第九十三話

天羽孔明

 今回は、ちょっと古い文献から引っ張ってきた話をしよう。

 江戸時代初めの頃の事だ。
 侍五〜六人が、とある屋敷に集って、肝試しをしようという事になった。
 方法は、裏山の中ほどにある神社に供えてある塋石(これがなんなのかは、書いていない)を取ってくるという、いたって簡単なもの。
 ところが、最初の男は、神社に行きつくまでに怖くなって引き返してくる始末。2番目の男も、3番目の男も、やはり途中で怖くなり、引き返してくる。と、それまで事の成り行きを黙って聞いていた一人の男が、情けない奴らめ。ならば儂がそれを取ってきてやろうといって出ていく。と、半刻ほどがすぎても戻ってこない。一刻がすぎても戻ってこない。さてはあ奴も怖くなり、ここへも戻れなかったか、と、残った侍が喋っていると、表の扉をドンドンと叩く音がする。やや、ようやく戻ったかと、侍達が表に出てみると、そこには件の男の生首がポツンとおいてあったという。



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