ダイビング上達の極意

第三勢力(臨時隊員):大井[ないしょ]俊朗

 本数を重ね、自信がついてくると人間というモノは自分のスキルを過大評価しがちである。しかしダイビングの道は日々精進の道であり、現時点の技術はまだ長い道の通過点でしかない。この勘違いに陥ってしまい長い間抜け出せないでいると、気がつかないうちに危険なダイビングを繰り返してダメージを体に蓄積したり、とりかえしのつかない事故を起こしてしまう可能性がある。スクーバー・ダイビングは簡単で楽しいレジャーだが、水中という異世界では厳守すべきルールがあるのだ。
 特定の相手とだけバディ・ダイビングをしていると自分の力量を誤解しやすい。リゾートでだけ潜っていても同様である。周囲の美しさに気を取られて技術の向上などは考えないだろう。
 で、どうするかというと、できるだけ自分より経験の長い人達と一緒にダイビングをするのである。多くの生徒ダイバーを育てた実績を持つインストラクターと潜ればなおよい。具体的にはダイビングショップが開催するダイビングツアーに参加するのである。様々なレベルのダイバーと潜れば、今の自分のレベルがはっきりとわかる。潜っている姿がちょっと綺麗だなと思う人の動作を真似してみればいいのだ。簡単そうにみえるそれが、いかに難しいかわかるだろう。そしてツアーに行けば水中でビデオ撮影をしてくれるかもしれない。潜っている自分の姿を客観的に観察すると自分の欠点がはっきりと認識できる。
 難しいのは「優良な」ダイビングショップを見つけることがそうそう簡単ではないということだ。雑誌などで有名だからといって、そこがいいショップであるとは限らない。近所にあって便利だからと行って、散々な目にあったという話も少なくない。そうしてダイビングを止めてしまう人も多いのだ。本当にショップ探しは難しい。
 知人が通っていてそのショップの雰囲気を詳しく聞くことができるのが一番いい。スタッフの性格やダイビングの内容をよく聞いて、自分に合うかどうか検討できる。そうやって見つけたショップは大事にしなければいけない。
 たとえ自分が埼玉に住んでいて、気に入ったショップがたまたま兵庫県にあってもだ。伊豆でバディ・ダイビングをすれば安く済むからと安易に思わずに、年に50本以上明石に通ってダイビングを続けている隊員を私は知っている。彼らはダイバーの鏡である。沖縄に行った方が費用がかからないというのに、スキルアップのために謙虚な心で通っている彼らを見ると、頭が下がる。ダイビング歴1年ちょっとではあるが、すでにダイビング上達の極意を彼らは実行しているのだ。これからも初心を忘れずに潜り続けて欲しい。




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