探偵!ナイトスクープ検証

落合[いまいちキャラクターの薄かった、MSG]哲也

 少し前に、壊れた液晶モニタを入手しました。飯山の17インチで1280x1024表示可能なヤツなので、簡単に治ればいいなぁと思って貰ってきたわけですね。
 まずはどんな様子か確認。全く映らないように見えて、実はバックライトが点灯していないだけという事が判明。この時点で「蛍光管の寿命なら諦めよう」と判断。
 で、分解してみるとバックライト用のレギュレータ基板が、「長年の煙草のヤニが溜ってまーす」または「半田付けの時にペーストつけまくりました」ってな感じでハンダの周りが茶色く変色しておりました。お?お?お?これは、電気回路の故障原因のトップクラスに位置する電解コンデンサの液漏れではありませんか?基板全体のこのヌルヌルした手ざわりは、電解コンデンサの電解液ではありませんか?いやまてよ。ヌルヌル?男なら男汁を出しますから、電解コンデンサなら電解汁と言うべきではありませんか?こらこら俺のバカ。電解汁なんて言うヤツいねぇよ。アホですか?などと一人でブツブツ呟いたあと、Googleで「"電解汁"」を検索(""で囲ってるのは単語検索のため)。中国語のサイトで1件ありましたが、日本で「電解汁」を使ってる人は居ない模様。良かった。日本の電子工作界にはアホな人は居ないようです。

-回想-

 最近、っていうか少し前、結構な数のメーカーのPC用のマザーボードや電源に、激安物の電解コンデンサが使われたせいで大量のPC突然死や不調が発生し、ちょっとした騒ぎになった事があります。使ってる電解コンデンサがあまりに安物で、外装のシールがそのまんまの形でずももももも(田村信)と離陸中のシャトルのように浮き上がり、発見者を仰天させたりしてました。「コンデンサ 突然死」あたりで検索かけるとまとめサイトやその仰天写真を見る事が出来ると思います。
 で、そんな騒ぎを生暖かく横目で見ていた私だったんですが、ある日、微妙に調子の悪いマイ・コンピュータの中を覗いてみると、うおおおおお。MSI!おんどれもかぁああ。ついでに電源もバラしてみると、ひえええええええええオウルテック!お前もかぁあぁぁあああああ。というわけで目一杯の被害にあったりして、ちょっと敏感になってたのであります。

-回想終わり-

 ふむ。電解コンデンサが逝ったのなら、代替品を取り付ければ修理簡単じゃん!俺ラッキーじゃん!イケてるじゃん!と数ミリ秒喜んだあと、「液漏れしてるけど電解コンデンサは生きてるかもしれない。電解液が付着しまくったこの基板が、腐食はしてないけど電解液による短絡か何かで動作しないだけではないか?」という小学生並の楽観論を自分に向かって大展開。アレを実行する時が来たんじゃないか?アレを。とやや興奮気味に結論したのでした。
 アレとは何か。
 関西ローカルだけど全国ネットされている、『探偵ナイトスクープ』という番組があります。視聴者からの「これを調べて欲しい」という依頼を出演者のタレントが面白おかしく調査するという番組なんですが、数ヶ月前にこんなネタが放送されました。「電気製品を水で丸洗いして修理する謎の男がいるので本当かどうか調べて欲しい」と。番組中では、調子の悪くなったTVを完全分解し、全部品を中性洗剤で水洗いして天日で乾燥させる事半日で見事に修理を成し遂げてしまったのです。実際のところ、そんなんで治る故障は分解後にエアダスターなりでホコリを飛ばせば治るような気がせんでもないんですけどね。

-回想-

 その昔、広島の人外協隊員でお局様という方がおられまして、初代隊長以下若干名の人外協隊員は、何故か広島に足繁く通ってお局様夫妻のお宅に宿泊してたりしたんですが、ある日お局様のPC98様がご機嫌斜めで、起動時にメモリエラーが出てしまっていました。早速分解してみるとメイン基板にホコリがたまって各種部品の足の間にもみっしり充填された状態。これを清掃して修理完了した事があります。
 他にも会社のコンピュータが不調になった時、これを分解して地べたにメイン基板を置いてレレレのおじさんのごとく箒で大掃除して治した事も。この時は若い女子事務員さんが微妙に顔を歪めながら首を傾げていました。ま「レレレのレ〜♪」とかいいながらやってたからなんですけどね。

