星の世界にどう行くの?

林[メカ・キングギドラ]譲治

 航空宇宙軍史もこんどはいよいよ恒星間世界が舞台になると言う(話しは確か2年前にも聞いたような気がするが)。
 こういう状況において深読みを任とする我々谷甲州ファンとしても恒星世界についての事実関係を整理することに(作者には迷惑かもしれないが)いささかの躊躇も許されないであろう。

 さて、将来的にはどんな技術が登場するかわからないが、少なくとも航空宇宙軍史では太陽系近傍の恒星に関してはラムシップが用いられるようである(仮想巡洋艦バシリスクなど)。そこでちょっと計算を行ってみた。図の船内時間の単位は年、船内時間Bの単位は日になってます。また距離は光年、加速はGです。
 図1は常時1Gで加速している宇宙船がそれぞれの恒星に到着するまでに経過する船内時間を表わしたものである。対象とした恒星は太陽から半径12光年以内だが、これを見る限り5年あればどこの恒星にでもいけることがわかる。だいたい1G加速なら遠くに行くほど有利になるようである。まぁ、こんなことは私が言うまでもなく石原博士の銀河旅行シリーズに書いてございます。

 ところでなぜ1G加速なのであろうか? それは地球の重力が1Gであるからに過ぎない。地球の重力がもっと強ければあるいは2Gとか3Gとかになったかもしれない。だがここで考えるべきことは航空宇宙軍史では地球以外にも人間が住んでいると言う問題である。月、カリスト、ガニメデそれらの重力はおおむね0.2G以下である。したがってそのような環境で生まれ育った人間がはたして数年におよぶ1G加速のもとで生活できるであろうかと言う疑問が生じる。
 0.2Gで育った人間が1Gで暮らすのと、1Gで育った人間が5Gで暮らすのを単純に比較することはできないだろう。しかし、循環器系を始めとしてその肉体に大きな負担がかかる可能性は少なくない(0.2Gで育った人が知人でいたら教えて下さい)。

 そうなると月人や外惑星人が恒星世界に進出しようとしたらその恒星間宇宙船の加速度は0.2Gが限界となるだろう。宇宙船の設計としてはその方が楽かも知れないが相対論的なメリットはあまり享受できそうにない。このことを示したのが図2である。0.2Gでも遠くの恒星へ行くなら相対論的なメリットも享受できるのだが半径12光年くらいの近距離ではあまり恩恵はないだろう。12光年移動するのに10年かかるわけだから。食料や精神的な健康などで色々と問題が生じそうである。
 襲撃艦ヴァルキリーではプロキシマに外惑星連合軍の残党がヴァルハラと言う組織を結成していたが、こうしてみると彼等の精神力(執念)には恐れ入るしかない。あるいは、それだから恒星間宇宙船には冬眠装置がついていたのかもしれない。

 さて、図3は航空宇宙軍史とは直接は関係ありません。マッカンドルー航宙記に100G加速の宇宙船があったので、ついでに計算しただけです。さすがに100Gもだせると2ヶ月足らずでめぼしい恒星をまわれますね。

図1 加速度1G
  恒星    距離(光年)    船内時間     船内時間B 
alp CEN 4.39   3.02   1101.94  
BARNARD'S START 5.91   3.56   1298.67  
WOLF359 7.66   4.04   1474.97  
LALANDE21185 8.22   4.17   1523.51  
SIRIUS(alp CMA) 8.65   4.27   1558.92  
L726_8 8.89   4.32   1577.90  
ROSS154 9.45   4.44   1620.24  
ROSS248 10.30   4.60   1680.10  
L789_6 10.70   4.68   1706.74  
eps ERI 10.80   4.69   1712.95  
ROSS128 10.80   4.69   1712.95  
61CYG(BESSEL's START) 11.00   4.73   1725.72  
eps IND 11.20   4.76   1738.50  
PROCYON(alp CMI) 11.40   4.80   1750.91  
GBR34 11.60   4.83   1762.95  
STRUVE2398 11.60   4.83   1762.95  
GC32159 11.70   4.85   1769.16  
tau CET 11.80   4.86   1775.00  

図2 加速度0.2G
  恒星    距離(光年)    船内時間     船内時間B 
alp CEN 4.39   4.25   1552.35  
BARNARD'S START 5.91   5.60   2042.18  
WOLF359 7.66   7.03   2565.95  
LALANDE21185 8.22   7.46   2724.00  
SIRIUS(alp CMA) 8.65   7.79   2842.62  
L726_8 8.89   7.97   2907.59  
ROSS154 9.45   8.37   3056.15  
ROSS248 10.30   8.97   3273.69  
L789_6 10.70   9.24   3372.60  
eps ERI 10.80   9.31   3397.06  
ROSS128 10.80   9.31   3397.06  
61CYG(BESSEL's START) 11.00   9.44   3445.60  
eps IND 11.20   9.57   3493.78  
PROCYON(alp CMI) 11.40   9.70   3541.23  
GBR34 11.60   9.83   3588.32  
STRUVE2398 11.60   9.83   3588.32  
GC32159 11.70   9.90   3611.68  
tau CET 11.80   9.96   3635.04  

図3 加速度100G
  恒星    距離(光年)    船内時間     船内時間B 
alp CEN 4.39   0.12   43.44  
BARNARD'S START 5.91   0.12   45.26  
WOLF359 7.66   0.13   47.45  
LALANDE21185 8.22   0.13   47.82  
SIRIUS(alp CMA) 8.65   0.13   48.18  
L726_8 8.89   0.13   48.18  
ROSS154 9.45   0.13   48.91  
ROSS248 10.30   0.14   49.28  
L789_6 10.70   0.14   49.64  
eps ERI 10.80   0.14   49.64  
ROSS128 10.80   0.14   49.64  
61CYG(BESSEL's START) 11.00   0.14   50.01  
eps IND 11.20   0.14   50.01  
PROCYON(alp CMI) 11.40   0.14   50.37  
GBR34 11.60   0.14   50.37  
STRUVE2398 11.60   0.14   50.37  
GC32159 11.70   0.14   50.37  
tau CET 11.80   0.14   50.37  




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