編集後記

林[艦政本部開発部長]譲治

 谷甲州最新刊の「エリコ」の後書きに次のような記述がある。「……SFをやるからにはぜひとも押さえておきたいテーマがある。宇宙の構造、未来史、そして人類の進化だ。<中略>一応は「未来史」と「宇宙の構造」を片づけたことになる。したがってあとには「人類の進化」が残った。……」と。
 この記述に従えばSF作家谷甲州は作家生活20周年の節目においてSF作家として押さえておきたい三大テーマを一通り書き上げたことになるわけだ。もちろんこれは作家谷甲州がすべてを書き終えたことを意味するものでは無い。
 そもそも「宇宙構造」、「未来史」、「人類の進化」は実は相互に関連したテーマである。遠未来を考えればその時代の人類を取り上げざる得ないのは一つの必然であるし、進化した人類が宇宙をどう認識するのかは避けて通れない問題であろう。このことは例えば「終わりなき索敵」を読めばわかる。
 つまりSF作家谷甲州にとってじつはこれら三大テーマは分離不可能なものである。ただ作品により視点が違うのである。未来史の中から宇宙構造や人類進化をみたのが「航空宇宙軍史」であれば、「人類進化」の視点から未来史を描いたのがエリコ――まぁ、エリコに宇宙構造は出てこないけど――となろう。そうなると「エリコ」の上梓はじつは終わりでは無く、大きな螺旋が一巡したことを示したことになるだろう。この20周年の年に人外協で「こうしゅうえいせい」を出せるということは、ファン冥利につきると言えましょう。
 なんてもっともらしい事を書いてますが私は編集長ではありません。特に今年の「こうしゅうえいせい」は諸般の事情によりあえて編集長の手を経ずして一般会員有志による分担編集となりました。関係者一同メールなどを駆使して合理的な作業を心がけてまいりましたが、なにぶんにも素人の作業ですので、至らぬ点につきましてはなにとぞご了承くださいますようお願い申し上げます。
 なお文中の誤字脱字等の誤りにつきましては谷甲州氏をはじめとする執筆者の方々では無く、あくまでも現編集長にその責任がございます。もう子供じゃないんだし、現編集長はちゃんと責任はとれます。




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