前回書き忘れたのですが、ここタウンズビルにはオーストラリア軍の基地がありまして、大学のある場所からそう遠くないところに兵舎もあり、時折道路脇の空地で迷彩服の兵士達が何やら演習しているのが見られます。ぜひ新婚旅行中にでも立ち寄って見学していってください(……って、これも新婚さんには関係ないなぁ)。
軍といえば今は放映していないのですがオーストラリアのテレビ番組で、『ブッシュ・タッカー』というのがあって、アボリジニーの人達の伝統的な半砂漠、ブッシュでの生活様式とその自然を紹介していたのですが(まあ、あの『クロコダイルダンディー』の地元紹介みたいなもん?です)、この番組のレポーターというのが現役のオーストラリア陸軍の曹長だったとか。なんでも軍がこの番組に関わっていたのは、北部オーストラリアの自然状況を把握し、アボリジニーの人達の生活の知恵を習い記録しておくことが、ひとつの軍の防衛戦略だったそうです。つまり、もし敵がオーストラリア大陸に侵略してきた場合、広大な大陸全域に防衛線を敷くことはできないから、キャンベラ、シドニー、メルボルン等の南部主要都市を取り囲む防衛線を固め、大陸北部方面から上陸、侵攻する敵をブッシュ地帯に誘い込み、アボリジニー式サバイバル技術を身につけたオーストラリア軍の特殊部隊によってゲリラ戦を仕掛けるちゅうことだったようです。
とまあ、この話はオーストラリアの普通のおばさんに聞いた話やからほんまかどうか……なんや『おばちゃんでも知っている防衛戦略』ちゅうのは機密もくそもあったもんやないもんなぁ。まさかそのおばさんがオーストラリア北部方面軍第十一師団情報部所属防謀特務員で、対間謀作戦の一環として入国してきた外国人にこの話をしてどこに情報が流れるかを探っている……ちゅうことはないわなぁ(小説のネタにもならんな……)。
でもそのうち『覇者の戦塵』の舞台がオーストラリアの方まで南下してくるかも。第二次大戦中北部のダーウィンは日本軍に空爆されたし、ミッドウェー海戦前にコーラルシーで海戦があったみたいやし、シドニー・サンフランシスコ間のシーレーン破壊のためにシドニー湾に日本海軍の潜水艦が侵入したこともあるようやし、可能性はないとはいえんでしょうが、あの坊さんとアボリジニーのおっちゃんがエアーズロックに登って互いの世界観について語り合う……ちゅうのはないわなぁ。
ところで、パソコンを自由自在に使いこなしておられる甲州親方や人外協のみなさんにとってはたわいないことなんでしょうが、相当うらしま太郎化している私にとっては昨今のなんでもかんでもコンピューター化は頭痛の種でしかありません。久々の学生生活は戸惑うことばかりで、コピーするにも許可された暗証番号を打ち込まにゃならんし(……って、別にたいしたことでもないか)、図書館で書籍を探すにも検索プログラムを使わにゃならんし、今学期やらにゃならん生物統計学ではなんちゃらちゅう統計プログラムは使わにゃならん、データベースだの、ロータスだの、エクセルだの……、ええ加減頭が痛うなります。
先日も生物統計学の課題を提出せにゃならんのでコンピューター教室に居残ってたんですが、ちょっとキイを叩いてはマニュアルのページを繰って次はどないするんやったかいなと全然先に進まれへんし、他の学生達はカチャカチャと景気ようキイを打ち続けてるしでもうええ加減苛ついてたところ、そのうち隣の席で同じように課題をやってた学生夫婦(後に会話からそうとわかった)がいちゃつき始めて、外人さん(自分の方が外人なんでありますが)の抱擁シーンはしょっちゅう眼にしますから免疫ができているとはいへ、苛ついている私としては「おまえら時と場所を考えたらんかい!」と言いたくなる程でして、しかしながら他の学生達は平然としてコンピューターと向かい合ってキイを叩いておりますから、カチャカチャ、いちゃいちゃ、カチャカチャ、いちゃいちゃ……「でーい! 馬鹿やろー 寿 がなんやちゅうねん!」とまるで関係ないことを叫んで(もちろん腹の中で……)、とぼとぼと教室を後にしたのでした。
『Pacific Blue』のオルカの声を聞きながら
(『星の墓標』を読むときのBGMにいいかもしれない)1993年4月25日