第40回日本SF大会 SF2001
FCS企画:「とことんワールドビルド」


 無事に昼の企画も終了し、スタッフは広場常設企画の現場へと移動する。
 ディーラーズルームの端に長机とパイプ椅子、ホワイトボードという設備が。これらでこれからの長丁場を戦って(?)いかねばならない。
 しかしなかなか参加者が集まらない。会議場企画の方に集まっているようで、SF広場にもあまり人影はない。スタッフでこそこそ直前の(ってもう始まっているが)打ち合わせをして参加者を待つ。
 そうこうするうちに常連さんたちが寄ってきてくださり、ようやく企画をスタートさせる。

ラウンド1

 まず肩ならしに地球を参考に各種設定値をいじって惑星を作る。

恒星 Gタイプ
惑星 重力 0.6地球重力
直径 0.85地球直径
地軸傾き 5°
温度 極地 -10℃
赤道   40℃
公転周期 1.4年
大気組成
メタン 30%
CO2 40%
N2 30%
大気中には酸素はないが、水中に遊離酸素あり。
水中で光合成すればなんとかなる。
 惑星表面は大きな海はなく、高い山もない。地熱もほとんどない。海のかわりに大陸には多くの湿地帯が点在している。

 メタン還元反応で生体エネルギーをとりだす生物を作り出すことにし、その種族にこの惑星の生態系の土台になってもらう。

モ 生物X:通称「モ」
 光合成を行い、得た酸素と大気中のメタンを反応させエネルギーを得る。
 作った酸素は体内に蓄える。
 でもってCONTACT Japan ではおきまりのように水面をプカプカ浮いている。(みんな好きだな)
 単体では小さく、まとまって群体となって水面にコロニーを作る。
 ちなみに彼らのエネルギー生成の方法は、
 1.2H2O -> H2 + O2(光合成)
 2.CH4 + O2 -> CO2 + H2O(呼吸第一段)
 3.CO2 + H2 -> CH4(呼吸第二段)

 という生物ができる。ここにくるまでに粉体生物にしようとか群体で知能を持つとか困難な方向に挑戦しようとする参加者をなだめてン時間である。通常のFCS企画なら考えられないほど潤沢な時間をかけたのだか、まだ夜は長いのだった。

 さて次に参加者が取りかかったのが「モ」を利用するように進化した生物を考え出すこと。予定では彼らがこの惑星の覇者として進化してゆくはずだった。

GG 生物Y:通称「GG(グリーンゲンゴロウ)」
 「モ」と共生し、酸素を供給してもらう。
 「GG」が「モ」を体に付着させ移動する。
 また「モ」に水を供給する。
 「モ」を取り合って「GG」同士が戦う。
 外骨格をもつ。

 自らの背中に「モ」を付着させ、水面を泳ぐ。沼地から沼地へと移動する。水と「モ」さえあればどこにでも行ける。地球の基準からするとかなり大きなゲンゴロウだということで名前がついた。外骨格ということであまり大きくなることはできず、このままでは知能をもつことは不可能にみえる。

 で、彼らに適度な進化圧をかける存在が必要になるのである。

カメギンチャク 生物Z:通称「カメギンチャク」
 「GG」を捕食する。捕食肢でとらえ、そのまま頭部後方の口から丸のみする。
 胃袋は背中側にあり、背中は透明で太陽光を通す。
 「GG」、「モ」から奪った酸素を体内に蓄えることができる。
 捕食した「GG」の背中の「モ」に消化されるまで光合成をさせる。
 移動のための肢を4本もつ。
 大きさは2mくらい。

 このカメギンチャクは進化の過程で「GG」の祖先から分岐した種族。身体が大きい捕食者であり、酸素の補給はとにかく「GG」を食べることなので、「息を吸うように食う!」という大食漢である。しかも繁殖のために卵は「GG」に産みつけるという非道な奴。
 ああしかし、これでは「GG」は進化するどころか「カメギンチャク」に食い滅ぼされてしまうに違いない。この惑星に知性は生まれることはできないのか!?
 というところで、参加者&スタッフが煮詰まってしまい、これ以上考える気力を失ってしまう。まだ時間はあるから次にいこう、ということである。


ラウンド2

 つぎは少しハードっぽく、参加者に実際の恒星をえらんでもらい、そこから設定を行うことにする。スタッフが持ってきた古い理科年表にとりかかってもらう。
 そこで選ばれたのか...

