始めに
CONTACT Japan の活動の二大柱といえば、FCS(ファースト・コンタクト・シミュレーション)とWorld Build(異星人、異世界構築)です。
しかし、CONTACT Japan 3、4ではFCSだけを行ない、参加者はWorld Buildを行ないませんでした。(異星人、異世界の設定は CONTACT Japan 3はポール・アンダースン氏に、 CONTACT Japan 4はロバート・J・ソウヤー氏に依頼しました。)
CONTACT Japan 5では、分科会形式の企画のひとつで「異世界構築」を行ないました。
この企画で設定した異星人(異世界)は翌日のFCSの、異星人側として使用します。そのため、設定する異星人は地球人文明とコンタクト可能な文明を持つ必要があります。
異星人(アネモ)・異世界設定
異星人(アネモ)の設定
- 概要
- 異星人の種族名は“アネモ”。
τケチ星系の第2惑星(家星)に生息する。
パイナップルを逆さまにしたような外観。完全に円対称形で前後や左右の区別はない。
惑星全体を統一する国家はなく、多くの国家や集団の連合が存在する。合議制の中で自分の意図を実現しようとする性格が強い。 - 姿形
- イソギンチャクやパイナップルを逆さまにしたような外見で、円対称形。上部に口にあたる開口部があり、その周囲を触手と目が取囲んでいる。(右の図を参照)
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- 円対称形で、触手が32(8×4)本、目の数32(8×4)個、足の数も8本。
8対称形で触手と目はそれぞれの節に4個存在する。 - 平均体長60cm(=1アネモbl)。
死ぬまで成長するが年をとると成長が遅くなるため、最大でも80~100cm程度。 - 触手の長さは120~180cm(=2~3アネモbl)。
- 足は3節になっており、丈夫で強く地面を掴んで身体を固定することができる。
- 生殖器官は足のつけねあたりに8個所ある。雄は触手を使用して精子を雌に受精させる。
子宮・卵巣も8個あるが同時には1個体、まれに2個体しか妊娠しない。
- 円対称形で、触手が32(8×4)本、目の数32(8×4)個、足の数も8本。
- 生物的特徴
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- 寿命は100~200家年(=60~120地球年)。
- 性の数は2。(雄、雌とする)
- 生殖可能な年齢は通常30~60家年。(最低15、最大80家年)
生物学的には10人程度の子供を作れる。
現在は文化的に制約され平均1~2人程度 - 体の周囲に目があり全周囲同時に見ることが可能だが、視力は地球人ほどは良くない。また目の位置が上部にあるため足許は見えない。
触手が広い範囲に届き触手による感覚で視野の不備を補っている。 - 目の他に低温でも発生する赤外線を見ることのできる感覚器官を持つ。可視光(青、緑、赤)と赤外線の視覚(温)は脳内の処理で統合された視覚として処理されている。
- 音(空気の振動)や匂い、味、触覚などの感覚を触手で認識している。
- 音声言語は持たず、コミュニケーションは触手による手話でおこなう。全方位視覚があるので多人数での会議も可能。
- 雑食。
- 政治・文化・歴史
- 惑星には大陸がなく小さな島が多数存在 しているため、複数の島に国家が生まれ連合や分裂、侵略を繰り返してきた。 また地域的・資源的な偏りも少なく、その結果特に優勢な勢力が出現することも無かった。小規模な戦争、侵略などはあったが大規模な戦争(世界大戦のような)は存在しなかった。
そのためか、歴史上一度も大帝国が存在せず常に多数の国が合従連衡を繰り返していた。
現在は全惑星的な国家連合が存在している。
方針の決定は議会による合議制を取るが、策略を巡らせる性格が強いため決定には時間がかかる傾向にある。 -
