さて、百物語もいよいよ九十九話となってまいりました。
今までに何回か交通事故現場という物を見てきましたが、1回だけ目の前で事故が起こったのを見た事があります。
私、その夜も車で六甲山から降りてくる幾つかの道の一つを走ってたんですね。六甲山から降りる道って云うのは、最近になって開通したバイパス道路(これはトンネルになってて、まっすぐ降りてこれるんですけど)以外は、舗装はちゃんとされてはいるものの、どの道も曲がりくねった道で、正直かなり危ない道ばかりなんですね。で、そういった道をくだって行った訳なんですけど、ずっと前を走っていたのが、ダークグリーンの4WDで、まあ、危ないほどの速さではないけれど、そこそこのスピードで走ってましたわ。私がついて行ける程度の速さでね。
で、まあ、とあるカーブにさしかかった時の事、前を走っていた4WDが突然スピードを上げたかと思うと、道を外れて斜面に乗り上げちゃったんです。4WDは左側の2輪を崖に乗り上げたまま メートル近く走ったんですが、そのまま崖に押し倒されるような感じで横転してしまったんです。
咄嗟にハンドルでかわす事が出来たんで、事故に巻き込まれるということはなかったんですけど、やはりこれは助けてあげないといけない。30メートル程先に自分の車を止めて、横転している4WDの処まで戻ってみると、幸いにも見たところ車体の変形もそれほどではないようだ。周囲にガソリンの匂いもしてないところを見ると、燃料洩れも起こしていない様子。
今から考えればフロントガラスのところから覗けばいいのに、私の方も気がどう転していたんでしょう。何でそんなことをしたのかよく判らないんだけれども横倒しになってる4WDによじ登って助手席を覗き込んだんです。運転席に男の人が座っています。その人も意識はあるみたいなんだけれども、呆然として何が起こったか判らないような様子でハンドルをしっかり握ったままなんですね。で、助手席のドアをドンドン叩いてみると、どうやら気が付いたらしく、中で何か言ってるらしい。で、思いきりドアを引っ張ったらうまい具合に開いたんです。
フロントが割れてたら、そこからでも出てこれるんだろうけども、幸いと言うのか、何というのかフロントはしっかりしてたんですね。で、助手席から何とか引っ張り上げたんですね。
運転者も、運転席側のガラスは割れてたみたいで、右腕に多少怪我をしているものの、まあ大した事はなさそうです。取り敢えず警察にだけは連絡を、と言う事で自分の車から携帯電話を持ってきて、貸してあげたんですね。
まあ、警察ではハンドル操作の誤りとか、スピードの出し過ぎが事故の原因っていうことになるんでしょうけど、私、どうしても腑に落ちない点があるんです。
何故、前の車はいきなりスピードを上げるような事をしたんでしょう。しかも、カーブの真ん中で…。
4WDの車が崖につっこんで行く直前に、私、ハッキリと見たんです。反対側の谷底から白い「もや」か「かすみ」のようなものが、フワッと湧き上がってきて、前を走っていた4WDにおおいかぶさるように包み込んだのを…。
それともう一つ。私がそこの事故現場を離れて、さらに道をくだって行くと、500メートルほど先でたった今、崖に乗り上げて横転事故を起こした軽自動車が…。