木村名古屋支部長が「軌道傭兵」シリーズの主人公だと、かたくなに主張する秋山さんについて、その正体を追求してみたいと思います。
まず、本文中から秋山さんの出自について、手がかりを求めてみますと、
というようなことが挙げられます。これらのことから、秋山さんは、「博士号をもっていて、文部省の研究所に勤務している」ことがわかります。
では、秋山さんは何を研究しているのでしょうか。これについては、フリ−ダムIIの乗員構成から考えることが出来ます。まず、宇宙ステーションで日本が求める研究成果については、毛利博士が「ふわっと’92」で行った実験からそれほど変化していないと考えられます。つまり、宇宙ステーションでの主な研究テーマは、材料実験とライフサイエンス実験であると考えてもよいでしょう。日本から派遣されている研究員が、秋山さんと加藤技官の二人であるので、それぞれがどちらかを担当する専門家であると考えられます。では、どちらがどちらを担当していたのでしょうか。
それを決めるためには、加藤技官の出自について考察する必要があります。本文中に記されているように(一巻88P)、加藤技官はもともと自衛隊の技術将校であり、おそらく防衛庁の意向を受けて、大学で研究を行っていました。この場合に、彼が所属すると考えられる組織は二つあります。材料実験の場合は防衛庁技術研究本部、ライフサイエンス実験の場合は防衛医大となります。
しかし、加藤技官が防衛医大に所属していたとしたら、宇宙に行くほどのはえぬきである彼は、当然医者であったはずです。そのような記述は本文中にないので、彼が防衛医大に所属していた可能性は小さいでしょう。また、兵器のハイテク化が現在以上に進んだとした場合、防衛庁にとって、エレクトロニクス技術の研究はライフサイエンスよりも重要であるという点からも、加藤技官は防衛庁技術研究所に所属し、フリーダムIIでは半導体関連を中心とした材料実験を行っていると考えられます。
加藤技官が、材料実験を行っているとすると、秋山さんはライフサイエンス実験を担当していることになります。彼も医者であるという記述はないことから、生物系の理学博士か農学博士の博士号を持っているのでしょう。
次に秋山さんが所属する「研究所」について考えます。文部省に所属する研究所には、直轄研究所と大学附置研究所の二種類がるのですが、大学附置研の場合、上に大学があるぶん制約が厳しく、秋山さんのように簡単に、宇宙基地に派遣されたりはしないはずです。
というわけで、秋山さんの所属研究所は、文部省の直轄研究所のうち、ライフサイエンス関連の研究を行っていそうな所に限定されます。
具体的には、
のうちいずれかであると思われます。
秋山さんの研究の具体的なテーマまではわかりませんが、宇宙空間での実験というのがその中心的な役割を持っていたであろうことは想像できます。そのために彼の研究室では、休職や退職といった処置を取らずに、彼に数年間(?)の訓練を受けさせてまで、宇宙空間での実験が出来るようにしたのでしょう。 国立の研究機関では各研究室の人員はかなり制約されているはずなので、その中から一人、所属をそのままにして一時的にでも研究から手を引かせるというのは、その研究室にとってはかなりの痛手であるはずです。(秋山さんの所属を外してしまうと、その分人員が補充できるはずなのに、あえそれをしていませんから。)彼の研究室は、そのような痛手を被ってでも宇宙空間で実験できる人員を確保する必要があったのでしょう。
しかし、いくら大学附置研究所より制約が少ないと言っても、生物学者にいきなり宇宙サミットの随行員をさせるというのも、あまりのような気がします 。二巻から三巻でやらされていることなんかNASDAの職員と変わりないと思うんですが。まあ、五巻では彼も自分を宇宙空間での作業の「プロ」と言い切ってるから(五巻190P)、本人もこちらを本業と考えているのかもしれませんけれども。
おまけ。
海部三佐と会ったときに秋山さんの品定め(二巻68P)より。
「かといって、研究員のような繊細さもない。」
・・・秋山さんも繊細とは思えないけど。
この文章を書くに当たり、加藤技官の専門については林[艦政本部開発部長]隊員、文部省の研究所については南川[東京支部上皇]隊員に助言をいただきました。ありがとうございました。
(文責はもちろん当麻[隊長兼ガメラ]にあります。)