- 常に多数による連合で構成された社会で、単独の勢力で大きな方針を決定することができなかった。そのため多数派工作をおこない自分の主張に同意する勢力を優勢にして意思を通そうとする。
- 現在も国家や信念や意見、利害を同じくする様々な集団がグループを作り勢力を優勢にして、全体の意志をそちらへ誘導しようとする。
- 陰謀を謀ることは悪いことではなく、通常の生活感覚として基本的な行動様式になっている。
- 歴史上、多数の国が合従連衡を繰り返していたため一ヶ所で失脚しても他の島へ逃亡することで巻き返しの機会を得ることができた。
そのため、勝利や敗北も永続的なものではなく状況により常に変化するものだと信じている。 - 「故意に嘘をついたり、相手を騙すような行為」は自らの信用を落とすことに繋がり、長い目で見ると得にならないことを感覚として持っている。
- 自らの目的のために手段を選ばないように見え、人類から見ると狡猾、義理に欠ける、ずるいといった印象を持つかもしれない。
しかし、相手の弱点を付くことや多数派工作などは行うが、基本的には「嘘をつく」のではなく利益や正当性を広く認知されることで勢力を広げようとする。 - 議会は国家だけでなく、いろいろな団体を公式、非公式に代表するアネモで構成されている。
- アネモの多くは宗教心が稀薄な傾向が強く、支配的な宗教は存在しない。
多くの宗教は多神教で、同じような神を信仰しているが宗派によって解釈や主神が分かれている。 - 大昔は島を渡るのに海上交通を使用するしか無かったが、文明発達初期に気球の発明があり「大気球時代」と呼ばれる時期があった。
現在は航空機を多用している。 - 円対称(8方向)なため、前後や左右などの方向の概念を持たない。
- 方向を示すときに東(太陽の昇る方向)を基準とした、角度(基本的には32分割)と距離の極座標表示で示す。
- 手話を元にした象形文字のような文字を書く。(惑星間で多言語があるかどうかは未設定だが、たぶん元は異なったはず)
- アネモの使用する地図は極座標表示されたものが中心。
- その他
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- 強固な外皮を持つため衣服は着用しない。ただし、所持品を保持するためのポーチのような物は使用する。
- 装飾としてボディペインティングを多用する。
- 多様なスポーツが存在するが、多くのチーム(平均的に8チーム)が同時に参加するゲームが多い。
- 個人で楽しむスポーツでは水泳は人気がある。
これは島の間の移動手段として気球の発明前には、水上交通を使用していたなごりかもしれない。 - スリルを楽しむようなものではスカイダイビングは愛好者も多い。
気球などから頭を下にして(足の間に膜をはり)降下する。途中でパラシュートを開き足を下に戻して着地する。 - 音声言語がないため、音楽はBGMのようなものしかない。
- コンタクト
- 太陽系に向けての通信は地球人の文明の存在を確認して送ったものではなく、近隣の恒星系の中で有力と思われる何ヶ所かに送った通信のひとつ。
近隣の恒星系への通信は、「通信を送るべき」との会派が社会の一定の支持を受けたために実行に移された。目的の恒星系に関しても、それぞれの恒星系を有望と考えるグループが主力となっておこなっている。
太陽系からの返信が1種類であっても、その後ろでは主流派以外の存在があるはずだと考えている。 - コンタクト開始時の技術レベル
- 近隣の恒星系に向けて通信を送り始めたのと同時期に片星や隣星への探索が始まった。
- 家星の周囲には恒久的な人工の衛星基地が存在している。
- その他の惑星にはようやく有人(有アネモ?)の探索が始まったところ。
- 宇宙開発推進派のグループが大きな支持を得れば、かなりの水準まで一気に進むことが期待できる。
恒星系・惑星・その他の生物
- 恒星系
- τケチ星系の第2惑星(家星)に生息する。
- 惑星は8個、内側の5個が地球型惑星。その外側にガスジャイアント 2個、ガスジャイアントに挟まれて小惑星帯が存在する。(小惑星帯を含めて8個と考えている)
