「闇討一号」

林[艦政本部開発部長]譲治

●はじめに
 戦争というものが総力戦の時代にはいるとそこに登場する兵器類もその国の歴史や民族性を反映したものとなる。これは戦争も終盤をむかえ明らかに劣勢な側でより顕著に現れる傾向がある。えてして劣勢な側は奇跡の秘密兵器に望みをたくす場合が多い。例えば旧日本軍の重爆撃機「富嶽」とかナチスドイツの1500トン戦車などである。これらの中には確かに秘密兵器の名に値するものも少なくないが、大抵は後の人間が首をひねるようなものが多い。外惑星動乱においてもバルキリーのような画期的なシステムの影でどちらかと言えば異常な発想により開発された一群の兵器があった。今回紹介する通商破壊兵器「闇討ち1号」もそんな兵器の一つである。
●名称について
「闇討ち1号」とはもちろん外惑星連合軍の正式名称ではない。これはあくまで航空宇宙軍の暗号名である。戦後接収された3隻の同型艦にはそれぞれ「闇討ち1号」「不意討ち号」「騙し討ち号」の名称が与えられたと言われているが、正確なことは分かっていない。また外惑星連合軍がこの宇宙船を何と呼んでいたのか詳細は今以て不明である。

タケハル砲 左の図において左翼タケハル砲左下に見える球形のパーツは核爆発発電機である。(右翼のタケハル砲のそれは画面から外れているが、コードの延長線上にある)コードでタケハル砲外壁の超電導コンデンサーとつながれている。レールガンに必要な電流は大出力だが低品位でよいので核爆発発電機が使われたと推測される。
 なお、タケハル砲は構造強度からしてそのまま運搬されたとは考えにくい。各々十個ほどのパーツに分解、束ねられ、待ち伏せ地点にて展開、組み立てされただろう。

●武装について
 「闇討ち1号」にはタケハル砲以外の武装は一切ない。これは待ち伏せを任務とする性質上、それ以外の武装は不用と考えられたものらしい。実際問題として、運動性能がよいとはお世辞にも言えないこの船が他の武器を使用しなければならない状況に陥った場合、どの道勝てる可能性はない。
●タケハル砲について
 「闇討ち1号」の最大の特長はタケハル砲にある。タケハル砲とは全長1000メートルのレールガンである。ただその弾道速度は極めて速くほぼ光速の50から80パーセントに達する。当然の事ながらそれだけの速度を得るためには何万Gもの加速が必要であり、自動的に磁気コイルも強力なものが求められる。タケハル砲では全長1000メートルにも及ぶ超伝導コイルを使用するが、発生する磁場が余りにも強力なので1度使用するとコイルは自らの磁場のために自潰する。従って「闇討ち1号」ではタケハル砲は完全な使い捨て兵器である。そのためにタケハル砲は砲自体がカートリッジになっており船体から簡単に着脱交換できる。通常の「闇討ち1号」は2門のタケハル砲を装備している。
●タケハル砲の弾体について

砲弾 タケハル砲の砲弾は無数のタングステンの針からなっている。これらは砲口を出るまでは一つの弾体だが、針の一本一本が帯電しているのでクーロン力によって砲口を出た途端急速に展開し、文字どおり弾幕を形成する。タケハル砲の弾幕は薄いため通常は複数個が同時に使用される。「闇討ち1号」でタケハル砲を2門装備するのもそのためである。弾体は亜光速であるのでレーダーで発見することは事実上不可能である。  また弾体は基本的にはチャフと何ら変わらないため「闇討ち1号」をレーダーで発見するのも容易ではない。

 この砲弾の大部分は通電体で、真の弾体であるタングステン針束はこの内側に埋めこまれている。通電体は亜光速までの加速をもたらす凄まじい大電流によって瞬時にプラズマ化し、そのまま真の弾体を包みこんで砲口内を突っ走る。

●船の構造について
 「闇討ち1号」は武装のタケハル砲と比べると驚くほど小さく全長で50メートル程度である。本来はタグボートであったものを改造して必要なセンサーなどを装備したため居住性は良いとは言えない。タケハル砲はエネルギー自体もカートリッジに内蔵しているため「闇討ち1号」は戦闘艇というよりはタケハル砲キャリアといった性格が強い。 なお「闇討ち1号」の照準システムはバルキリーと同じものが使用されたとの記録もあるが詳細は不明である。
●その他
 タケハル砲は本来、磁気ミラー核融合推進システム開発計画で培われた技術をスピンオフしてつくられた。戦争勃発と同時に磁気ミラー核融合推進の開発は中止され、実験資材はすべて戦争遂行のために使われた。 タケハル砲の磁気コイルも実は磁気ミラー核融合の磁気コイルの転用と言われている。




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