果たしてこれを霊感と呼ぶのが正しいのか、あるいは第六感、はたまたテレパシーなのか、いややはりこれは虫の知らせと呼ぶのが最も相応しいのでしょう。
それはまだ、私が子供の頃の話です。
夕食も終わり、家族揃ってテレビを見ていたとき、母が不意に「線香の匂いがする」と言い出したのです。
しかし、そんな時間に線香を焚いているはずもなく、気のせいではないかという家族に、母は真剣な顔で「誰か亡くなった」というのです。
その頃の私は知りませんでしたが、母は我が家で一番の霊感体質で、今までにも同じような体験をしていたらしく、それから間もなく電話がなり、父の従兄弟の死の連絡が入りました。
その後も2、3度同じようなことがありましたが、いずれも 分としない内に電話がなっています。
ただ、不思議なことといえば、線香の匂いがするのは「誰かが亡くなった」時ではなく、常に「死の知らせ」が入る直前だということなのです。
この辺も、僕が「死霊」でなく「生霊」を信じる理由でしょうか。
そんな母も、ここ 年ほど不思議なことを言わなくなりました。
今考えるとそれは、何の霊感も持たなかった僕が、何かを感じるようになった時期と一致しているのでした。