- τケチは“太光”、内側から順に片星、家星、隣星、赤星、黄星と呼んでいる。
ガスジャイアント、小惑星には取り立てて名前を付けていない。
- 惑星
- 基本的には地球型の惑星
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- 地球型惑星。(ガスジャイアントではない)
- 恒星からの距離は0.7AU、公転周期は0.6地球年(=1家年)。
- 自転周期は3.6地球日(86.4時間)。1年は61家日になる。
- 重力は0.5G。
- 大気の組成はほぼ地球と同じだが、大気圧は3000hPa程度。
- 表面温度は平均40℃。(1日が長いので変化が大きい。場所は季節の変化もある。)
- 地軸の傾きはほぼ地球と同じで、季節の変化も同様にある。
- 惑星全体で陸4:海6程度。大陸は存在せず、惑星全体に小さな島が数多く、地域的な差は少ない。
- 家星には衛星がない。
- 惑星の生物
- 重力が小さく、大気圧が高いので飛行(浮遊)する生物が多い。(アネモの触手は小型の飛行生物を捕食する目的を持っていた)
詳細に関してはなにも決まっていない。
設定の過程
当初は異世界構築は設定項目にしたがってすすめれば、FCSで必要となる設定項目 は網羅できるのではないかと考えていた。
しかし、いきなり「どんな生物にしましょう」ではなかなかイメージがわかないこともあり大まかな環境を先に決めることにした。
コンタクトの最後には地球人と直接接触できるほうが面白いだろうということで、地球の標準から少し外れた極限状態程度、たとえば極地が続いているような環境にしようということになった。
たとえば
「重力はどれくらい」、
「軽いほうが良いね」、「でも、あまり軽いと大気圏が維持できない」
「じゃあ、1/2程度に」
とか
「大気組成は、」
「生物は、酸素で代謝する生物に」
「あまり細かく決めても、使えないよね」
「じゃあ地球とほとんど一緒にしよう」
といった感じで適当に決めていく。
最初は自転時間は860時間だったが生物を検討するときに86時間に修正されてしまうなど、ある程度は無難な線に落ち着いていくのは生命や文明を考えなければならないためしかたがない点である。
しかし、たとえば気温が40℃、大気圧が3気圧などと、直接接触の段階で地球人にとって微妙に嫌な方向に決まっていったのは、偶然ではないはずだと思う。
ここで恒星系を決めることに。実のところ恒星系はどこでも構わない。本当はそんなことないのだろうが、太陽系の文明とコンタクトするためには選択の幅が狭い。ここで CONTACT Japan 1で用意した太陽に近い近隣の恒星のリストの中から安易な方法(サイコロ)で選択することにした結果“τケチ”となった。
惑星の位置や公転周期も、地球に近い環境になるような値をこのデータから流用する。他の惑星の配置は、今回詳細な検討をする時間もないだろうと、太陽系と一緒にならないように適当に決める。
月のような衛星は無いことになった。これでは宇宙開発の初期段階での目標設定が難しいかもしれないが、実のところどれだけ影響があるのかはわからない。いやそれ以前に月が有るから生命が生まれた、巨大惑星が2個だから、、小惑星帯が有ったから、、、など素人にはどれが正しくてどれが正しくないのか、判定できない情報は多数あるのだが、良く分からない要素は切り捨てるしかない。
最初は自転速度が極端に遅いので、太陽の移動とともに移動しつづける生物と文明という方向で検討を進める。しかし、途中で極地を除くと移動速度が非常に大きくなりすぎるということに気付き残念ながら捨てられてしまった。
もうひとつ、重力が小さく気圧が高いと空を飛びやすくなるだろうと飛ぶ機能を持つ生命体を考えるが、文明が発達しにくいのではないかということで却下された。(このときに考慮した生物は、時間がなくて考察できなかったアネモ以外の生物のバリエーションとした)
