天ちゃんの・徒然草子
本の周辺・3

天羽[司法行政卿]孔明

 みなさん、新年あけましておめでとうございます。
 今年もこのコーナーを読んでくれている皆さん、ありがとうございます。
 どぞ、よろしくねん。
 では、挨拶はこのぐらいにして、始めましょうか・・・。
 今年の一冊目は、この本からです。

『夏の災厄』 篠田節子 毎日新聞社

 ぼくがこの「夏の災厄」を読んだのは、今年の夏の事です。実際この本は、冬に読むよりも、真夏、もしくは初夏に読んでほしいパニック小説です。
 まずはごく簡単にあらすじを紹介しましょう。
ある年の春、関東地方のとある新興住宅地で、日本ではもう絶滅してしまったと思われている「日本脳炎」とおぼしき病気が大流行し、多数の死者までが出るのです。
 もちろんこれは、これまで日本に存在した単純な「日本脳炎」などという病気ではなく、ある、特殊な病気なのですが、誰もその事に気付かないのです・・・。あっ、いや、一人いました。でもその一人は、なんの権限もない、一看護婦なのです。
 何人かの医者も、すこし変だなぁとは気付くのですが、それがOOOO(伏せ字です)であるとは考えが及ばないのです。しかも、調査に乗り出した人々もまた、次々と死んでいく・・・。
 はたしてこの町はどうなるのか? 病原体は僕滅する事ができるのか?
 とにかく、最後の一行までドキドキハラハラできます。

『鉄塔武蔵野線』 銀林みのる 新潮社

 この本がまたなんとも奇妙な小説なんです。
 鉄塔って解りますよね、みなさん。そうです、街の所々に立っている高圧線用の、あの鉄塔です。この小説は、そんな鉄塔に魅せられた一人の少年が、ナンバーの付けられた鉄塔を順番に原点へと辿って行く、言ってみれば、映画の「スタンドバイミー」みたいな冒険小説です。
 はっきり言って、前半はたるいし、後半はガタガタなんですが、中盤の盛り上がりはいいのです。本当にいいのです。
 この小説の後半がつまらない理由は、ファンタジーノベル大賞で賞を取って出版された本なので、恐らく、変にファンタジーを意識しすぎたんじゃないかと思うんですよね、たぶん・・・。中盤のままの勢いでラストまで書いてくれたら、きっともっといい話になったと思うのですが・・・。それだけがまぁ、残念です。

『本所深川ふしぎ草紙』 宮部みゆき 新潮社

 江戸の昔より伝わる本所深川七不思議を題材に、ミステリー仕立で描く下町人情の話であると、帯に書いてありました。
 七不思議というぐらいですから、もちろん七つの時代短編集であります。宮部さんの小説は、読み終った後にほのぼのとした感が残って好きなんですよねぇー。

『今昔物語ファンタジア』 全三巻 杉本苑子 講談社文庫

 女流時代小説作家って何人かいるんですが、ぼくはその中でも、この杉本苑子さんって好きなんですよね。
 この「今昔物語ファンタジア」のシリーズは、その名の通り、「今昔物語」を杉本さん風にアレンジして書かれた小説なんですが、これだと、古典を読むのが苦手な人も、とっつきやすいんじゃないかな。
 このシリーズと同じ講談社文庫から「胸に棲む鬼」って短編集も出ているんですが、これも中々よいですよん。

『姑獲鳥の夏』 京極夏彦 講談社ノベルズ

 このタイトル、「姑獲鳥」と書いて「うぶめ」と読みます。
 この本は京極さんのデビュー作品なんですが、新書サイズのくせにむちゃくちゃページ数が多く、以前から気になっていた小説だったんですが、中々読む気になれず、これまで“つん読”になっていた本なんです。で、このコーナーを始めたのをきっかけに、ついに読む決心をして読んでしまいました。
 で、読んだ感想なんですが、・・・うーん、たしかに評判通りには面白いのですが、正直な所、やたらと理屈っぽくて、読むのには往生しました。
 小説を読むとその世界に感化されやすいぼくは、しばらく“へ理屈野郎”になってしまいました。えっ? “へ理屈”は普段から多いだろうって? そりゃまぁそうなんですが、それ以上に多くなってしまったという訳です。
 京極さんの本は、この「姑獲鳥の夏」以降に出ている本も持っているのですが、どの本もこの「姑獲鳥の夏」よりページ数が多いんですよねぇ・・・。よし、頑張って読んでみるかな・・・。

と、小説の紹介はここまでなんですが、今回は、ちょっと皆さんに聞きたい事があります。
 ぼくのこんなコーナーを読んでいるくらいですから、みなさんはきっとぼくと同じくらいに本が好きなんでしょうね、そこで、質問です。
 もしも無人島で10年間生活しなければならないとしたら、みなさんは、その無人島へ、最低(あくまでも、最低なんですが)何冊ぐらいの本を持って行きたいですか?
また、そのラインナップはどのような物にしたいですか?
 さらに、もしも一冊しかもっていけないとしたら、どんな本をもっていきますか? 
 あるいは、一冊も本を持って行けない場合、何日ぐらい我慢が出来ますか?
 以上、こんな質問ですが、答えていただければ幸いです。
 そうそう、ぼくがなぜこんな質問をしたがっているかについては、次回答えさせていただきますので、よろしく・・・。
 という所で、今回はここまで。では、また・・・。

 レンタルビデオで「リング」を見ながら・・・。

1996.01.07, PM,23:30.



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