第七話

清水宏祐

 これは、この辺りに住んでいる人なら殆どの人が知ってるんじゃないかと言う位、有名な心霊スポットなんだけど…。
 普通、西宮市内から宝塚へ抜けるには、国道2号線から「札場筋」っていう交差点を北へ折れて、171号線へ入り、さらにもう一度左へまがって…、というコースをとるのが一般的なんやけど…。
 「札場筋」より、信号にして3つ西側の「神楽町」っていう所を北へ入って行く、いわゆる「抜け道」があるんやね。「抜け道」と言うても結構広い道でバスも走ってるんやけど、まあまあ空いてるもんで、少し回り道やけど、時間的には結構早かったりするわけやね。
 この道をズーッと上がって行くと、阪急の「苦楽園口」を経て六甲山への合流点に来るわけやねんけど、その少し手前、「鷲林寺」の附近に大きな岩が道を塞ぐようにしてあるんやね。で、道はこの岩を迂回するように上りは岩の右側を、下りは左側を…っていう具合になってるわけ。
 話によると、この道を通す時に岩を何とかどかそうとしたんやけど、どうにも岩が巨大すぎて出来ない。しまいには、「ダイナマイトで爆破してしまえ」というような乱暴な意見も出たらしいんやけど、工事に関係してた人が次々に事故に遭うというような事があったりしたもんやから、とうとう道の方を迂回させる事になったんやて。
 ただ、どうにもこの辺りで自動車事故が多い。聞くところによると、雨の日にこの辺りを走ってると、岩の処に白い服を着た女の人が立ってるんやて。ほんで「こんな雨の中、どうしたんやろ」と思ってるとフッと消えるんやて。それで事故を起こしてしもたって人がいまだに居てはるって。
 今では、岩の麓のとこに小さな鳥居が建てられて、大事にお祭りされてるみたいやね。
 今回、この話を書くにあたり、位置関係等はすべて記憶だけを頼りに書いています。どこかに間違いがあるかもしれませんが御容赦下さい。だって、いくら手元の地図をひろげても、文献をあさっても、この岩だけが載ってないんだもの…。
 ちなみにこの岩、「越木岩」っていうのが正式名称らしいんですが、地元ではその形状より「オ×コ岩」と呼ばれています、はい。



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