そこで飛行動物を捕食する生物にしようと、口は上向きでその周囲に触手のある上図のような生物を考える。
いったん図として描かれると、少なくとも外見に関してはイメージが固まるのが早い。
「目の位置が上に偏っているため足許が見えないのではないか」との意見も触手が足許を含む広い範囲に届くことで補っているという解釈でクリアされ、触手のはえかた、数や長さ、足の数、形など外見的特徴がおおまかに決まる。大きさや寿命、繁殖のしかた、性の数、言語など生物的な特徴については、試行錯誤と脇道にそれながらも決っていく。
種族の名前は見た目がイソギンチャクに似ていることで、イソギンチャクの英語名(sea anemone)から“アネモ”と決った。(アネモは音声言語を持たないので、彼らの自称が“アネモ”と地球人の言葉に変換されたのかは不明ということに)
最後に文明と歴史について。
この惑星には大陸は存在せず、数多い島に独立した国家が多数生まれる。当然近くの島の間には交流があり交易から戦闘まで海を越えていかなければならない。
島を渡るのに最初は海上交通を利用していたが、気球が発明されてからは一気に距離と速度が増大し移動範囲が惑星規模に広がった“大気球時代”を迎えた。
島々に政府が乱立していれば合従連衡を繰り返し勢力争いは激化するだろうが、社会を構成する勢力が多いことと長距離の移動が容易なことから、いったん失脚しても逃亡さえすれば敗者復活というか捲土重来が可能だろう。とすれば個人主義で陰謀が好まれ、いったん勝利してもいつ巻き返されるかもしれないかなり陰険な社会を築いているということになった。
ところで、体が対称形で前も後ろもないことから「裏も表も無い性格」という(おそらく)冗談の意見から、嘘をつかないと決まってしまった。陰謀好きで嘘をつかない、無理があるかもしれないが面白かろう。
コンタクトに関して
企画の後半になってから、企画中の部屋の片隅でFCSの異星人側担当スタッフによってコンタクトの最初にアネモから太陽系に向けて送られるメッセージが作成されていた。異世界・異星人構築の参加者も必ずしもFCSに参加するわけではないので、このメッセージの内容に関してはこの企画ではいっさいタッチしないことになっている。
本当の最後に、メッセージを送ったときのアネモの技術や宇宙開発レベルについて簡単に決定して終了。
オプション
夕食後の企画はオプションとして、これまでの企画に参加していない人も参加可能となった。比較的自由にこれまで決ったアネモに関して話し合う時間になっている。
まずはアネモの装飾について、どうみてもパイナップルのような固い皮膚をしているようだから衣服は着用しない。自分を飾るにはボディペインティングするだろう。
ゲームやスポーツは、スポーツのルールは非常に複雑だろう。島を渡っていたんだから水泳は外せないよな。そして、なぜだか気球から飛び降りるスカイダイビングに関してはかなり熱心に話 し合った。
その後、視覚に関して話し合った。とりあえず三原色(青、緑、赤と表記するが人間と同じ帯域ではない)となった。最初はセンサに感じる範囲を広げようとしていたが少々範囲が変わってもさほど 差はないだろうということで、赤外領域を見ることができる器官があることになった。どうやら赤外領域も2種類の周波数に反応しないと高低が判断できないということらしいが、詳細については棚上げ。とりあえず別の器官があるが脳内で視覚と一緒に処理されていることに決った。
しかしここで困ったことが、CONTACT Japan 5の直前に出たばかりの「イリーガル・エイリアン」のトソク族である。「赤外域が見えるなら嘘がつけない」とか「夜道で後ろから闇討ができない(アネモは後ろからいきなりは元々不可能)」なんて話が出るのだが、どうもソウヤーの真似をしたように思われるかも。それ以前に「イリーガル・エイリアン」に絡む話はネタバレするようで気になってしまう。発表ではやはり「イリーガル・エイリアン」の影響についての質問があった。
最後は、アネモの議会、TV、子育て、など分裂して濃い話をしながら、時間とともに終了。