こうしゅうでんわ

谷甲州

 あけましておめでおうございます。ということで一九九九年になったのだが、年末から正月のテレビ番組をみても恐怖の大王を話題にしている奴は全然おらんな。もっとも普段からテレビはたいしてみてないので、チェックもれかもしれないが。でも周囲にも、このことは話題にする奴はいないなあ。個人的には元祖ノストラダムス本で財をなした(んだろうな)某氏が今年の八月ごろどんな弁明をするのか、楽しみではあります。調布の大王麺とか甲府の大王系のギャグも出つくしたし、これから意表をつく話をひねり出すのは結構しんどいと思うぞ。某氏は予言が滑った場合にそなえてあれこれ布石はうっておるようだが、ひろげた風呂敷の大きさからすると中途半端なしまい方ではだれも納得せんだろうなあ。

 などという話はさておき。昨年末から何をしているかというと、『エリコ』の手直しで四苦八苦しております。連載の時は何も考えんと好き放題やってたんだが(ほんと、読み直してみてしみじみ思ってしまった。これじゃ最初から最後まで、 やってばっかじゃないか)一冊の本にするには結構ほころびが多い。たしか書きはじめる前は「人類の進化をテーマに」なんて考えてたはずだが、結果はこういうことになりました。理由ははっきりしている。著者が勉強不足のまま連載をはじめてしまったからだな。進化論や遺伝子工学の知識なんかは、付け焼き刃であとからくっつけただけし。連載中にクローン羊が生まれたりして、状況がずいぶん変わったのは確かなのだが。

 そうだ。忘れんうちに書いておこう。今月発売の小説すばる誌に、例によってみじかいエッセイを書いております。前にも書いた「GO! GO! 健康道場」というコラムなのだが、こんなに早く順番がまわってくるとは思わなかったな。それはいいのだが、健康にいいことなど俺はひとつもやっておらんぞ。いったい何を書けばいいのだ、とぼやきながら、結局は年末の忙しい時期に原稿を放りこんだのであった。1ページだけのコラムですんで、興味のある方は書店でどうぞ、とだけ書いておこう。




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