第五十三話

天羽孔明

　友人の話です。
　その友人は、社内の野球部に所属していて、レフトを守っているそうです。
　その日の練習中。自分の所に飛んできたフライを掴もうと、後ろ向きに歩きながらボールを追っていたらしいのですが、その時、何故かグランドに立っていた人にぶつかってしまったんだそうです。あわてて振り返ると、なんとその人の首がポロリと下に落ちてしまったんだって。その友人、「ギャっ」と叫んで尻もちをついてしまったらしいのですが、そのまま、フッって、かき消すようにその人は居なくなったんだそうです。同じグランドに、何人ものメンバーがいたそうですが、誰一人として、その人を見なかったそうです。