ダンジョンとは地下に構築された迷路であります。
通常、地下数十階に及ぶ建築物であり、ローグ・タイプでは無限階。また、不自然にできた地下トンネルなどさまざまの種類があります。
内部には所々に、金貨、薬、食料、武器などが存在し、奥深くにゆけばゆくほど、高価な宝物があります。しかしながら、これらのものは簡単に手に入る場合はほとんどありません。
ダンジョン内には、ネズミ、毒蛇、スライム、ゾンビ、ゴーストなどが生息し、侵入者を捕食せんと待ちかまえています。
さらに、通路には落とし穴、仕掛け矢、どんでんがえしなど様々な罠がめぐらされ、前へすすむには幾多の困難を克服しなければなりません。
さらに、深度が増すほどに遭遇する敵は強くなり、ゲームバランスを悪くすると、インチキアイテム無しでは倒せないほど、強力な怪物と遭遇してしまうこともあります。
このようなある意味“危険”な建築物をあえて公共事業により建設することに、疑問を感じられた方も多くいることと思います。
ここでもう一度強調しておきたいのは、ダンジョンには経済的・社会的に十分なメリットがあるということであります。
まずダンジョンによりこれまでなかった、需要が喚起されます。
ダンジョンのために、建築・内装・偽装・仕掛け罠、及びトンネル掘削などの、公共事業がうまれます。これらは日本の得意とする公共土木建築、ハイテク技術などをさらに発展させることでしょう。
また、埋めるための貴金属や美術品が必要であり、それらの市場も活性化します。
ダンジョンは辺境・或いは古代遺跡など交通に不便なところにあるのが一般的です。
ゆえに日本での建設候補地としては、北海道・九州の閉山した炭坑、あるいはピラミッドがある四国山中など失業率の高い地域でのセーフティーネットの役割を担います。
そしてダンジョンが完成したあかつきには。これまで消費が冷え込んでいるか、まったくみられなかった地域に、武器、薬局、飲食店、宿泊施設、専用工具、教会、墓地などの需要が生まれます。
さらにダンジョンによって、冒険者、戦士などこれまで日本にはなかった職種が誕生し、これらは新たな雇用の受け皿となることが期待できるでしょう。
ダンジョンの維持、管理にかかせないのが、侵入者を襲うモンスターです。
ネズミ・毒蛇・吸血コウモリ・ムカデ・ゴキブリなどの大量養殖が、新産業として急成長することはいうまでもありませんが。これだけでは、大量の冒険者に対処するためには、力不足であることは否めません。
ダンジョンは日が射さず、湿気が多いなど特有の環境的からいって、生息できる動物が限られてしまうという欠点があります。
そのためにも国の予算で新たなモンスターを創設する必要があります。そのためバイオテクノロジー産業に対して大規模な予算を組むことが、緊急の課題となります。
技術レベルからいえば、それは既に可能性を議論する段階ではなく、いかに予算を割き、場合によっては倫理的な限界を修正するかにかかっております。つまりこれは政治の問題なのです。
スライム、人喰い大蟻、アンデッド、そしてドラゴンが自在に生み出せる技術は、他の医療や農業などの分野にひろく応用が期待されます。
工学的なゴーレム、ガードロボットも有力な手段でありますが、エネルギーとメンテナンスの問題を解決するため、この分野にも新たな予算処置が必要となりますが無駄になることはないでしょう。
ダンジョンは教育・スポーツ・娯楽の場所として日本だけだけではなく、ひろく世界にアピールできるものです。
昨今の青少年による犯罪は、うっ屈した力の暴発とみる専門家の意見には、傾聴すべき点が多々あります。また社会の安定が望まれるほど、濃い人間関係を築くことがむつかしくなる、といういっけん逆説めいた社会学者の言葉も検討に値します。
若者達が、己の力の限界を試し、真の人間の絆を学ぶため。義務教育にダンジョンの探索を組み込むことは、青少年の健全な育成にとって最良のものであるのは間違いありません。
ダンジョン探索の技術は多岐に渡り、その習得はあらゆるスポーツにひけを取らない鍛錬が必要です。
それらの技術の向上を競いあうことを、スポーツとして組織することが可能であり、ルールーと支援組織を制定することで、柔道につぐ日本発のオリンピック種目を目指してゆきます。
ダンジョンは基本的には健康な成人向け施設でありますが、マシンガン・擲弾筒などの小火器の携帯、或いは階段の横にスロープを設置するなどの、きめ細かなバリアフリー対策により、子供から老人まであらゆる人が入れる場所とすることができます。
さらに、表示や案内の他言語化、スタッフ、モンスターに対する外国語教育により、ゆくゆくはTDL・USJに並ぶ世界中から人々を集められる娯楽施設となるはずです。
ダンジョンは「環境問題に対する最終的な解決方法」となることを声を大にして主張します。
現在の全地球的な環境破壊をくい止める、もっとも有効な手段は人口の抑制です。このまま人類が増え続けるならば、いずれは地球環境は取り返しのつかない破局へ至ることはあきらかです。
ダンジョン内では一般社会よりも死亡率が高くなります。また、良いダンジョンの条件は深く潜れば潜るほど、生還率が低くなるというものであります。
最も深く潜って帰還できる確率はほとんどない。 ダンジョンとはそういうものなのです。
人口の抑制にこれほど効果のある施設は他に例をみない、といえるでしょう。
最後に将来の日本人のための、ダンジョンの価値について述べたいと思います。
現在世界遺産に登録されている、エジプトのピラミッド、中国の万里の長城、これらの建設は一国の命運をかけるほどの財政規模でおこなわれ、かつ建設当初はその効果について疑問視する声が多かったものばかりです。
しかし、翻って現在これらの建設物は、その国の歴史の重要なモニュメントとして、また全世界の人々を惹きつけてやみません。
もし、いま、日本に多数のダンジョンをつくれば、将来世界から「日本はダンジョンの国である」
という評価を得ることができます。「日本の大地には夢が埋まっている」と語り継がれ、人々を永遠に惹きつけてやまないものとなりませう。
それらはきっと我々の子孫達が土産物屋として生計を立てる糧として、役立つものとなるはずです。
このダンジョンをつくるという重大な決断が、いまの内閣で決定され実行されることを期待しております。
アイディアの使用権はフリーといたしますが、これからの政策提案機能を充実するため、人外協の隊費口座あてに、10億円ほどふりこんでいただければ感謝いたします。
敬具