カンチェンジュンガ級宙域制圧戦闘母艦は航空宇宙軍史のなかでは現在の段階では3番艦アコンカグアしか登場していない。このアコンカグアは人類が3番目に進出した太陽系外の植民地であるシリウス星系に派遣されている。3番艦が3番目に植民された星に派遣されたのであるからそれでいいように思える。
ところが襲撃艦ヴァルキリーを読む限りプロクシマ,トリマンいわゆるαケンタウルスにはカンチェンジュンガ級宙域制圧戦闘母艦は派遣されていないのである。これはおそらくケンタウルス系が太陽系にもっとも近く開発が進んでいることとも関係するものと思われる。
そうなるとカンチェンジュンガ級の1,2番艦はどこに派遣されていたのであろうかが問題となってくる。そこで以下に太陽系に近い恒星を列挙してみる。
恒星 | 距離(光年) | スペクトル型 |
---|---|---|
プロキシマ | 4.29 | M5e |
トリマン | 4.39 | GV2 |
バーナード星 | 5.91 | M5V |
ウォルフ359 | 7.66 | M6e |
ラランド21185 | 8.22 | M2V |
シリウス | 8.65 | A1V |
この時代の宇宙船の性能から考えて,1,2番艦はシリウスよりも太陽系に近い恒星に派遣されたとするのが妥当であろう。またカンチェンジュンガ級宙域制圧戦闘母艦の能力や目的からすると一つの星系には一隻しか派遣しないと考えられる。
さて候補としてはバーナード星,ウォルフ359,ラランド21185の3の恒星があるわけだが問題はカンチェンジュンガ級が派遣されなかった星系はどこかということだ。じっさいデーターを一見する限りでは優劣はつけがたいように思われる。上記データーには書いていないがこれらの恒星はどれもが惑星の存在が疑われるのである。
まずバーナード星だが,ここは安定したM型恒星であり太陽系にも近く惑星存在の可能性はきわめて高い。したがって植民地が作られる可能性は非常に高く,カンチェンジュンガ級宙域制圧戦闘母艦のネームシップ「カンチェンジュンガ」はこの星系に派遣された可能性は低くないと思われる。
さて,ウォルフ359であるが,じつはこの恒星は典型的な閃光星なのである。しかもフレアの頻度はきわめて高く,なおかつ惑星の存在についても否定する学者も少なくないなど人類が植民する可能性はかなり疑問であろう。ちなみにこの星は半径15光年以内ではもっとも暗い恒星であるからエネルギーの面でもメリットはさほどでもない可能性も指摘できよう。もっともプロキシマも閃光星であるからそれを理由にはできないかもしれない。これから先のことはラランド21185が植民に適しているかどうかにかかっている。
そのラランド21185であるが植民の可能性はかなり高い。まずここは安定した恒星であり,しかもM2Vはかなり明るいほうでK型にせまるものがある。惑星の存在する確率もバーナード星並に高い。さらにこの恒星の位置の問題がある。ここから7.2光年離れたところには太陽類似性であるグルームブリッジ1618と言うK型恒星(太陽からは14.7光年離れている。つまりこれらの恒星はほぼ直線上にある)が存在している。したがってこのK型恒星と言う魅力的な恒星を植民する足掛りという意味もこのラランド21185の植民にはあるだろう。
と言う訳でカンチェンジュンガ級の2番艦が派遣されたのはラランド21185である可能性が高いと思うのだがいかがなものであろうか。
参考文献 スカイウオッチャー 92年3月号 14P