中国とインドへは行きたくない。
特に理由があるわけでもはない(偏見はたくさんあるけど、特に中国やインドに限ったわけではない)はないが、なんとなくそう思っていた。
中国返還前の香港や中華民国(台湾)に行ったことがあるのは、深い理由がない故である。
ところが、嬉しくないことに仕事で中国(の深圳)に行かなければならなくなった。
しかも、剣呑なことに中国のあちこちで反日デモ発生なんてニュースで流れている。とはいえ仕事では好きとか嫌いとか言ってもしかたがない。たいして理由があるわけでもないのに断るわけにもいかない。それに中国は国家権力の強い国だから、真の暴動なんてのは起こることもないだろうと楽観しておくことにする。(実際には、日本人関係への適度の暴行は許容範囲だったようだが)
日本から深圳へ行くには香港経由が一般的らしいが、急だったので上海経由で行くことに
なった。上海の空港はとっても綺麗で機能的に思えて、とっても広い。深圳の空港は田舎の空港の風情だがやっぱり広い。
そして中国人乗客は本当に離陸する直前までと、着陸した直後にはすでに多くの人が携帯電話を手に話している。この日本では目にすることのできない光景はなかなか新鮮だった。
ところで、飛行機に乗る際に携帯電話の電源を切らなければならないことに異存はないけど、携帯電話くらいで不調になる可能性があるのは、やっぱりなんだか嫌だ。
仕事は、高新技術産業園(おそらくハイテクパークのようなものか?)にある某社へ行って、打ち合わせをしたり、テストをしたり、開発を手伝ったり、技術者に文句を言ったり、なにもすることが無くて時間をつぶしていたりなど色々とあったりするのだが詳しく書くわけにはいかない。
ただひとつ言っておくなら、ものすごく効率が悪くてどうしようもなかった。
中国全体がそうではないらしいし、現場の人間にとって、いきなりやってきた余所者の相手をすることの優先順位が低くなるのも有る程度は仕方がない。と、理解はしているけど、それにしてもほどがある……。
冒頭に書いた、中国へは行きたくないという気分をかなり強化された。
出発前に、電源とコンセントに関して Internet
で調べても「電圧は220V、プラグはあらゆる種類が使われている」などと書かれていて準備する際に困ったのだが、現地では仕事先もホテルでも下の写真のようなコンセントが配置されていて、日本で使っているものもアメリカやヨーロッパで使用しているものなどどれでもそのままで(もちろん電圧の変換は必要だが、最近は100〜220V対応の機器も多い)使用できてしまうようだ。
延長コードを一つ買って帰ればそれなりに便利だったかもしれない。つうか、次回は買ってこよう。
さて仕事以外の必須の事項として食事をしなければならない。
初日こそ仕事先の人に招待されたので何の苦労もしなくて済んだが、それ以降は食事の度にチャレンジを繰り返すことになった。
なにより、我々は中国語(現地で話されているのが北京語なのか広東語なのかすら分からない)はまったくできない。そして宿泊したホテル周辺の店ではまったく英語が通じない。たしかに、日本でも英語が通じるとは思わないが、さすがに“beer”や“OK”くらいはなんとかなるんじゃないだろうか。
最初、とにかくビールを頼もうと思って「ビール」と言おうが「beer」だろうが理解してもらえない。筆談しようにも「麦酒」は通じないし、中国では「碑酒」と書くなんて知るよしもない。
ふと「チンタオビールとか…」と言った「青島」の部分を理解してもらって、とにかくビール(もちろん青島碑酒)が出てくるまでにおそらく10分程度はかかったに違いない。(別の店では「チンタオ」と言っているのに金威碑酒が出てきたこともあったが、決して違うとは言わなかった、言えなかった、もちろん言う気はまったくなかった)
メニューはすべて漢字で書かれている。そして欧米人と違って日本人は漢字が読める…はずなのだが、文字が少しくらい読めたところでメニューの中身が理解できるわけではない。
「牛」、「猪」、「鴨」などの素材や「辣」は辛そうなので避けた方が良いとか、「飯」やら「面」程度は判別できたとしても頼んだものが出てくるまで、実際にどのようなものなんだかは予測に過ぎない。
店のどこかに写真でも有るか、隣で食べているものを指さして頼んだような場合は外観は分かるが、それでもでも実際に食べてみるまではどんな味がするのかは分からない。
そして、たとえば「牛」と書かれていても牛のどの部分(多くの場合、内臓のどこかだと思う)が調理されて出てくるかは不明でだし、鶏肉の料理だったとしても食べていると、いきなり頭やら足が出てきたりするので油断できない。
鶏の頭は囓ってみたが、骨と皮だけで食べられる部分がないので、あまりおすすめできない。
「青椒牛肉絲」と」麻婆豆腐」だけはそのまま通じた。それと「面」と書いても「滅有」と言われたのはなぜだろう。また、なぜか魚の特に頭を食べさせようとする人が多いらしく、少し英語が分かるらしい人が店に(おそらくは店員ではなくて客だと思うが)居た場合になぜか魚を進められる機会が多かった。
そういえば日本が起源だと聞く、回転する中華テーブルは少し大きめの店に設置されているのも意外だった。
ホテルのすぐ近くには、日本料理店が数軒有った。おそらく仕事で訪れる日本人相手なんだろうけど、値段が高そうなのと、なにも中国の田舎で日本料理を食べなくても、という気がして近寄らなかった。ただしその横にセブン・イレブンが有ったおかげで水やら雑貨などの生活に欠かせない雑多なものを購入できたのでかなり助かったのは間違いない。
ところで「机と凧と両親以外は何でも食べる中国人でも、冷たい飯は食べない」と聞いていたのだが、社員食堂へ行って見たところでは、みんな平気で冷たくなってしまった飯を食べている様子であった。
中国人も近代化されて冷たい飯に慣れてしまったのだろうか。
深圳でも反日デモが有ったらしいのだが、工業団地とホテルの周辺でそれらしい様子を見かけることもないしTVのニュースを見ていても分からないし、帰国して日本のTVを見るまでは、どんなことが起こっているのまったく不明だった。
日曜にでも、仕事をせずに街の中に出かけていればデモを目撃することもあったのかもしれない。
中国は共産主義の国なので「サービス業の人は態度が悪い」という話を聞いていたが、直接目撃した範囲では空港の総合案内書の係員意外はみな愛想は良かったような気がしている。もっともサービスの質が高いとはお世辞にも言えないのだが、このあたりはどこに気を遣うかの違いなのかもしれない。