第三十九話

落合香月

 私の母方の叔母は、ずいぶんと強運というか、守護の強い人です。
 どれくらい強力に守護されているかというと、ひどい交通事故に遭ったけれど、ほとんど怪我をしなくて、家に帰ったら、家のお神酒徳利が割れていたというぐらいです。
 ある年の夏休みにこの叔母の家に遊びにいったとき、突如高熱を出して、そのまま大阪で半月近く入院。二学期になってもしばらく通学は無理だろうと言われたことがあります。ところが、夏休みの終わりになんとか大阪から帰ってくると急速に回復して、九月一日から無事に学校にいけたんです。
 ある占いの一種では十二年に一度、年回りの悪い時というのがあって、何をやってもうまくいかないし健康も損なう最悪の年というのがあり、その年はちょうど叔母がそういう年まわりだったそうです。
 聞けば、どうも彼女本人は特にどうと言ったこともなかったのに、彼女の周囲で、病人・怪我人が続出したそうです。
 どうやら、やってきた災いが叔母の強運で跳ね返されて、より運気の弱い周囲に肩代わりされていたような様子なのですが、お神酒徳利代わりにされた方はたまったもんではありません。
 強運というのも善し悪しですね。
 私にとって何が一番怖くてたまらなかったかというと、入院で夏休みの宿題をさっぱりやっていなかったのに、九月一日から元気に学校にいけたというところで…。
 その叔母のところの旦那さんのお父さんが亡くなって、私と同い年の息子(私のいとこ)が離婚したのが、それからちょうど十二年後だったのは、あまり関係のない話なのでしょう。



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