-回想終わり-

 というわけで、「いやぁ、実は僕も水洗いで修理した事があるんですよね。うへへへへ」と言いたいがために、いつか電気製品の水洗い修理をやってみたいと思ってたわけです。水洗いという行為自体は、基板部分以外ならば今まで良くやってたというか、年に数回は行う定例行事(キーボードは特に。たまにその他。煙草のヤニのついたモニタやPC本体の筐体を見た目リフレッシュすると同時に内部のホコリも清掃できて気分が良い)なんですが、流石に具まで水道水に浸けた事はありませんでした。
 ただ、今回は基板に電解液がねっとりと付着しているので洗う価値が大有りなのです。洗わなきゃいけないのです。千載一遇のチャンスなのです。
 (えーと。基板用の洗浄剤ってのがちゃんとあるので読み流すだけって事でヨロピコ)
 今から思うに、このへんで目的がズレはじめたのでした。「液晶モニタを治す」のではなく、「水洗いで液晶モニタ治したよ。って言いたい」が真の目的になってしまってます。おいおいと思われるかもしれませんが、液晶モニタあっても邪魔なんですよ。机のまん前に22インチのCRTが座ってて、机の横には15インチの別マシン用の液晶モニタが置いてあって、これ以上置く場所無いんです。
 この時点で、工具としてはまだ半田ごてもテスターも何も使ってません。分解用のドライバーだけ。というか、半田ごてやテスターは、どこにしまってあるのかわからない状態になっていて、探すのが面倒だったんです。もう何年使ってないんだろうなぁ(遠い目)。
 さて、そこで早速レギュレータ基板を取り外して、お風呂に。マジックリンで基板についた電解液をゴシゴシと洗っていきます。
 とれる とれる。
 よく とれる(こぐまちゃん絵本シリーズ)。
 ただ、少しは気を使います。昇圧用のトランスなんかは、水が入ると乾きにくそうなのであまり水がかからないようにしないといけません。
 洗浄完了!
 ちゃんと治って欲しいので、この後1日ほど除湿器の上や空気清浄機の吹き出し口に置いたりして、完全乾燥を目指します。
 翌日、超るんるん気分で組み立て開始。こういう時が1番ノリがいいんですよね。最も楽しい時間ですしスピードも速いです。
 組み立て完了。VGAコネクタ、パイルダーオン!電源ケーブル接続よーし!
 電源ON!
 …動きませんでした。症状変わらずです。最大の目的「水洗いで痩せた!治った!」は果たせずに終ったのでした。でもそのままだと負けた気がするので、とりあえず電解コンデンサの交換ぐらいはするか。と、猛烈に気落ちした状態でトボトボと再度分解開始。しかも半田ごてを探さなきゃいけなくなりました。これも辛いです。分解した後、翌日まで放置。
 部屋の掃除をしつつ半田ごて、半田吸取線、テスターを発掘。でも半田が無い!どこ行った?俺の0.5mm500g巻…半分も使ってないのに…とほほほほー。
 ブルーな気分が消えないまま、まずはケミコンを取り外します。気分がブルーなので、「電解コンデンサ」とか文字数稼ぐ単語ではなく、もう「ケミコン」って書いてます。半田吸取線の松ヤニの香りで、ちょっと若返ったけれども、手持ちのジャンク品の中には適当なものがありません。250μF耐圧30Vなのはいいとして、耐熱温度105℃。無いよ。そんなの。
 ここでとうとう、日本橋に買い出し決行。実は例会の前に立ち寄ったので、時間が無い上に娘を連れての日本橋。ごちゃごちゃした所には行けないので、共立電子のテクノベースへ。ここはオサレなパーツ屋で、客も少ないのです。品物も少ないけど。適当なコンデンサと半田を購入。共立電子の卓上カレンダーもイタダキ。娘は御自由にお取りくださいな飴玉・ラムネ入れからラムネをゲット。ちょっぴり気分良し。さあ、例会が終ったら早速組み立てじゃぁ。
 ケミコン交換しても動かん…。仕事も何もやる気失せた…。
 ここでやっとテスターを取り出し、メイン基板のケーブルから電源をあたって行きます。回路図があるわけではないので、適当にどこまで電気が来てるかを確かめるわけですね。このモニタの液晶パネルには、蛍光管が上下2本ついていて、出力は2つ、トランスも2つ。どちらも点かないので根元から調べます。
 結論。うーん。表面実装部品のレギュレータあたりがイカれてるか、基板の内部が侵食されたか、もはや手軽な領域を超えてます。基板自体がもうダメです。
 水洗い失敗の怨念からか、ここで放棄するという勇気を持てず、次善の策を考えます。

