第十七話

落合香月

 私は、霊感はさっぱりないし、怪奇現象にいきあったったこともありません。
 私の母は、霊感が多少はあるらしく、時々ちょっと不思議な話はしてくれますが、私自身は、昔から怖い話は苦手で、ホラーもオカルトもまったくだめです。
 お化け屋敷も嫌いで、小さいころは遊園地でも絶対はいりませんでした。
 ですからその時も、母と姉たちだけが、お化け屋敷に入って、私はお化け屋敷の出口で、みんなが出てくるのを待っていました。
 犬山遊園地のちゃちなお化け屋敷で、西洋版と日本版の2館が並んでいるうちの、西洋版の方だったかと思います。日本版よりかなりけばけばしい作りで、出口から少し見える部分だけでも、十分騙しものくさい雰囲気にみちみちていましたし、今にして思えば、ぜんぜん怖くない所だったとは思うのですが、小学生の私は、想像が先走って怖くなってしまいどうしても入れませんでした。まぁ、かなり怖がりの小心者だったんですね。
 遊園地で一人待っていると、それだけでもう、なんだか心細くなってくる。
 「…いっしょにいけばよかったかな。」
 「このまま、ひとりになったらどうしよう。」
 「まだかな? おそいな。ここが出口だよね?」
 「そんなに大きくないお化け屋敷なのに…。」
 私は、母達がなかなか出てこないので、不安感でいっぱいになり、遊園地のおじさんに、ただはいりと間違えられないかと、びくびくしながら、出口ぎりぎりのところで、必死に中の様子をうかがっていました。「おおきな、ダイアモンド〜〜〜〜!!!」 お化け屋敷は薄暗くて、中からは、録音めいたキャーという悲鳴とか、何かの仕掛けの作動するゴットンというくぐもった音しか聞こえません。
 すると突然、母の叫び声が、妙にはっきりと大きな声で、聞こえました。
 「おおきな、ダイアモンド〜〜〜〜!!!」
 あまりのことに、私は走って逃げだすこともできませんでした。なんでも、出口間際に、アラジンのランプの魔人の人形がいて、「何かおのぞみのものは?」と、問い掛けてきたのだそうです。
 私は怖がりです。でも、怖くなくてもやっぱりお化け屋敷は嫌いです。

 

林譲治

 >> 私は、霊感はさっぱりないし、怪奇現象にいきあったったこともありません。

 それが普通です。頻繁に怪奇現象にあったというような人は、自分の霊感を信じるより先に病院へ行くことを私は勧めますね。病気はけっして恥ずかしいことではありませんから。

阪本雅哉

 これは、何科の医者に行くべきでしょうか。  私は、こういった怪奇現象にはまったく縁がないんですが、知り合いに頻繁に有ると報告する人(検証できないので真偽不明)がいるものですから。
 でも医者へ行けって言ったら怒るだろうか。実害ないから言わないけど。

林譲治

 何科とは単純には言えないかもしれません。が、すべてが精神科ということはなく、むしろ脳神経外科に関わるようなことも多いのではないかと思います。
 原因が内科的な疾患であるような場合もないわけではありません。

阪本雅哉

 たしかに、症状によって行くべき先が違うのかもしれません。
 変なものが見えるなら眼科、聞こえるなら耳鼻科。悪寒を感じたら内科かもしれないし、膝から先がないような気がしたら外科にでも。それにパソコンの調子が悪くなったらサポートに電話するとか、システムを再インストールしたほうが良いかもしれません。

村田健治

 僕自身、何かの気配を感じて振り向いてみると、本当に人がいたなどという、単なる勘違いや、気にし過ぎだったりすることも多々あります。
 しかし、世の中それだけでは、説明できないこともないこともない、というわけで百物語に参戦させていただきます。



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