☆慣性閉じ込め型核融合炉について
慣性閉じ込め型核融合炉とは、ヘリウム3あ重水素などのガスが封入されたペレットをレーザー光線等を照射する事により、核融合反応をおこす物である。
レーザーを照射されたペレットは表面が蒸発してプラズマが発声する。レーザー光線の電界で振動させられら電子は電子どうし、またはイオンとの衝突によりプラズマを加熱する。このプラズマの熱エネルギーは熱伝導によりプラズマとペレットの境界面に運ばれ、外側のプラズマは外むきに噴射され、その反動によりペレットはうちに向かって爆縮する。
こうして高温高密度の状態が形成され核融合が引き起こされる。
けっしてレーザー光線によってペレットを加熱するのではない。
☆慣性閉じ込め型磁気ミラー衝撃核融合炉とは
さてフリーゲート艦アクエリアスでは慣性閉じ込め型核融合炉の発展型として慣性閉じ込め型磁気ミラー衝撃核融合炉という方式を採用している。
この基本原理を説明しよう。
このエンジンの構造はいたって単純である。なんとペレット射出装置を除けば、超伝導コイル群しかないのである。通常の慣性閉じ込め型核融合炉にみられるようなレーザー発振装置すら無いのだ。
基本的なプロセスは以上の通りである。ようするに高密度状態を起こすのにペレットを衝突させるのではなく、ペレットに強力な磁場を衝突させるのである。
なぜレーザー光線を使わずに、すべてを磁場による圧縮で行なおうとするのであろうか。
確かに磁場による圧縮ならレーザー光線を用いた時のようにエネルギーの共鳴吸収は起こらない。
だが、慣性封じ込め型磁気ミラー衝撃核融合炉を使用する最大の理由はアクエリアスが戦闘艦であることにある。
☆慣性閉じ込め型磁気ミラー衝撃核融合炉の利点
慣性閉じ込め型核融合炉を宇宙船に使用した場合の問題点は、慣性飛行をしている間も核融合炉を停止できない事である。宇宙船の生命維持装置をはじめ航法装置など各種の機械を動かすためにはエネルギーが必要だからである。
むろんバッテリーなどの利用も緊急時にはなされるだろうが、本質的な問題の解決にはならない。
核融合炉を作動させ続けなければならないということは、同時に宇宙船が赤外線を始めとする電磁波を放射し続けるという事である。
広大な宇宙空間を移動するアクエリアスを始めとする戦闘艦にとってこのことは深刻な問題となる。
しかし、慣性閉じ込め型磁気ミラー衝撃核融合炉では磁気ノズルをも兼ねる超伝導磁石が核融合プラズマをノズル内部に磁気ミラーを形成する事によって閉じ込める事が可能となる。
この場合には電力は超伝導コイルを、MHD発電のピックアップコイルに使用することで得られる。
このように慣性閉じ込め型磁気ミラー衝撃核融合炉では、核融合発電を行ないつつ、磁気ミラーによってプラズマの流出を防止することが可能となる。この事は宇宙船のステルス性におおいに寄与するだろう。
また慣性閉じ込め型磁気ミラー衝撃核融合炉ではすべてのプロセスを超伝導コイルの内側で行なうために稼動部分が存在せず、エンジンの信頼性の向上に役立っている。
なおこの超伝導コイルは一つの巨大なコイルではなく、センサーをも含めた形で多数のモジュールからなりたっている。モジュールごと交換することで設備の貧弱な施設でもエンジンの修理が出来るようになっているわけである。
あまり勧められないが、磁場でエンジンを細かく仕切ることで複数のペレットを同時に点火することも可能である。急激な加速が必要となった場合にはこうして短時間ながらエンジンの定格以上の出力を得ることが出来る。しかしながら、この方法を長時間行なった場合、超伝導コイルに深刻なダメージを与える場合がある。
「エリヌス−戒厳令−」でジャムナがやったのがこれか? 「エリヌス」には複数の主機があるような記述があるが、夏期甲州の際に確かめた所では、やはりアクエリアスの主機は一つのようである。
☆慣性閉じ込め型磁気ミラー衝撃核融合炉の技術的背景
アクエリアスの主機である慣性閉じ込め型磁気ミラー衝撃核融合炉は全てを強力な磁場で行なっていることからも分かるように、レールガンの技術を応用している。
初期の頃のレールガンは砲弾と電極の摩擦が大きな技術的問題となっていた。これは後に砲弾を押し出すプラズマとは別に、電極そのものも磁場で閉じ込めたプラズマを使用することで非役的な改善をみた。
これにより砲弾も磁場による誘導電流で瞬時にプラズマ化する物質の開発を促進することとなった。
これらの技術的な背景があって慣性閉じ込め型磁気ミラー衝撃核融合炉は実用化された。ペレットの材質はレールガンの砲弾のそれであり、磁場の強力化・小型化もレールガンの技術の応用であった。
ある意味において、慣性閉じ込め型磁気ミラー衝撃核融合炉とは一種のレールガン(逆さ大砲ならぬ逆さレールガン)と言えるかもしれない。