これは前から疑問だったのだが航空宇宙軍史の中で宇宙港というものは具体的にどのような構造をしているのであろうか?
航空宇宙軍にとって宇宙港に期待する機能とは乗組員の休養の他に宇宙船に対する補給・整備が考えられる(むろん施設としては他に期待される機能もあるが)。
乗組員の休養はさておき、この整備・補給は宇宙港を設計するにあたって幾つか矛盾する要素を持っている。それは宇宙船の側からの要求と宇宙港側からの要求の違いである。
宇宙船の側からすれば例えカリストやガニメデのような0.2G前後のわずかな重力場の地表といえども着陸と言う行為はつとめて避けたい。
なぜなら離陸するためだけに推進材を消費しなければならないし、地表に二次元的に宇宙船を係留する限り宇宙港へのアクセスは物理的に制限されたものとなってしまう。どこにでも着陸できるわけではないのだから。その点、周回軌道に宇宙船をおいておければ推進材の消費も少なく、三次元的に宇宙船を展開できるので係留も容易であろう。
ところが宇宙港の側からすると軌道を周回する宇宙船に支援作業を行うのはきわめて面倒である。補給物資を積み込むのにもエネルギーが必要だし、整備をするにしても真空で行わねばならないため作業員の負担は非常に大きい。
これが地上に着陸した宇宙船なら港全体を与圧して、作業員はオープンエアで物資の補給や整備が可能となる。整備にしてもかなり大規模な工事ができるに違い無い。
これが民生の輸送船の類なら話は簡単であろう。経済性を考えると重力場から脱出するのに必要な推進材の値段よりも人件費の方が高い(でなければ惑星間貿易は成立しない)から、宇宙港の運用コスト(主に人件費)が安い地上着陸の宇宙港を採用することになるだろう。
だが、航空宇宙軍の宇宙船ではそう簡単に話は終らない。支援業務である整備や補給を設備の整った港湾施設ばかりで行うことはそれらに対する依存度を高める事になってしまう。つまり事実上、宇宙船展開は港湾施設の位置によって大きく制約を受けることになってしまうのだ。
すでに施設がある外惑星連合領域での軍事作戦ならまだいい。航空宇宙軍外宇宙艦隊などのように宇宙港どころか空港もあるかどうかわからない場所への展開を考えると宇宙船には港湾施設に過度に依存しない能力が求められるはずである。
第一次外惑星動乱当時のゾディアック級フリゲート艦が支援無しで従来になく長期間の作戦行動が可能だったのも、「終りなき索敵」で外宇宙艦隊が重水素プラント資材を保有していたのもあるいはそうした意味なのかも知れない。
で、写真ですが。ともに横須賀の米軍基地で撮影したものです。空母インディ甲板とそこから撮影した第七艦隊旗艦ブルーリッジです。
見ればおわかりのようにこれは組立式のシェルターです。艦を修理するときにこのシェルターを組み立て快適な環境でもって作業するわけです。このシェルターは複数つなげて長い一つのシェルターとして使うことも可能です。やれば天井から小型のクレーンを吊すこともできるようです。
このシェルター、大型艦艇に通常は分解して搭載しているらしい。だから現場で展開して必要な作業が行えるわけですね。
もしかすると航空宇宙軍の艦艇にもこれと同様のコンセプトの機材があるいは搭載されているのかも知れません。