恒星プロキオン
スペクトル型 F5
絶対等級 2.6
白色矮星を伴う (10AU)
表面温度 7000K

 これまた難しい星を選んだものである。矮星を伴っているので惑星の位置を決めるのが大変だ。プロキオンと矮星の共通重心にするかそれのラグランジェポイントにするかで一同頭を抱える。
 ラグランジェポイントでは恒星から離れすぎていて熱量が不足するし、共通重心では双方から複雑な引力の影響をうけ、地殻変動が激しい惑星になるだろう。また不安定なためプロキオンに落ちてゆく可能性が非常に高い。
 悩んだ末に選択したのは共通重心に惑星をおくことだった。惑星の寿命は短いかもしれないが、短時間に生命を進化させればいいのだという神の視点にたった選択である。

惑星
質量 1.5地球質量
重力 1.4地球重力
惑星半径 6500km
平均気温 15℃
水陸比 4対6(地球は7対3)
水の表面分布 赤道に偏っている
地軸の傾き 35°
自転周期 100地球日
リングを持っている
大気組成
N2 70%
He 20%
O2 10%
微量 CO2、H2O

 この惑星の生命は深海で発生する。海底火山のHotSpotで硫黄細菌が生まれ、進化してゆく。

代謝系(ちょっと怪しい)
S + H2 -> H2S でエネルギーを得ていたがこれでは硫黄を使いつくしてしまうので
Fe + O2 -> FeO に進化の途中で切り替える。

 ここまで決めて、この惑星で進化し、宇宙へと進出する予定の生物を考えてゆく。

生物αの特徴 α
 体型は放射対象で正三角形を2つ重ねた形(保安官のバッチ型)
 外骨格(また!)で全長は10p程度。
 口6個(6本の伸びた体節の先端
 舌、鼻6個(同上)
 排泄孔1個(身体の中心の裏側)
 目6個(体節の先端、口の後ろ)
 耳6個(大節の谷)
 脳1個(身体の中心)

というヒトデモドキの生物ができてゆく。
 さらに、

 移動方法は口から水を噴き出す(6本のバーニアね)
 通常は単体で活動
 植物プランクトンを捕食する
 生殖方法は卵生で、雌の背中の卵子に雄が精子をかけて受精させる。
 雌が背中で育て、ある程度育てたら切り離す。
 一回の生殖で3匹が生まれ、子供は三枚に重なって雌の背中で育つ。
 寿命は7日間(地球で700日)
 生殖活動は1日に1回。生涯6回×3個体で増殖する。
 子供は1日で成体に成長する。
 生殖活動は夜になる直前に行い、夜に卵が孵り雌は夜の間子供を育て、翌朝に子供は巣立つ。
α

 一通りの基本アウトラインが決定したところで、この生物を惑星の覇者とするべく進化を考えてゆく。

生物αの進化 α
 惑星の活動が低下する。それにあわせ火山活動が低下し、惑星全土が冷えてくる。豊富だった植物プランクトンが減り、そのため運動能力が向上。また同種捕食がはじまる。
 食う食われるの生存競争のなかで、大型種が誕生。個体数が激減してゆく。
 効果的に捕食するための狩の技術が向上。子育てにも狩の方法の伝授が組み込まれる。6本の大節の役割が分化し、形態も進化してゆく。
 前後の2本が口専門。4本が捕食用の手になる。手になった大節の目は付け根に移動し、安定した立体視が可能になる。

 このあたりで夜の3時頃、参加者が一人抜け二人抜け、閑散としてくる。すでにスタッフの脳みそも動かなくなり、やはりここで断念するのだった。

α=ゾウリガニ

 最後に生物αに命名を行う。誰が呼んだか「ゾウリガニ」、進化の途上で見捨てられる......

(大井俊朗)


 とことんワールドビルド企画に参加された方で、設定の経緯やそのときに考えていた事などをご連絡いただけませんでしょうか。スタッフがまとめた、決定事項だけでなくその時に出た意見や議論の方向などを追加して行きたいと思います。
 情報やご意見などを contactj@tty.gr.jp までご連絡ください。お待ちしています。



CONTACT Japan Top Page

SF大会(SF2001)企画