第四十八話

天羽孔明

 昨日、ぼくは仕事で三重県の伊賀地方に行き、そこでとんでもない集中豪雨に遭遇し、移動するのは危ないと判断して、すこし休憩していたため、家に帰ってきたのは0時をまわっていたのです…。
 さて、その雨の中で思い出した話。
 中学3年生の春のこと。当時ぼくは剣道部に所属していて、なんと副部長をしていたのです。で、対抗試合が近づいていたので、連日遅くまで練習をしていたんです。で、その日も6時頃まで練習をし、同じ方向に帰る部員と一緒に学校を出たのです。たしか、4名ぐらいが一緒だったはすです。
 学校から家へと帰る道は、一部田んぼの畔道を通らねばならないのです。雨が降り、外灯もほとんど無いような田んぼの畔道はとても暗いのですが、そこはそれ、通いなれた道ですから、わいわいと喋りながらまぁ帰っていたんですね。と、後輩の1人が「先輩。あれ、なんでしょう?」と、前方を指差したんです。見ると、畔道を挟んだ右の田んぼの中から、真っ黒い人影がゴボコボと出てきて、左の田んぼの方へと入って行ったんです。それが、1体ではなく、およ そ10体ぐらい…。大抵の怪異には驚かないぼくも、さすがにこの時は恐ろしく、すべての黒い人影が左の田んぼに消えた後も、全員がしばらくそこを動けませんでした。

「ゴボコボ、ゴボコボ、」



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