20周年記念パーティー
二次会見聞録
――のはず

佐野[従軍楽士]高久

 甲紀二〇年八月十四日、陛下直々の特命を帯びて僕は、大阪を訪れた。大阪に足を踏み入れるのはほぼ十年振りだ。


 今回の目的は第一に「酒を飲むこと」であった。久し振りに青年人外協力隊の面々と顔を合わせる機会が廻ってきたのだ、これを大いに楽しまないなんて酒飲みの神様が許してくれるわけはない…。あれ、なんか変だぞ。きっと違う気がする。もとい……。

 今回の目的は第一に「AIBOを弄ることであった」せっかくAIBOが会場に来たんだから、日頃の仕事で培った検査技師としての習性を大いに発揮して、例外処理と臨界処理を試してみないことには…。違うって、AIBOがいることは知らなかったんだから。もとい……。

 今回の目的は第一に「外聯主席を観測する」ことであった。人がやねこんで忙しい最中に叛乱を企て、MLに大量の文書を撒き散らした連中の代表者がどんな人物か見極めてくるようにとの陛下の詔勅が下っていたのだ…。いい加減陛下ネタはやめろっての、先月号なんか伏せ字にされてたんだから。もとい……。

 今回の目的は第一に「コスプレをする」ことであった。誂えてから初めて袖を通す(ダイエットの甲斐あって八瓩も体重が減っているせいでゆるゆるだった)スーツ姿をお披露目しようと…。違う。人様のお祝いごとだから、さすがに普段着の作業衣ではいかん、かといって他に持っていないと、それだけの理由でスーツを引っ張り出したんだ、コスプレじゃない。もとい……。

 今回の目的は第一に「隊長の顔に筆ペンで落書をする」ことであった。酔った勢いで書きまくってごめんねMSG…。って、だから、勢いであって、最初から画策したことじゃないっての(本当に失礼しました、隊長殿。決して叛乱とかじゃありません)。もとい……。

 今回の目的は第一に「さがさないで下さい、傷心の旅に出ます」ということで……。あ、おい、そんな個人的なネタを持ち込んでどうするんだ。お客さん八割がた、わけわかんなくて引いてるぞ。もとい……。

 今回の目的は第一に「……何だった」んだろう。もういいや、手段のためには目的を選ばずだ。とにかく、甲州先生の作家デビュー二〇周年記念パーティーに参加するために僕は、久し振りに大阪に来たのであった。


 帝国ホテル大阪でのパーティーについては他の隊員から報告されているので省略する。でも林[シャーロキアン・ローディスト]雅恵外聯主席のレポートに一言。
「そんなに怪しげでしたか、僕?」。
 やっぱ着慣れないおめかしをしても浮いてしまうだけだね。しかも、隣りにいたのがあの御方ですから。

 甲州先生ご一家のお見送りを受けながら引き出物の瓦煎餅を頂戴する。即座に普段着に着替えて宿に荷物を置いて身軽になる。この宿が三次会の会場となるそうだ。
 二次会の会場に向かうべく、PONKI編集長一家の案内で僕は、夜の大阪の繁華街へと踏み出した。
 はっきりいって田舎者には刺激が強過ぎるぞ。道行くオネイちゃんたちの風体たるや、全員その手の商売の人にしか見えなかった。ホットホットになってしまいそうだけど、お子さんも同道していることだし、今は酒を飲むことの方が重要である。その手のネタはまたの機会に。


 僕が辿り着いたころには会場はほぼ満杯だった。デカいピッチャーが置かれ、既に宴は始まっていた。今回はさすがに、ピッチャーをジョッキだと思いこんで一気に飲み干すようなことはしなかった(筈だ…)。

―ここで断っておくが、この原稿の依頼の時、編集長は
 「日にちもだいぶ経っていて記憶もうすれているかもしれませんが」
 と書いてきた。確かに記憶は曖昧だ。でもご安心を、二次会のときには既に酔っぱらっていたので覚えていないだけなのだ(何が安心なんだ)―

 一次会では「えいせい」からネタを持ってきた出し物もあったけど、二次会は和やかに談笑のみだった(と記憶する)。
 以前制作した「惑星CB‐8仕様」のステッカーを甲州先生にお渡しした(ようだった)。小松の甲州先生宅を訪ねてインタビューする企画のときに編集長に託すつもりで送りそびれていたのだ。余った分は何人かが面白がって持って行った(と推測される)。
 既に酔っぱらっているくせに、さらに意地汚くビールを浴びた僕は、相当にぶっ飛んでいた。個人的な話だが荒んで落ち込んでいたところに、こんなにたくさんの昔馴染に囲まれていたというのもあって、緊張の箍がふっ飛んでしまった(と信じたい)。
 ここで事件が起きた(ことはうかがえる)。僕はMSG隊長の横に座り、筆ペンを取り出すと、彼の顔に思いっきり落書きを始めた。朱墨の筆ペンまで持っている念の入り様だ。どんなことを書いたかは覚えていないが、とにかく顔いっぱいだった。こんなことだけはっきり覚えているのは、困ったもんだ。ところで、誰か写真を撮ってなかったのか?

 しっかり酔っぱらっているうちに二次会は無事お開きとなった(と思う)。
 この後、宿泊先の「あいくめ」に雪崩れ込み、更に宴会は続いた(かどうかはよく覚えていない)。




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