第二十二話

阿部和司

 >> でも医者へ行けって言ったら怒るだろうなぁ。

 まあ、医者に行く前にノンビリと湯治にでも行かれる事をお薦めしてみては。それだったら、その方が怒る事もないでしょう。
 それはもう良い旅館があるんですよ。
 何しろ、江戸の昔から続く古い旅館で、電気も通らないような山間にあるんですがね。夜になると石油ランプが、また旅の風情を感じさせるんですよ。ちょっと長逗留すれば、もう心が洗われる事、間違い無しです。まあ、爺様、婆様ばかりなのが哀しいですけどね。
 まれに女子大生風のおねえちゃん客が居る事もあるので、それを楽しみに出かけてみるのも一興でしょう。
 でも、そのおねえちゃんと仲良くなったからといって、彼女の部屋までホイホイと着いていくのは、どうかと思いますね。
 めくるめく一夜(?)が明ければ、不粋な現実が待ってますからね。
 「お客さん、何で布団部屋なんかで寝てるんですか?」



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