今の家に引っ越すほんのちょっと前ですから、二〜三年程前のことかな。
九月か十月頃の事だったと思います。
風だけの台風が大阪に近づいてきた事があったんです。じつはここだけの話ですが、ぼくはこの大風とか雷が無茶苦茶好きで、その日の家のすぐ裏の田んぼへと出て、ビール片手に風見をしていたんですね。
こうべを垂れる稲穂が、風に巻かれながらざわめく様を見ながら呑むビールは実に最高で、ぼくの至福の時なのです。
で、2本目のビールを呑み始めた時でした。風下の方から、一枚の掛け蒲団が飛んできたのです。風上からじゃないんですよ。風下からです。そいつがその大風に煽られながら、風上へ風上へと飛んで行ったのです。