

清水宏祐

 偶然の一致の話をもうひとつ。
 私が結婚する前の年ですから1994年の暮れの事。その頃勤めていた会社でもやはり忘年会というものがありまして、そのポスターには最初下の様な事が書かれていたんですが…。

   忘年会のお知らせ
  場  所:西宮市○○町○○ホールにて
  時  間:十二月○○日 ○○時より
  参加資格:社員およびその家族

 でまあ、私、その張り紙が貼られて暫くしてから上司に結婚するという報告をしたんですが、次の日ポスターの「参加資格」の「社員およびその家族」と書いてあるその後ろに細いマジックで『および婚約者』と書き加えられていました。
 これはつまり婚約者も出席させよ、という意味なんだなと解釈した私は、当時の婚約者(もちろん今の嫁さん)と一緒に忘年会に出席しました。
 忘年会は、社長挨拶、乾杯と滞りなく進んで行きます。その会社の忘年会は、毎年料理や酒もふんだんに出ますし、お楽しみ抽選会(参加者全員に景品が当たるのです)の景品が豪華な事で結構評判だったのですが、その年の抽選会はビンゴゲームで行なわれました。
 私のカードは4回目か5回目のコールで早くもリーチが掛かりました。リーチというのは、あとひとつ数字が揃えばビンゴになるという状態で、リーチになると舞台の前へ出なければなりません。
 まあ、早いリーチというのは麻雀も同じでなかなか上がれるものではありません。後から後から「リーチ」の声が掛かり、前の方へ出てくる人数が増えてきます。私のリーチからもう十数回のコールがされたと思う頃、後ろの方からおずおずと恥ずかしそうに婚約者(今の嫁さん)が前へ出てきました。
 司会者が、次の数字をコールしたとたん、舞台の前で二人の手が上がりました。
 「ビンゴ!!」
 そう、嫁さんと私は同時にビンゴしたんです。
 ちょっとした偶然の一致なんですかね。



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