第43回日本SF大会 G-CON


地球人側
 歴史的な経緯により、未知の存在と遭遇した場合は最初にコミュニケーションを成立させたチームが所属する組織が交渉を完全に独占することが認められている社会だった。そのため、知的生命からのものと思われる信号を受信した地球では多くの集団(国家、企業、宗教団体、金持ち)が、発信源である恒星系に 向けて、危険度度外視・片道のコンタクトチームを送ると言う状況になった。
 地球人側チームが代表する国家では、1.5世代型と呼ぶ宇宙船に、小学校低学年程度の子供5名と30代の大人2名を乗せ出発した。50数年の航行の末に、10光年離れた恒星系に先着させることに成功した。
 コンタクトが成功すれば、国家は彼ら7名を国家英雄と称え、彼らの子孫や兄弟たちを優遇したに違いない。

異星人側
異星人のイメージ図 異星人の住む惑星の主星は変光星であり、そのことが彼らを悩ませていた。
 恒星の状況を改善しようとしたが、逆に失敗してしまい(彼らの観測によれば)数百年以内に恒星系は居住不能になってしまう結果となった。まだ恒星間航行能力を持たなかった彼らは、自分たちの持つすべての情報をすべて周囲の恒星系に向けて送り出すことで宇宙のどこかに自らの存在した歴史を残そうとしていた。

交渉
 異星人側にとっては、すべての情報はすでに送ってある。当然ながら地球人は、近いうちに恒星系が居住不能になると知ってわざわざ訊ねてきたと考えている。しかし地球人は、情報を詳しく解析するよりも先に到着することを優先してやってきたため「まずは、交渉権を得てから」と考えている。
 そのため、恒星間航行能力をもった地球人に自分たちの種族の存続を期待する異星人と、細かい状況は知らないままに異星人との交渉権獲得により将来的に利益を得ようと画策する地球人の交渉は最初からかみ合わないものとなった。

結果
 言葉はそれなりに通じる、お互いに交渉の意志をもっている、 相手を攻撃したり騙したりするつもりもない。という好条件ながら、意思の疎通をはかるのはやはり難しかったようである。

(阪本雅哉)



CONTACT Japan Top Page

SF大会(SF2004)企画