第三十七話

林譲治

 私の父方の叔母というのはたぶん血筋なのだろうが異様に霊能力らしきものが強い。その叔母が函館に住んでいた頃のこと。
 そのころ叔母は全身美容の店をやっていた。けっこう経営もうまくゆき固定客もついている。ある時、常連さんから自分の船――漁船では無くクルーザー――で沖に出るから一緒に来ないかと誘われた。その常連客は奥さんが通っているのだが、妙に気に入られた物らしい。
 ところでUFOさんでは有名な話だが、函館はUFO目撃の多い土地。函館山にはUFOの基地がある――NHKの中継局しか私には見えませんが――という噂もある。
 クルーザーが沖に差しかかると、叔母は函館山から自分達に向かって円盤が飛んでくるのを見つけた。常連客の奥さんもすぐにそれに気がつく。
 「あなた円盤よ!」
 「どこに?」
 「ほら、あそこ!」
 「あそこって、どこ?」
 驚くべきことに円盤はクルーザーの真上を飛行しながらUターンして函館山に消えて行った。しかし、叔母と奥さんは円盤をみたものの、旦那さんの方は最後まで円盤を見ることが出来なかった。クルーザーの真上を飛行したのだから普通なら見えないことはないはずだが……。
 翌日。叔母が店を開くと、別の常連さんがやってきた。開口一番、
 「ねぇねぇ、私さぁ、昨日海岸を散歩していたら函館山から円盤が……」
 円盤の正体はもちろん、その存在さえもいまだに不明であります。



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