 などなど考えて、しばらく放置する事にしました。っていうか、直後にYahooオークションで同型モニタの、「電源投入後、バックライトが点滅して消えます」というすごく治りそうな出物が1円なのを発見して10倍以上の11円という価格で入札したんですが、最終的に15Kを越える価格で誰ぞに落札されてしまいましたとさ。そりゃ、治りそうだけどさ、壊れてる電気製品になんでそこまで出すんだよ。まったくもう。ジャンク探しとしてもYahooオークションはハイエナが多くて難しそう。一応、型番をオークションアラートに設定して、ものすごくのんびり待つ事に。液晶割れのジャンク品とか出ると嬉しいな。

 ここでこのモニタに関する話は終わりなんですが、この原稿を書いている少し前にメインマシンのTV録画用HDDがカコーン♪カコーン♪と限界一杯の元気音を発生しはじめたので、慌てて日本橋へ。120Gのストレージが消滅すると喪失感は大きいものなのです。
 で、ついでに日本橋界隈を久しぶりに探索する事にしました。ジャンク探しに。ここ5年ほど、日本橋といってもジョーシン電機に車を停め、ジョーシン電機で買物するだけ(テクノランドというPC専門館はパーツも売ってる)という状態が続いてたので、最近の日本橋はさっぱり。まずはジャンク系も売ってるディジットへ。結構あやしげなパーツ取り用部品から田宮の模型改造用の部品まで揃っているため、この店に入ると最低でも1時間はうっとりとウロウロしてしまい、予定の時間を大幅消費。最近の流行なのか、スイッチング電源とかいろいろ売ってるんだけど、良さそうなものはありませんでした。代りに、娘用に自作時計キット(っても針もついてる単品の時計ユニット)を0.38Kでゲット。

-余談-

 これを買って帰って、娘に時計を作らせてみました。なんも手伝いせずに。サイズだけ指定して、画用紙に文字盤を書かせ、裏に厚紙を貼ってスタンドを付けるか吊るせるようにしようという計画。
 期待に違わず、娘の作った文字盤は、4時と6時の間に5時が二つ(片方はぐしゃぐしゃっと塗りつぶしてる)、11時から12時の間に、謎の空白時間があって、ハートマークが書かれてます。「わー。なんか1日26時間ぐらいありそうで、楽しそうだねぇ」と、とりあえず作成。娘は大喜びなんだけど、どうするんだこんな時計。

-余談終わり-

 で、今度はでんでんタウンなんば側のジャンク屋でもと思ったんですが、あまりにブランクが大きいせいか、結構再開発されちゃって見慣れぬマンションが建ってたりしたせいか、ほとんど収穫無し。ちょっと周辺の予習をしてから再挑戦せねばならんなと退散したのでありました。
 そしてそんな日本橋行の帰り道、それは起こったのです。信号待ちで停車していた僕の車。信号が青になり、発進しようとしたその時に、自転車に乗ったおばちゃんが車の横をヨロヨロと通り過ぎ、車の前に出た瞬間にヘロヘロっと倒れ込みそうになったのです。
 なんといっても安全運転。人を轢いた事は一回しかないし、交差点で右左折する時に御老人が横断歩道でぺこっと頭を下げて通ろうものなら「いやいや、歩行者優先なんやから、ゆっくり渡って〜な」等とハートウォーミングな運転を心がけているこの僕です。即ブレーキ。即停車。おばちゃんも倒れる事はなく、車にも接触する事もなく、無事におばちゃんは過ぎ去って行きました。良かったねおばちゃん、危なかったね。と日本橋での敗北感から優しい人物になってた僕は心の中で声をかけて自分も発進したのでした。
 ちょっとヒヤリとしたけど、無事に帰宅しそうだなぁと次に信号で止まった時にふと助手席を見ると…買ったばかりのHDDの入った袋が足元に落ちてる!そういえば急ブレーキした時にぐわしゃと結構な音がしたんだった。マジかよ!氏ねよ!ババァ!超むかつく!超許せねぇ!轢いときゃ良かった!っていうか、轢くと車汚れるから、今すぐ自然死しろ!もう最悪!
 そのまま車を走らせるとマッドマックスの悪役級の運転になりそうな激情に襲われつつもなんとか帰宅してHDDの交換をしてみると、問題なく動作したので一安心したのでありました。ババァ、今回は許してやる。今回だけだぞ。

2004.12



back index next