第七十六話

清水宏祐

 もう15年以上前の事なんですけど、その頃勤めていました会社の慰安旅行か何かで飛行機に乗る機会があったんです。で、荷物が大きかったんで、機内持込みでなく預ける事にしたんですが、ついうっかりと荷物のポケットに銀行やクレジットのカードが入ったカードケースを入れたままにして預けちゃったんです。そのポケットというのは、ジッパーやなんかでちゃんと締るようになってないやつだったんで、御想像通りどこかへ落ちてしまったらしいんですね。で、キャッシュカードやらクレジットカードを全部作り直さなくちゃならなくなって、まあ、各社に連絡を取ったんですが、やっぱり暗証番号を変えた方がいいでしょうということで、変える事にしたんです。
 それまで使っていた暗証番号っていうのは自分の誕生日をひねくったもので、結構気にいってたんですが、新しい番号を考えなくっちゃならなくなってしまって、誕生日や電話番号はやばいっていうんで、何気なく頭に浮かんだ番号で全部のカードの暗証番号を統一したんですね。
 でまあ、その暗証番号をずっと使ってきたんですけど、実は、その暗証番号と同じ数字の年に、私結婚しまして、阪神淡路大震災が起きて、長女が生まれたんですけど、まあ、ちょっとした偶然の一致なんでしょうけどね。
 なんかこう不思議な気分になりますね。そういう事があると。
 今はまた、番号は全て変えてありますけどね。



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