ジャカルタからの手紙2

川崎[漁師]博之

阪本雅哉隊長様
前略

 お元気ですか。今年の日本の夏は”酷暑”だったとか。亡くなられた方もいたそうで、不謹慎かと思いますが<へぇーっ>とただ感心してしまいました。(何故かという理由を聞かれても困りますが・・・)。

 ところで遅くなりましたが、人外協Tシャツ無事受け取りました。支払については青年海外協力隊事務局の人が(<協力隊の人>とか<事務局の人>と他のとことへの手紙には書けるのですが。混同をさけるために)入金してくれるようなことを言ってたのですが、もう入金はあったでしょうか。また金額についても私は確認していないのでもし不足等がありましたら、お手数ですが御連絡ください。

 人外協Tシャツは、まずUNESCO事務局の同僚、イタリア人の女性とオランダの青年(彼らは各国政府から派遣されている準専門家スタッフのような立場の人。この2人と私が同室のオフィスに居る)に配布、というか強制的にプレゼントしました。
 まあ当然のごとく
 「どうしてこんなものをくれるんだ」
 「この字何と書いてあるのか。意味は何だ。」
 「谷甲州FC・・・の文字に関して」ここだけF.C.とアルファベットが書かれてあるが、何故なんだ。」
 などなどと質問されまして、
 「えっー、まあ、日本の友人がオリジナル・デザインをプリントしたTシャツを送ってくれたんで・・・、まあ買ったんだけれども・・・まあいいんじゃない?」
(値段を忘れたこともありましたが、ドルにするといくらでとか、金を払うと言われてもこまるし、買ったものをタダで配る理由を聞かれてもこまるし−−”地球征服のために”という冗談をいうわけにもいかないですから)
 「”御迷惑おかけします”ちゅうのは、 えー、 何というのか、 あー Sorry to disterb you かな? Apologies for this inconvenience ちゅうべきか? ・・・ほらこの絵。ヘルメットかぶってるでしょうが。ネッ、道路工事の最中とか建設現場によく出てるでしょうが、似たようなサインボードが・・・。あれっ!? 日本だけだっけ、そんなサインボード・・・、知らない? まあ何ちゅうか、そういうこっちゃ」(何のこっちゃ!?)
 「谷甲州FC青年人外協力隊というのは、谷甲州という日本では有名な小説家のファンクラブの人たちの名称で・・・。えっ、ファンクラブって何やて・・・(発音があかんかったのかな?彼らはこんな言い方せえへんのかいな)。あのーfanatic な連中が集まったグループでして、まあ言うたら、オランダやイタリアの連中のサッカー狂、ホラッ、なんちゅうたか・・・、そやっ!”フリーガン”みたいな連中や!!」(こう言ったあとで、彼らが顔見合わせたんで、あっまずいかな、変なこと言うてもたかなと思ったもんで、「別に過激なことする人達でもなく凶暴でもない」と言うべきかと考えましたが、そうするとまた逆に話をややこしくしてしまうかと考え直し、話題を変えてしまいました。)
 「貴女はMサイズでいいですよね。あかんかったらLサイズもありまっせ」(情けなー。ワイはセールスマン、Tシャツの行商人やないねんで。)
 「えっ、何でここが黄色になっているかて(知らんがなそんなこと!)いやー、おそらく夜になったら光るんとちゃいまっか(ホンマかいな!?)蛍光色やない? 夜でも別に光らんやろてか? 黄色は、 あのー、 atiention の意味があるちゅうか・・・、まあええんとちゃう」

注:会話の中で標準語は比較的きちんとした英語で、関西弁はかなりブロークンにしゃべっていると思って下さい。

 等々、わけのわからん説明をしてとりあえず受け取ってもらいました。まあ喜んでくれたのは良いのですが、調子に乗って「このTシャツ我々3人おそろいで着て、水曜日ごとのUNESCOのスタッフミーティングに出席しよう!」「It's good idea!!」(どこがじゃーー!?)
 「いやー、ちょっとまずいんじゃないかと思うんですが・・・、それにDirectorや他の staffが欲しいと言いだしたら数に限りがあるもんで・・・」(と、結構その気で考えてしまったりして)
 「冗談よ」と、あっさり言い返されてしまいましたが。
 この他にインドネシア人の我々の秘書の1人とそのメイの女学生にとりあえずあげることにしてます。また同じような問答を繰り返すことになるでしょう。

 前の手紙にも書きましたが、ジャカルタには何軒か日本の書籍を取り扱っている店があるようですが、私が行くのはSOGOデパート内にある紀ノ国屋でして、この七月には谷甲州「低く飛ぶ鳩」(徳間文庫)が5冊入荷しました。定価は一万三千六百Rp(ルピア)です。今のレートが一US$≒一八五五Rp程度なんで円に換算すると・・・(すみません計算してください)
 現地通貨で海外手当を受け取ってますんで、あんまりドル換算、円換算にする感覚はないのですが、多少実感として感じていただく側とすれば、私に限ったこと?かもしれませんが日常の食生活と比較してもらうとわかりやすいんじゃないかなと思います。
 海外での日本食レストランの値段の高さには定評のあるところですが、例えばランチタイムの幕の内弁当九千〜一万二千Rp(税込み)、焼肉定食八千〜九千Rp、日替りランチ約一万Rp、 天プラうどん約八千Rp、焼きうどん約七千Rp、おにぎり1ヶ約二千Rp、 にぎりずし定食一万Rp前後といった感じでして、そういったところで飲むコーヒーなんかも二千五百〜三千Rpといったところです。
 で、私の普段の食事ですと、昼UNビルの食堂で食う日替りランチ(ナシ・シマス)千五百RP、特製焼飯(ナシ・ゴレン・ビヤサ)千二百Rp、焼きソバ(ミ・ゴレン)千五百Rp、コーヒー五百Rp、コーラ四百Rpといった程度です。夜はまあ自炊ですけど、面倒臭い時には家の前を通りかかるワルン(屋台)を呼びとめ、焼飯(ナシ・ゴレン)を作ってもらい、焼飯卵入りが七百Rp、卵無し五百Rp、もし白飯を持って行っていためてもらうだけだったら三百Rpといった感じです。
 ですから、日本ですと文庫本一冊はコーヒー一杯分、タバコ2箱分とかいった値段ですが、こちらですと何と幕の内弁当、コーヒー付か、あるいは1週間分の食費かといった、なかなか文庫本一冊買うにもエンゲル係数に重大な影響をおよぼす一大決心の要する行為と化します。
 ところで入荷当時、新着文庫コーナーの一番目立つ場所にあった「低く飛ぶ鳩」は冊数の変化がないまま今は下段の隅においやられてしまいました。(私は「低く飛ぶ鳩」は他の書店で買ったのですが、そこには「仮装巡洋艦バシリスク」一冊が最初目撃した当時の位置にそのままあります。早よ誰かこうたらんかい!!)。

 それではまたお便りいたします。
 みなさまによろしくお伝え下さい。

敬具

P.S.
 こういう手紙というかお便り形式の原稿みたいなもんでもかまいませんか。原稿のそれなりのフォーマットがあるようでしたら教えて下さい。(編:特にフォーマットというのはありません。むしろいろんなパターンがあった方が紙面がにぎやかですので、書きやすいようにお書きください)



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